第62話 天国良いところ~。酒も美味いし、姉ちゃんも綺麗だ~ (1)
〈ズルズル……〉
〈ザクザク……〉
(ん? 人の足音……? 一体ここは何処だ?)
う~ん、和……。やっと彼は目が覚め意識が戻ったようだよ。
だって先程迄和は、この漆黒の闇の中で、只ひたすら無意識──。呆然としながら彼の周りに多々いる人達と歩いていたのだよ。川の流れのように。
それはまるで日本の都心……。東京での朝の通勤ラッシュに良く似ている光景にも見える。
だってここにいる者達皆が、只ひたすら無言で前を向き歩く姿などは、都心の朝の人混みの多いい通勤ラッシュを思わせるから。
そんな中を和も先程迄は、血の気も無い無表情な顔をしながら無言で歩いていた。
まるで死人……。亡者のように……。
と、いうか? 彼は自身の人生を一からやり直す為に、某洋画のタイムリープのように、自身の愛車である軽の箱バンを疾走させて、『バックザー』しようと試みたのだが。いくら走行してもタイムリープをしないので諦めて。もう一度自身の惨めな人生を良い物へとやり直す為に、死んで生まれ変わる転生の方を選び、自ら自身の命を奪った。
そしてついた場所が天国……。黄泉比良坂というわけなのだよ。
う~ん、それにして、辺りは漆黒の闇と、無表情で歩く人達の群れが川のように動いている光景しか映らない。
だから傍から見ている者達……ではなくて。神々は不満……。
あああ、面白くないから不快感だけ募らせる。
う~ん、でも、この馬鹿な男……。和は。
「い、一体ここは何処だぁあああ! お~い! 誰か返事をしてくれ~! お願いだぁあああ!」
驚愕──!
絶叫をあげながら、自身の横を素通りする者達へと声をかけ始めたよ。
皆死んだ者達──。亡者だと知らずに。
だから、あの男を傍から見ている神達は、奴のことが可笑しくて仕方がなくなりだしたのだよ。
だって和は、自身の横を通り過ぎて行く亡者達に声をかけるだけではなくて、自身の両手を使用──。
亡者の肩を両手で掴んで揺らし始めた。
「お~い! お~い!」と声をかけながら。
だから、傍から見ている神達は、可笑しくて仕方がない。
だから神の周りからも。「アッ、ハッ、ハハハ……」と、他の神々達の笑い声が多々聞こえてくる。
「ウフ~」
……ん? 今、女神の微笑が聞こえてきたような気がする?
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