第16話 妹が居ればそれでいい
7
「ご主人さま、朝でございます。起きてくださいまし」
耳を擽る落ち着いた声。
心地よい微睡みの淵から、ゆっくりと意識が浮かび上がってくる。
「今日も外はいい天気にございます。あたたかくて気持ちが良いですよ」
「ん……?」
今度は優しくあやすような声。ゆっくりと瞼を持ち上げれば、目の前には白い美顔。おとぎの国から現れたような、この世の存在と思えないほど美しい少女が微笑んでいて
「ふふ…お目覚めでしょうか、ご主人さま。随分とよく眠っておられましたね」
幼いながらも楚々とした異世界妹――目覚めると、セリアが腰の上に馬乗りになっていた。
「…おはよう、セリア」
「おはようございます。ご主人さま」
朝日が溢れる部屋の中、愛情いっぱいの顔で笑うセリアと見つめ合う。
寝起きの頭はまだ未覚醒で、思考がうまくまとまらない。ただ、セリアの雪のように白い肌はとても美しく、何も纏っていない身体を隅々まで見れるのは一日の目覚めとして素晴らしいと思う。
(シミもホクロも一つもないとは…キレイだ、スバラシイ……)
艷やかな肌が朝日を弾くさまをまじまじ見てしまう。ミルク色の肌の上でほんのわずかに膨らんでいる胸のさくらんぼだけが微かな自己主張をしていた。
(…もしかして、セリアも成長したら巨乳になるのかな………まぁ、セリアはずっとこのままでもいいんだけど…)
「ふふ…、なにかヘンなことを考えておいでですね?」
悪戯っぽく微笑むセリア。長い耳が楽しげにひくひく揺れている。
頬をゆっくりと撫でる冷たい指の感触も、腰の上に乗られる感覚も心地いい。出来ることなら、このままベッドから動きたくない。いつまでも微睡んでいたい――
こちらの気持ちを察知したのか、セリアは微笑みを強めて
「それでは、目覚めのキスを…………――んっ」
ゆっくりと半身を倒してくる。唇と唇とが触れ合い、重なる。柔らかい銀色の髪が頬を擽る――
「ご主人さま……っ…、ちゅっ、ちゅぅっ、れろ」
触れた唇は小さく柔らかく、瑞々しくて――朝日のような仄かな熱を秘めていた。
「…っ、ちゅっ、ちゅぅっ…れろ、ちゅぱ……ちゅるっ」
セリアは強くしがみついてきながら貪るようにぴちゃぴちゃとキスを求めてくる。
小さな舌がやさしい生き物のように絡みついてきて、唇から全身へと心地よさと安心が広がってゆく。
「んっ……ちゅっ…、んんっ……れろ、ちゅぱ……んんっ」
少しでも舌を入れると大歓迎で吸い付いてくる。しがみつく銀髪幼女は甘えん坊で――キスに味なんてないが、セリアのキスは甘く蕩けるようだった。
「……んはぁ……っ…ご主人さまとのキス、あまり長くするとわたくし……どうかなってしまいそうです」
たっぷりとキスを交わして、名残惜しそうに唇を離すセリア。淡い陽光の中で紅い瞳が濡れたように輝いていた。
「…キスしてるセリアも可愛いな」
「……そんなことを言われると、もうキスしか出来なくなってしまいます」
「はは、そんなセリアもいいかもな」
「もう…ご主人さま、あまり困らせないでくださいまし」
こつん、と額を優しくぶつけるセリア。それからゆっくりベッドから降りると「それでは、下でお待ちしておりますね。」と微笑みながら屋を出ていった。
「さて、俺も起きるか」
それから俺はいつもどおりに妹が入った風呂の残り湯で顔を洗い、妹の脱ぎたて黒ストで顔を拭き食卓へ向かう。
「あれ…?」
「あ、お兄ちゃん。おはようございます」
「ああ、おはよう明日香」
食卓には昨日入院したはずの明日香が居てとても驚いた。朝食の準備を手伝っているようでテキパキと四人分の席を用意している。
「さあ、ご主人さま、どうぞ召し上がってくださいまし」
「どうぞお兄ちゃん!私とセリアちゃん、ダブル妹お手製の愛情たっぷり朝ごはんですよ!」
いつもの定位置に腰を下ろせば明日香とセリアの二人の美少女に満面の笑みで出迎えられる。兄としての至福のひととき――妹の手作り朝ごはんタイムだ。
「今日のメニューは朝三時に起きて近海で釣ってきたお魚の塩焼きとアサリの味噌汁!それに」
「我が国の妹女王アイリスの卵で作ったオムライスです」
「わあ、ありがとう」
明日香とセリアの愛情たっぷりの手料理をいただく。魚の塩焼きも『ご主人さま大大大好き』とケチャップで書かれたオムライスも素晴らしく美味だ。口の中に甘く重々しい愛情が、クリーミーな妹の味が広がってゆく――
「はい、悠人くん。ちゃんとミルクも飲まなきゃね」
「ありがとうございます」
「ふふ…、いっぱい飲んでね♡」
隣に控えていた秋穂さんの胸の谷間に顔を突っ込み、そこに満ちるミルクをごくごくと飲み干す。おっぱいグラスに注がれたミルクは甘ったるく芳醇で濃厚なバブみが喉の奥にしっとりと絡みつき、もはや子宮に戻りたくなる程に美味い。
「ご主人さま、お口にミルクが……じっとしてて下さいまし」
「きゃん!」
セリアが明日香のお腹へ手をかざせば底の見えない大穴が――
「…これは白の国の妹女王、アリシアのパンツですね。今日のパンツガチャはどうやら当たりのようです」
SSR級パンツで俺の口元を甲斐甲斐しく拭くセリア。
アリシア女王の脱ぎたてほかほかおパンちゅは上質なシルク製で口を拭くにも食べるにも丁度いい。清楚なアリシアの匂いとパンツの甘さが口の中でほろほろと解けてゆく――心と身体の両方で天上の福音が鳴り響いている。
パンツをもしゃもしゃと頬張る俺の前で明日香がニコニコ顔で赤いノートを取り出した。我が家では恒例となった楽しい楽しいお勉強の時間が始まるのだ。
「それでは、今日のお話を読んでいきますね。『妹しか存在しない異世界に飛ばされたので妹でハーレムを作りました』――第三話です」
「わーい!」
*****
***
**
*
――作戦開始五分前。
「…明日香……」
小高い丘から見下ろせば、一面真っ黒に塗りつぶされていた。緑豊かな大地は踏み荒らされ黒の軍勢――およそ2万の兵が白の国を責め滅ぼさんと向かっている。
「…。」
剣を握り込みながらユウトはたった一人、門の前で軍勢が来るのを待っていた。
白の国へと続く『アニーの門』の両脇は強固な魔法障壁が遮り、今ユウトが居る場所を通らないことには入国は不可能。つまり、ユウトは一番最初にあの恐ろしい軍勢と当たることになる。
「…。」
アスナから渡された一振りの剣と盾はどちらも一級品らしいが、二万の軍を瞬時に打ち破るだけの力は持っていそうにない。なぜこんなことに、と思うが既に状況は決している。
ザッザッ、ザッザッ、ザッザッ、ザッザッ
地鳴りと共に響く規則正しい行軍の足音を聞きながら、ユウトはじっと目をつぶる。
あの恐ろしい黒い軍勢がココに来るまでどれくらいだろう。
果たして作戦は成功するのだろうか。自分は勝てるのだろうか。生きて元の世界に帰れるのだろうか――様々な迷いが浮かんでは消える。でも、どんな結末を迎えたとしても彼女たち助けたいと思ったのは確かなのだ。その為に命を張ることに後悔はない。
ザッザッ、ザッザッ、ザッザッ、ザッザッ――
足音が止んだ。
「貴様…、何者だ。何故ここに居る」
剣を握ったままユウトは目を開ける。黒の軍勢――その指揮官がすぐ目の前に立っていた。
――作戦開始十五分前。
「本当にいいのですか、隊長…。」
「ああ、構わん。あの場はユウトに任せる」
白の軍が集まる城壁前でアスナは副隊長と作戦について話し合っていた。
「いくら保持スキルが1京2858兆0519億6763万3865個あるとしても、戦闘は素人なのでは?」
「フ…、安心しろ副隊長。私に考えがある」
アスナは自信たっぷりに笑うと、副隊長の耳元へそっと口を近づける。
「黒の軍の指揮官はあの『暴虐のジリオラ』だ。しかも軍は精強でよく訓練されている。正面からぶつかれば、我々もただではすまない」
「ええ、ですから――」
「しかし、だ。ジリオラは軍を指揮する能力は少し欠ける。挑発に弱く、一騎打ちや一騎駆けを好む暴れん坊だからな。そこで――」
「…なるほど。ユウト殿に一騎打ちを挑ませてスキを作るわけですか。ユウト殿なら圧倒的スキル数で身は守れるでしょうし、勝負は長引きますね」
「フッ、その通りだ」
白の騎士アスナは整った顔を歪めて笑う。副隊長はその笑みになんだか邪悪なものを感じ、思わず息を呑む。
「この作戦が成功すれば黒の軍に大打撃を与えることが出来るだろう。いや、むしろ壊滅させることも出来るかもしれん」
「もしや、隊長…ユウト殿を囮にするだけでなく――」
「…そうだ。ジリオラがユウトに気を取られているうちに、我が魔法部隊で一斉射する」
「そんな!」
「ユウトを配置した後に詠唱を開始、黒の軍が止まったところに全力の爆散魔法――エクスプロージョンを叩き込めば七割は消滅させられるだろう」
「しかし、それではユウト殿まで!」
「…ヤツに恨みはないが、こうでもしないと黒の軍に勝てん」
「しかし隊長!彼は我々が探していた伝説の――!」
「巫山戯るな!
涙目になりながら地団駄を踏むアスナ。キッと敵を見るような目で異を唱える副官を睨みつける。アスナの中で女王の前での失態が未だに響いていた。
「とにかく!勝つためにはやるしかない!一人の犠牲で国の民を守れるのであれば実行すべきだ!」
「そんな作戦、女王陛下がお認めになるわけがありません!」
「…ヤツは事故で死んだ、ということにしておけば問題ない」
「……隊長……!」
「フッ、そんな顔をするなスミカ。たかだか巨根のヘンタイが一人死ぬぐらいだ。気に病むことはない」
「……隊長……」
「それに
「……隊長……」
「なんだ、スミカ。そんなに青い顔をして…まだ気に病んでいるのか?あんな性欲魔神が焼死体になっても気にする必要は――」
副官のスミカが静かに指した方向――アスナが後ろを振り向くと、そこにはユウトが立っていた。
「あ……」
「明日香…」
「わ、『悪巧みご苦労さま』だと…? き、貴様、いつから――」
「明日香…」
「『ああ、構わん。あの場はユウトに任せる』からだと!?最初からじゃないか!なぜ気づかなかっ……!まさか!隠密系のスキルを使ったな!貴様!」
「明日香…」
「『そんなの知らない』だと!?しらを切るつもりか!ズルいぞ!インチキ!こんなのインチキだ!信頼してる仲間に対してそんなスキル使ったらいけないんだぞ!おちおち内緒話もできないじゃないか!」
ユウトの笑顔に対し、真っ赤になって大量の冷や汗をかくアスナ。白の国一の騎士と崇められる存在のアスナだが、目の前の男に心の底から恐怖していた。
触れられるだけでアヘ顔にしてまうユウトの力は騎士であるアスナの名誉とプライドをコナゴナに砕き、腰も一緒に砕いている。最早あと一度でも触られれば、身も心も目の前の男に捧げてしまう確信がアスナにはあった。
「いいか!仲間がいるところではそういうスキルは使ったらダメなんだぞ!以後気をつけておくように!」
「明日香……」
「まあ誰にでも間違いはあるからな!ははは、トクベツに私は気にしないことにしといてやる!ノゾキなんかしたらダメだぞ!」
「た、隊長……」
「では私とスミカは作戦会議を続けるから!それじゃあにゃっはぁああああぁぁああああんっっっ♡や、やめっ、触るにゃぁああんっ♡」
ユウトはアスナの細腕を掴み、問答無用でアヘらせると物陰へずるずる引っ張っていく。卑劣な真似をする妹騎士にはお仕置きが必要なのだ。
「しゅみかぁ…っは!たしゅけ、たしゅけてぇ…!おしりっ…♡おしりなでりゅなぁっ!」
「隊長…、どうかご無事で…」
いつも凛々しいアスナが全力でアヘる姿を間近で見てしまったスミカは、連行されていく隊長を黙って見送った。
引きずられているアスナの目は既にトロンと蕩けきっていて、嬉しいのかそうでないのか分からなかったのだ。
★★★
「あ、隊長――」
程なくして、アスナが副隊長の待機するテントへ戻ってきた。
「しゅみか…しゃっきのしゃくせんはぁ…やっぱりぃ…ダメにされましたぁ…♡」
「…………………………………………………そう、ですか」
「ぅん……♡ おにぃちゃんに全部おまかしぇようと思いましゅ…わた
「…了解しました。」
陶酔しきったアヘ顔でダブルピースを決める騎士アスナ。
敵を真っ直ぐ射抜く眼光の鋭さも、味方を鼓舞する凛々しい姿も、最早どこにも見当たらない。騎士としての矜持が快楽にとろっとろに溶かされていた。
(触れるだけで隊長をここまで堕とすことが出来るなら、ユウト殿ならもしかするとあるいは――)
副隊長のスミカは新しい下着とスカートを用意してやりながら思案する。
白の軍には渡り合えるだけの戦力はもう残っていない。一人が一騎当千の活躍をすれば退けられる、という簡単なものでもない。
(いや、しかし…もしもユウト殿が本当に伝説のお兄ちゃんであるなら――)
度重なる戦闘で既にこちらの戦力は半分以下。白の国が滅ぶのは最早時間の問題だ。しかし、それでも
(ユウト殿…、お兄さま……どうかご無事で)
スミカは異界の兄に――ユウトに期待をせずには居られなかった。
*****
***
**
*
「ブフゥウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!!!」
「きゃああああっっ!!?」
真面目な顔で朗読する妹めがけて、口の中のパンツを思い切り吐き出した。
「なんだこの狂気に満ちた世界は!?俺は何を食ってんだ!?」
改変された世界で悠人だけが目を覚ました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます