第71話 天国良いところ~。酒も美味いし、姉ちゃんも綺麗だ~ (10)

〈ジャン~♪ ジャン~♪ ジャン~♪〉


「アラ~、アラ~。ヨイ、ヨイ、ヨイ~」


〈パンパン〉


「ソラ~、ソラ~、ヨイ~、ヨイ~ッと……」


〈ジャン~♪ ジャン~♪ ジャン~♪〉


 まあ、何処から聞こえるのだろうか?


 ここは地獄の閻魔も金次第である、冥界の一歩手前の黄泉平坂なのだが。何処からともなく歌声や楽器の音……。


 そして手を叩く音に混じって、この世の者ではないのでは? と、傍から見たら思うぐらい美しい女性複数の舞が目に映る──。


 一体彼女達は何者なのだろうか? と、思いながら。女性の舞を見て堪能しようと凝視をすれば男性の姿が一名あることに気が付いたのだが。


 彼の容姿を見れば、周りにいる女性達とは不釣り合いな年齢の男性だなぁ~。と、傍から見ている者達は思ったのだよ……ッて。その傍から見ている者と言うのは、何を隠そう! うちだよ! うち……。女神カイロスさまなのだ。


 ッて、威張っていても仕方がないので、うちもまだまだジャンジャンお酒を飲むからね~。


「どう~? 和~? あんたの周りは美人ぞろいだから嬉しくて仕方がないだろう~?」


 もうかなり酔って、足にもきているうちは、『フワ~、フワ~』と、上機嫌で和に訊ねた。


 あんたの周りは、この世の者とは思えない程美しい豊穣の女神達が勢揃いだから嬉しくて仕方がないだろうと?


「あああ~、本当だ~。死んでもこの先よいことなどないと思っていたが。まさか? あの世に着いたら酒池肉林しゅちにくりんが全部揃っているとは思わなかったよ~。まさに、天国、一度はおいで~、酒は美味いし、姉ちゃんも綺麗だぁ~。と、いった感じで、幸せ者過ぎるぞ。儂は~。みなこれもカイロスのお蔭だよ~」


 すると和は、うちら女神の極上の接待に大変満足……。何度も歓喜の声を出している始末……。


 まあ、声を大にして叫んで、自身の身体で喜びを表すのはいいのだが……。


 このおじさん、少しばかり、度が過ぎるというか?


 女神相手にここまで悪戯行為をすれば、天からの罰──。


 女神達の逆鱗に触れることになるのでは?


 と、うちは、傍から見ていた『ドキドキ、ハラハラ』と、しているのだよ。


 特にこの中には、あのポセイドンやこの地を統括する冥界の神、ハーデスと対峙して引けをとらなかった。戦女神アテネもいるのにこの男だけは酔っぱらいになってしまい。


 もう、女神相手でも見境がなくなり、男の性という奴を抑えきれなくなっているから大変に困っているのだよ。


 だってそろそろ、誰か一人ぐらいは憤慨して和に、神の天罰を下しそうな気がする。


「ほら~。そこの綺麗なお姉さんも早くこちらにおいで~。あああ~、こっちのお姉さんもほら~、早く~」


 まあ、こんな感じで、女神達の腕を強引に掴んで、自身の方へと引き寄せるのだよ。


 だからうちのツレや姉さん達は「アレ~」と、言葉を漏らす。


 でッ、その後は。


「あん~。あなた~。本当に御強いのね~」


「わ、我も甘えてもいいかなぁ~。和~」


「うぅ~ん。あなた~。妾の肢体を~。もっと触れ触ってお願いだから~」


「あぁ~ん、私も~」


「あ、あの……。私もできれば、触って頂くと大変に嬉しいです……。ハイ……」


 まあ、こんな感じでみなが大喜びをしている状態なのだよ。


 特に何処かのおばさんは、浮気性の旦那との夫婦生活がスレテいる状態で。夫に全く相手にしてもらえない状態なので、和が触れ触れば大喜び──。


 それこそ? 優しい和に『メロメロ』状態に陥っているようだから。女神の逆鱗に和は触れるようなことにはならないみたい。


 それよりも後で子供ができたとか?


 そんな大変なことになってもうちは知らないからねと思う程仲がよいのだよ。二人はね……。


 まあ、とにかく、女神フリッグとアテナ、ダムキナの三人は、この後どうなってもうちは知らないから? と、傍から見て思う程、和とは仲が好過ぎて困る。



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