第55話 俺は他界しちゃった~ (16)

 和は驚嘆しながら独り言を漏らし終えると。


 今度は自身の脳裏でこんなことを思案するのだよ。


(もしかすると? 家の中に家具や電化製品などなくなると、こんなにも音が響き渡るものなのかも知れない?)


 まあ、こんなことを思案しながら和は、『ブゥ~ン、ブゥ~ン』と、掃除機独特の音を家じゅうに響かせながら、黙々と家中を掃除して回る。


 それが終わると今度は彼、各部屋を水拭きして回る。大変に丁寧に水拭きして回るのだよ。


 でッ、彼のそんな黙々と水拭きをする様子を良く凝視してみたら。


 座り込んで水拭きをしている彼の両目からからまた涙が溢れ出ている。フローリングが水浸しになるくらい。


 う~ん、どうやら、和はまたこの家で起きた過去を思い出し泣き始めたみたいだね。


 だって和はこの家を購入したての頃は、未だ若いし、彼自身も活力に満ち溢れ、冒頭の通りで、まだまだ儂は、若い者には負けられないといった、体力の有り余った様子の男だったから。仕事から帰宅をしても。自身の購入したこの家が嬉しいし、可愛くて仕方がないから、毎日このように水拭きをしていた、一部屋ごと隅々迄水拭きと乾拭きの両方をおこなってまわった。和の妻が呆れるぐらい。


 


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