第87話 女神さまの願い? (15)

 すると家のひとは『ヒィ~!』といった様子で畏怖……後ろへとたじろぐ。

 そんな様子の家のひとを見て──。


「あんたぁ~。その場から早く逃げて~」


 と、叫んだよ。


 でないと? アテナが持つランスの威力で、家のひとは完全に消去──!


 二度と行き帰ることすら出来ない。


 というか? 転生することも出来なくなる。


 ……で、でもね?


 家の絶叫染みた台詞を聞いても、家のひとにはピンと来なかったみたいだから。


 あのひとは、「えっ?」と、嘆息を漏らして佇むだけ。


 となると? 家のひとはアテナのランスの攻撃を真面に受けるだけだから。


 うちはアテナに、「アテナ~、ちょっと待って家のひとがぁ~?」と、声をかけるのだが。彼女は正気では無いので。そのままランスの光りの矢を放つ──。


 それも連射のようだ!


 だからうちも、家のひとを庇おうと飛び込むのだが間に合いそうもないと。うちが思った瞬間に詠唱──。


 それも女神四人の慈愛の唄……。


 そ、そう、女神フリッグを先頭に、女神フレイヤ、女神イシュタルに女神ダナキムの声が唱えられると同時に、漆黒の闇──黄泉平坂を覆る灯り──陽が差し込んだ!


 と同時に。坂を無表情で前を向き、登ることしか出来ない筈の屍達が陽に注目をしたのだよ。


 でッ、少しだけ昇った陽がまた傾くと同時に。黄泉平坂で、人の男と交えながら、宴をして楽しんでいた筈の女神達も、その場から消えて無くなった。男と一緒にね。


 そう、まるで、夢幻だったかのように。


 となると? 女神さまのお願いは一体何だったのだろうか? と、傍から見ている者達は思う。



 ◇◇◇◇◇



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