第52話 俺は他界しちゃった~ (15)

 そして和は愛犬の近くに寄ると独り言を呟き始めた……。


 では、ないか?


 自身の愛犬だった者へと話しかける。


 だって愛犬は未だこの家が売却されて、今日この家から家族で出ていかなくなったという事実を知らないのだから説明をしないといけないと和自身も思ったみたいだ。


 だから和は愛犬へと話しかけるのだよ。こんな感じでね。


「ごめんな、父さん……。家を守れなかったよ。今日からこの家を出ていかないといけなくなった。本当にごめん……。お前とも今日でサヨナラだ……。本当にごめんよ。ごめん……。ごめんなさい……」


 只今愛犬へと謝罪を告げている和なのだが、彼自身もせめて、この老犬が他界をする迄は、この夢のマイホームだったお城死守しようと抗いてはみたのだが。


 傍から見ている者達も知っての通りで、そこまでは耐え忍ぶことは不可能だった。


 だから和はこの家と同じ年齢……。


 家の購入時に慌てて子供達と近所のホームセンターへといき購入をした幼犬──。


 この家と同じ歴史を持つ老犬へと何度も謝罪を告げた。


 でッ、老犬へと謝罪を何度も告げる和なのだが。ふと気がつけば和も、老犬のことを抱き上げて「ごめんなさい。ごめんなさい……」と、謝罪を繰り返していたのだよ。


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