第6話 誰か助けてくれ、お願いだ!(1)

「うぎゃ、あああ~。痛い~。痛い~。痛いぞ~! 何故だかわからないけれど~? 死んだ筈の儂──! 何故だかわからんが? こいつらに~。踏まれぇえええ~。踏まれてぇえええ~。痛くて仕方がない~。ないぞ~! だ、誰か助けてくれぇえええ~! お願いだぁあああ~! 頼むよ~!」と。


 相変わらず声を大にして叫ぶよ。男──。


 そう、現世ではおじさんと呼ばれていた爺、おじさんなのだが。まあ、遠目からでも凝視すれば見てわかる通りで、亡者達の群れ──ゾンビの如く無表情、無意識で、川の流れのように坂を……。




 あの世、冥府の入り口にあるとされている黄泉平坂の坂を、ゆるりと行進──進軍を進める。亡者の群れ、川の流れに飲み込まれてしまい。おじさんは横たわってしまったのだ。


 でッ、その後は、見ての通りの始末だよ。無意識、無感情の彼等、彼女等は、横たわるおじさんを避けることもしないで行軍をするから。


 彼は亡者達に踏み、潰されている状態だから、痛みに耐え忍べなくなり。おじさんは声を大にして絶叫──! 叫んでいる訳なのだ。

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