第16話 プロローグ と、言うよりも? どうしようもない男……(1)
最初両親に『寮に入れ!』と、告げられた時は、あれ程男は不快感をあらわにしていたのにね。
少し間を置くと冷静になり、自身の心の中で。
(寮か……? 先に勤めている奴らと一緒に暮らすような寮なら面倒だが。一人暮らしならいいかも知れない……)
と、思ったみたい。
だって先程も告げた通りで、彼は夜遅く……と言うか? 明け方まで、ツレ達と近所迷惑など気にしないで、自身の部屋で音楽をガンガンかけながら雑談──大騒ぎをいつもしているから。
両親から『うるさい──! 静かにしろぉおおおっ!』と、怒号を吐かれ。
男は売り言葉に買い言葉ではないが、『うるさい──! 黙れぇえええっ!』と、言い返している日常を続けているから。家に居るのが面倒だと思っているところがあった。
だから寮だと言っても、自分自身が一人だけで自由な生活を満喫して送ることが可能ならば、大変に魅力的なことだと思ったみたいなのだ。
彼は前向きに検討をする。
すると善は急げ──。
慌てて理容見習い、インターの職へ就いた。
男は職へと就いたはいいのだが。理容院の見習いの仕事内容を彼は、安易に考えていた。
只マスターやお店の先輩達の補助的なこと……。
エプロンやタオルの受け渡し、パーマ用のロットやアイロンなど、その他諸々の受け渡しにカット後に床に散らばるお客さまの髪の毛の掃除をするぐらいで良いと思っていたら。
入社したその日の夜から、『居残りで練習を始める!』と、マスターに告げられて、ワンツーマンでのシャンプーの練習がその晩から始める。
だから彼は、仕事が終わり寮に帰ると、クタクタになり、寮から出て、ツレ達が多々いる繁華街へと夜遊びに行く気力も起きないで。
そのまま、風呂に入り、床へと入る日々が続く。
う~ん、でも、一月も真面目に覚えれば、元々親が認めるほど手先が器用な彼だから、難なくこなせるようになる。
なれば今度は、時間にゆとりができる。
ゆとりができれば、夜に暇を持て余す男……。
と、なると? お店が終われば、夜の繁華街へと、ツレ達や女を求めて遊びにでかける。
未成年なのに、夜の小さな飲み屋にディスコ、繁華街の中心にある、公園でツレ達や知り合いの少女達と会い。
大きな声を出して皆で雑談──。
夜だと言っても繁華街なので、通行人も多々いるのに。
他人のことなど気にもせずに、皆で歩道を潰すほど溜まって雑談を繰り返す日々を繰り返すのだよ。
明け方近くまで。
そんなことを繰り返していると、自身の生活のリズムも悪くはなるから、寮とお店との距離は大変に近いのにも関わらず。
お店への出勤の方が遅れぎみになる。
なるだけならばいいのだが。お店での勤務態度の方悪くはなる。
彼は朝帰りや、繁華街でナンパした女子達を自身の寮へと連れ込んで、床を一緒にする生活も続けているから眠たくて仕方がない。
だから暇さえあれば、『ふわぁ~』と、あくびばかりをしているから、マスターやお店の先輩などに注意を受ける。
「いい加減しろ──! シャキッとせんかぁあああっ!」
まあ、こんな感じでね。
「すいません」
彼は取り敢えずこのように、マスターやお店の先輩などに謝罪をするのだが。
(うっせぇ~なぁ~。この爺はぁ~。頭くるからブチ殴ってやろうか~? それにこいつ、いつも先輩面しているけど。ビッタレの癖に生意気なのだよ。後で店の裏に連れていって、顔に二三発喰らわしてやろうか~?)
まあ、こんな感じで内心は、不満を募らせているのだよ。
だから男は、店のマスターや先輩面している男を殴ってやろうかと、思い。
自身の握り拳を『ギュ~』と強く握り、自身の腰を入れ──。
右ストレートを二人に放とうと思うのだが。
(……ん? ちょっと待てよ……。もしも~? この店を首になることになれば、家に帰らないといけなくなる……。そうなると、市内の繁華街へと遊びに行くのは少々時間がかかるので不便になるから。今のように手軽に行って帰ってなどができなくなるから我慢をしよう……)
お店のマスターと先輩を殴ろうとした男なのだが、ふとこんなことを思い、止まったのだよ。本当に二人を殴ってしまうと男は、お店の方を首になってしまう。
そうなると、今のように安易に繁華街へと遊びに行くことができなくなる。
特に今男がインターとして勤めているお店の場所は、バスや路面電車の最終便に乗り遅れたとしても、いざとなれば徒歩で寮まで帰宅ができるほどの距離だから。
男は、自宅で暮らすよりも寮で暮らす方が、都合がいいので耐え忍ぶことに決めた。
う~ん、でもさぁ~、いくら彼がここで耐え忍んでも、ヤンキーである彼は、後々後悔をするほど素行が悪いから。
彼にしては都合の良い夢のような生活も長くは続かない。
だってさぁ~、彼の住む寮の部屋に、女性一人が泊まることもあれば、複数の男女……。
彼のツレや知り合いの女性達なのだが、大人数で宿泊をすることもある。
でッ、男の部屋に宿泊をすれば、未成年者の癖にお酒を飲み、皆で奇声をあげては大騒ぎをするのだよ。
まあ、そんなことも、一度や二度……。
う~ん、三度、四度ぐらいは、隣……。
近所の住人達も我慢ができるのだろうか?
でも、それも、何度も繰り返し多々行えば苦情もでる。
男の住む寮の部屋が溜まり場状態になり。部屋にいる者達が大騒ぎを始めると。
隣の部屋から壁伝いで、『ドンドン』と、壁を叩く音と──。
「煩い──! 静かにしろぉおおおっ! 何時だと思っている──! 近所迷惑を考えろぉおおおっ!」
まあ、こんな感じで、隣に住む住人から怒号が飛んでくる。
と、言うことだから。男は近所に住む者達への考慮も思案して、自身の部屋にいる者達へと、「みんな~、静かにしてぇ~」と、諫める言葉を……。
告げる訳ではなく。
「わりゃあああっ! 文句あるならこいやぁあああっ! 勝負をしちゃるけぇ
えええっ!」
隣の部屋に住む住人のように、自身の部屋を『ドンドン』と、叩き返しながら怒号を吐き返すのだった。
自分達が悪いことをしているのに棚にあげてね。
するとさぁ~、隣の部屋からの、壁を叩く音と怒号がピタリと止む。
止むからまた男はツレや女性達と雑談を始める。
始めるとやはり未成年の少年少女だから、楽しさ嬉しさ相まって興奮──。
直ぐに部屋にいるみんなの声が甲高くなり、無意識の内に大騒ぎを始める。
だからまた、近所迷惑になると思っていると、少女の一人が口を開き──。
「みんな~、もう、夜が遅いから静かにしよう~。あんまり大騒ぎをしていると。このひとが、この部屋に住めなくなるから。ねぇ~、お願いだよ~。みんな~」
まあ、男のツレ、知り合いの女性達の中にも、こんな良心的な諫めの言葉を、男の部屋でまた大騒ぎを始めだしたバカ者達へと告げる少女……。
と、思って声の主である少女を良く見て確認をすると。
男に寄り添っているし、彼女のこの寮の部屋の出入りは頻繁に見るから。どうやら男の彼女みたい。
でッ、そんな彼女の諫めの言葉を聞いた男のツレ達や知り合いの女性達は。
「う、うん、わかったよ。御免ね……」
と、皆が口を揃えて謝罪を告げる。
告げると、男の彼女の顔からは笑みが漏れ、「ありがとう。みんな」と、お礼の言葉が漏れる。
「はぁあああっ! お前ぇえええっ! 儂のツレ達に何文句を言っているんだぁあああっ! いい加減にしろぉおおおっ!」
でもね、男は自分のツレ達や女友達を諫めた彼女に対して、こんな感じで憤怒しながら怒号を放ったのだが。
『パチン~!』
刹那──
自身に対して、怒号を放ってきた男に対して彼女は、思いっきり頬へと平手打ちを入れた。
「な、何をするのだ。お前……」
いきなり彼女に、自身の頬へと平手打ち入れられた男は動揺しながらこんな言葉を漏らすのだよ。
自身の頬を押さえながら。
それこそ、某アニメの主人公みたいに。
『今迄儂は、彼女に殴られたことなどないのに……』とでも言いたい素振りでいるのだよ。
でもね、そんな動揺をしている男に対して彼女はね、自身の顔を近づけ詰め寄りながら。
「あんた~、うちに何をするかじゃないでしょう?」
と告げ。更に男の顔へと詰め寄る。
それこそ、男といつでもキスができそうなぐらい自身の顔を近づけながら。彼氏である男へと不満をあらわにしながら告げるのだよ。こんな感じでね。
「あんたは、ちゃんと理容師の資格を取ってうちと結婚をして養ってくれると言ってくれたじゃない~? あの時のあんたの~、うちへの言葉は、全部ウソだったの~?」
まあ、こんな言葉を彼女から怒号で吐かれると。男の方も返す言葉がみつからなくなるから。
「えっ、いや、あの……。儂が悪かったよ……」
と、言葉を漏らすだけになる。
そんな気落ちをした男の様子を彼女は、優しい瞳で凝視しながら。聖母さまのように男を優しく包み抱擁をしてあげるのだよ。
だから男は人目もはばからず、聖母さまのように優しい彼女の唇へと、自身の唇を重ねる。
重ねると二人は、お互いの愛情を確認しあうように堪能を続ける。
その後は、部屋は静かになり、深夜──。
夜も遅いと言うことだから、少年少女達は、寝息を立てながら安息に入る、男とその彼女だけを残してね。
でッ、当の二人は、寝たふりを決め込みながら布団に潜り、息を殺しながら、獣のように激しく交じり合う。若さに任せてね。
いつまでも二人の仲の良い幸せな、ままごと遊びのような生活が続くのだと信じながら。
う~ん、でもさぁ~、世の中は、そんなに甘くはできていない。
若い二人のままごと遊びのような同棲生活もそんなに長くは続かないのだよ。
だって、今迄あれ程深夜遅くまで、近所迷惑も考えず好き放題大騒ぎをしていたのだから。
近所の住人は、荒々しい男に苦情を告げるよりも。彼の雇い主であり、理容院を経営して町内会の集まり事にもちゃんと出席をする。お店のマスターや、その奥さんへと苦情……。
告げ口を始めだしたのだよ。
と、なると?
男の雇い主であるお店のマスターは、苦情ばかりを聞き手に余り始める。
そうなると今後男には、このまま勤務続行か、辞めてもらおうかと、言った話しになると思うから。
お店のマスターは、自身の奥さまと家族会議を始めるのだよ。
「おい、どうしよう?」
「ん? どうしようとは、どう言う意味ですか? あなた?」
「いや~、近所から、あの子の事で苦情が出ているけれど? どうする……?」
まあ、こんな感じで、男がインターとして働いている理容院のマスターは自身の奥さまに訊ねたのだよ。
するとさ、お店の奥さまは。
「どうするも何も、これだけ近所から苦情が出ているのだから、あの子には辞めてもらうしかないでしょ……」
自身の夫である店の店主に、男のことで慈悲の無い言葉を告げるのだよ。
男には、お店を辞めてもらうしかないと。
まあ、それはそれで致し方がないとは思う。
だって男の彼女も危惧していた通りだから、このまま夜遅く。
それこそ、明け方まで、寮の部屋で、大人数で騒いでいたら。遅かれ早かれ、仕事を辞めることになり、この部屋から出て行かないといけなくなると言っていた言葉が、現実になっただけだから仕方がない。
まあ、そんなことを傍から見ている者達が思っていると。
「まあ、そうだな……。それしかないよな……」
自身の妻の言葉を聞き、お店のマスターは、気落ちをした言葉を漏らす。
そして言葉を漏らし終えるとまた直ぐに、彼は口を開いたのだよ。
「……手先が器用で明るいし。物分かりも大変に良い子だったから。このまま頑張れば、良い技術者になれると思っていたのに、勿体無いな……」
まあ、お店のマスターは、相変わらず気落ちをした声色で、天を仰ぎながら男の才を惜しみ落胆をしだのだよ。
このまま男が順調に育てば、良い理容の技術者になれるとね。
でもさぁ~、お店を経営しているマスターは、近所の手前と、近所付き合いもあるから。
近所から苦情が出ている男をいつまでもお店に置いておくことはできない。
だから後日、お店のマスターは男に、「すまぬが、お店を辞めてもらえないか……」と、告げる。
すると男の方も、遅かれ早かれ告げられると思っていた台詞だから。
これと言った不満や駄々をこねる訳でもなく。
「すいませんでした……。本当に長らくお世話になりました……」
と、言葉を告げ。その後はお店のマスターや奥さん……。
あれ程生意気だと不満を漏らしていたお店の先輩へも深々と頭を下げ、お店を後にする。
と、言うことにだから。お店をクビになった男は、街からは郊外になる実家に帰る訳になるから、今迄彼女と続けてきたままごと遊びのような半同棲生活も終わりを告げるし。
彼女と逢うのも今迄のようにお互いが安易に逢える訳でもない。
その上、男も地元に帰る訳になるから、街中の寮生活とは違い。逆に地元のツレとは安易に会える訳で……。
それは男のツレだけには限らず、女性のツレ……。
それも、先輩、タメ、後輩と多々合い。昔のように、自身の家やツレの家……。
それだけではないね。
ツレの女性達の家等に行って夜通し遊ぶものだから、将来を約束した筈の彼女とは自然と逢わなくなり、別れてしまう。
まあ、そんな男の様子を凝視すれば、彼女のとの同棲生活はやはり、ままごと遊びだったのだと、傍から見ている者達は思うのだよ。
まあ、そんないい加減な男なのだが、この後も、あの頃のヤンキー男らしい、口ではカッコの良い将来目標を周りの者達に漏らしはするのだが。
相変わらず職の方は、美・理容院、建設関係など多々しては辞めていく生活を繰り返してきた男なのだが、少し話しが飛んだようだから、話しを元に戻しながら物語を続けていくね。
まあ、とにかく彼は、口ばかりの男のようで、今のこの歳になるまで職も定まらないままの人生を歩み続けてきたのだから家族に捨てられても仕方がないとは思う。
だって、この男は、傍から見ている者達も知っての通りで、何事に対しても耐え忍ぶことを知らない、唯我独尊を地で行くような男なのだよ。
だから彼は、就職をしても直ぐに会社の社長や上司と喧嘩をしては、仕事を辞めてしまうのだよ。
それもこんな大変な騒動を起こして──。
「貴様ぁあああっ! 誰に向かって文句を言っているのか、わかっているのかぁあああっ⁉ 儂を誰だと思っている──⁉ 儂は八木の太田と呼ばれていた男だぁあああっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます