第54話 覇王竜の卵
そんな各国の思惑など知る由もない―――いや、大方予想はついているアリッサは、馬車に揺られること2週間。遂にオーディアスへ帰ってきたのであった。
入って街並みを見ていたアリッサが気付いたのは、どこか浮足立っている人々の様子だ。
「ああ、それはきっと他国の重鎮がこの国に集まっていることが関係しているでしょう」
「重鎮?」
そこで以前アリッサを一目見たいと言って、今回の交渉の場に滑り込んできた獣人国と聖王国の話を思い出す。しかし、パステルの言葉を理解したものの何故それが一般の人々にも影響を及ぼしているのか、さしものアリッサにも分からなかったが、その答えはすぐに彼の口からもたらされた。
「麗奈さんの持つ短剣がこの国で抜かれた時、それはもう凄まじい衝撃だったんですよ。その衝撃だけで壊れた家があるほどにね」
「あ~………」
国としては実験を行ったと発表したらしいが、この国は戦士の国。戦いに心得がある者達ばかりなので、一部の者には麗奈の武器が巻き起こしたアスガルドの魔力を感じ取ったらしく。それが一部の間で広がったのがいつしか噂となって一般社会にも広がり、あの剣を作った者がこの大陸にいる、と人々は真実に辿り着いてしまったのだ。
「人の噂に戸は立てられないけど………それでオレに辿り着くってのも妙だな。王様に近い誰かが漏らしたか...?」
「それは少々想像したくは無いのですが……最近聖王国が怪しい動きを見せていまして、恐らくアリッサさん関係かと。ご注意ください」
「あの国は碌な奴がいないしな……聖女もくそ野郎だし、ヴァルキリーシスターズの長女なんかもっと最悪だ」
アリッサの吐き捨てるような言葉遣いにパステルは静かに肩をすくめる。自国だと言うのに宗教の後ろ盾があまりにも強大すぎるが故に裁くこともできず、歯がゆい思いをしているのだろう。
さて、一体何人のメイドがあの女に壊されるのやら。
アリッサはそのまま王城にはいかず、リーシアの家へ向かう。パステルは若干気まずそうな顔をしているが、彼との関係を考えるに初恋の女の子へ会うのは誰だって緊張するものだろう。
まぁ、その初恋の女の子の初めてを目の前のアリッサに奪われているとは露ほどにも思っていないだろうが。
馬車を降りるなりアリッサは強い衝撃を受けて倒れた。
「いてっ!な――――」
「アリッサ!!会いたかった!!」
「リーシア!?」
『なんだ?』と言う前にリーシアが抱き着いて来ていた。聞いた話では、サンダードラゴンと戦いかなりの傷を負って療養中と思っていたが、目の前で感動の再会を果たした如く涙を浮かべる少女に傷の文字などなかった。
「お、おい!はしたないぞ!!それでもアルベット家の跡取りか!!」
「あら、パステルまだいたの?もうアリッサは送り届けたでしょ。貴方の任務は私が引き継ぐからもう帰っていいわよ」
「なっ!?な、なな!なんだそれは!!」
「書類上は送り届け次第アリッサの身柄は私、アルベット家に一任されているのよ。それは陛下も納得したでしょう?」
「そ、それはそうだが……!も、もっとこう…!」
「なに?労いの言葉でも欲しいの?」
「リーシア……パステルとは同じ飯を食べた仲だ。公私を分けているとはいえ、オーディアス側の事情も問題にならない程度に友であるオレに今回の話をしてくれた。彼は本当にいいやつなんだ」
「ふ~ん……――――此度の護衛任務ご苦労様でした。ここからはアルベット家が引き継ぎますので、ゆっくりと休んでください」
未だに子供の頃に嫌がらせを受けたことを根に持っているリーシアとして、素直にパステルを褒めることは出来なかったが、アリッサの懇願を受けて姿勢を正すと嫌々ながらも労いの言葉を投げた。
それを受けたパステルは、ぱあっと一瞬笑顔を浮かべるもすぐに表情を戻して一礼をすると兵を連れて去って行った。
「堅苦しいわ~……私に貴族の真似事なんてさせないでよ」
「いやいや、お前はどう足掻いても貴族だからな」
パステルが去ると同時にバニラとアザム、そして問題児であるリリスとインドラがマーカスの馬車から降りてアリッサの下へやってくる。
リーシアはバニラとアザムとの再会に喜ぶのもつかの間、サンダードラゴン以上の存在が目の前にいることを知り、生唾を飲む。
「あ、アリッサ……彼女がまさか?」
「ああ、太陽竜インドラ。真竜のお姫様だ」
「お初にお目にかかります。太陽竜インドラ様」
「ふむ……お前か、この世界に転生してきたアリッサと初めて知己を結んだ者とは――――いや、それ以上の関係か」
「へ?あ、えっと……」
片膝をつき、挨拶をしたところで突然爆弾を投げつけられたリーシアが思わず顔を上げると、そこにはインドラの瞳があった。どこまでも見通すような瞳にリーシアは目が離せなくなる。
「お前、こやつの子を産むのか?」
「はい!」
「え?即答?」
「お前は黙っておれ――――こやつの子が世界に混沌を呼ぶかもしれぬぞ」
「それでも」
「…………そうか。ならば好きにするがよい。いま神から天啓を得た。アリッサの未練を無くしたその時、お前の望みは叶うだろう」
「未練……わかりました」
インドラを作った神からの言葉を受けたインドラが語った言葉にあった『未練』。リーシアはその言葉を聞いた瞬間、最初に出会った日のことを思い出していた。
そう、ベッドの上で語ったアリッサの荒唐無稽な前世の話だ。その前世の想いを断った時、リーシアの望みは叶うという。
「え~と……最高神ソル様が?」
「ああ、あのジジイが言うのだから本当なのだろう。アリッサ、お主遊びまくっているが子供が出来たことがないだろう?」
「あ~……どうなんだろ……」
鋭い眼光を放つリーシアの視線を避けながら、アリッサはふとリリスに言われたことを思い出していた。
それはほぼ逆レイプに近い形でリリスに襲われた日の時、彼女は気になることを言っていた。『アンタの精子ってなんかおかしいのよね……』と。
「生命神エロス様が封印をかけているが故に子はできぬらしい。ま、その未練とやらを断てばできるそうだが」
「未練ねえ……まぁ妹もこっちに来てしまったみたいだし、あんまり元の世界に未練はないけど、まだ突っかかっているものはあるよね」
「ほう……妹がおったのか。それで?そいつは今どこにいるのだ?」
「エウロが言うには獣人国の最奥地。仙人の谷に降り立ったみたいだよ。とんでもねえ核爆弾抱えてな」
「仙人の谷とはまた遠い場所に降りたな……――――ん?爆弾とはどういう意味だ?何か神から渡されたものでもあるのか?」
爆弾――――それはバハムートの卵のことで、過去の大戦で数多くの同胞を殺された真竜の長としては看過できぬ代物だろう。言った暁には今にも飛び立って唯からバハムートを取り上げかねないと思い、アリッサは何か代案はないかと考えを巡らせる。
かと言って目の前の存在は規格外だ。嘘を見抜く瞳を持っているし、下手を打てば機嫌を損ねてしまうだろう。
さあ、どうしたものかと必死に考えているとアリッサの意識が突如暗闇に沈んだ。
「ん?」
目を開けると既に見慣れた水中風景。いつも通りメイド姿のリヴァイアサンとこちらに手を振る笑顔の女とも男とも取れる神―――エウロが待っており、アリッサが一歩踏み出すと隣にインドラもいることに気付く。
「インドラ様!?」
「ふむ……童も呼ばれたか。よほどの案件と見える」
「おーい!遠くにいないで座りなよ!」
「行くぞ」
「は、はい…」
神に呼び出されるのは慣れているのか、インドラは驚いた様子もなく先を行って椅子に腰かけ、アリッサも遅れながらも座る。
全員にメイドのリヴァイアサンが準備した紅茶が回ったところで、インドラが口を開く。
「リヴァイアサン。ケツァルコアトルはどうなった」
「邪神の霧は払えたわ。でも、まだ目を覚まさないようね」
「ふむ………お前はなんともないのか?」
「特には。攻撃を何回か受けたけど、身体に異常はないわ。エウロ様にも見て貰ったから、大丈夫よ」
「それならいい――――すまない水神。どうしても聞きたかった故に先に話をさせてもらった」
「構わないさ。呼んだゲストもまだ来ていないみたいだし」
「ゲスト……それは先のアリッサが言った爆弾とやらに関係することか?」
「それはもうすっごい関係しているよ。この話を聞いたら君は冷静でいられないだろうからね」
ピリッとした張り詰めた空気感に喉が鳴るアリッサは、何故自分も呼ばれたのかいまいち理解していなかったが、以前より気になっていたことをエウロに聞いてみることにする。
「そういやここに呼ばれている時は、あっちはどうなってんの?」
「基本的に時は進んでいるけど、今はクロノス神に力を貸してもらって現実世界の時は止まっているよ」
「マジで!?」
「クロノス様か……時を止めるほどとは、よほどのことなのだろうな」
「彼にも関係していることだからね。さて、ようやく来たようだ」
空間に暗黒の渦が巻くと、中からボロボロの光すら呑み込むような暗黒のローブを着た人物が現れた。
「少し遅れたか」
しわがれた声が静かに響く。顔は見えないが、男性と思しき初老の男は、木の杖を突きながらゆっくりとこちらへ歩き、リヴァイアサンが音も立てずにすっと椅子を引いて彼が座るのをサポートをする。
「………」
声が出なかった。今思えば神という存在と会ったのはエウロだけである。そのエウロも最高神ではなく中堅の神であり、砕けた態度と言いどこか親しさが滲み出ている神とは到底思えない付き合いやすい存在なのである。だが、目の前のボロボロのホームレスのような老人は明らかに格が違った。
一目でわかる。彼が最高神に名を連ねる存在の神だと。
「わざわざ来てくれてありがとう」
「良い。私が説明せねば納得せぬだろうからな」
「お久しぶりです。タナトス神」
「ああ、久しぶりだな」
「タナトス神……――!!」
インドラが席から立ち、頭をさげる姿に驚き、彼女の口から出た老人の正体に驚嘆と納得が同時に襲ってくる。
自分もまた席を立って頭をさげるか悩むこと一瞬、タナトス神の顔がこちらを見る。
「……お主が例の転生者か。ふむ……良い、魂の色をしている。我らの世界を幾度も救ったというのは誠か?」
「あ……え?あぁ……まぁゲームの話ですが」
「ゲーム……そう言えばそちらの世界に我らのことを知る神がいたな。確かデウスエクスなんとやら……」
「デウス?え?」
「お主の言うゲームとやらはよく知らぬが、我らの世界を題材に何か作るとか言っておってな。あの時は何を言っているのやらと思ったが、まさかあやつが得意な演算を用いて『もしもありえた』世界をシュミレートして物語にしてみせるとはな」
なんだか目の前でとんでもないことを口走っている神に理解が追いつかないアリッサは、ただ口をポカーンと開けて話を聞いていた。
「え?んじゃオレがプレイしていたレジェンダリーファンタジーは……デウスエクスマキナ神が演算して出てきた『もしも…』要はパラレルワールドのカーディナ大陸を一本のゲームにしていたってことですか!?」
「簡潔に言えばな。で、我らは演算結果を知らぬのだ。そのゲームとやらでは、どんな奴が悪さをしていた?」
「え~と……古代竜、暗黒神、封印の獣、邪神とかですかね」
「興味深いな。暗黒神と邪神はどんな奴だ?」
「暗黒神は真竜大戦後の世界で現れた神です。タナトス神達のような初めからいた神ではなく、人々の想いが集まってできた架空の神です。要は邪神崇拝から生まれた魔力の集合体みたいなもんかなと」
「なるほどな……時期的には既に過ぎているか」
「ええ、ですから特に気には止めていませんでした。それで、邪神というのは、この世界とは違う別次元にいる神ですね。あっちの世界ではしっかりとした神様だったみたいなんですが、管理しきれず滅亡寸前の世界を救うためにこの世界へ侵略してきたって話だったと思います。見た目は確かほんとクトゥルフ系のドロドロだったり、うにょうにょの触手系だったりと既に神の面影はなかったと記憶していますね」
『………』
記憶を頼りに話をしていると、エウロとタナトスの雰囲気が変わった気がした。
「アリッサ君、それで君はどうやって世界を救ったのかな?」
「ん?確かその時は主人公が転移者で、主人公の他に呼ばれた勇者達が力に目覚めて倒した気がするな」
「タナトス神、これは……」
「フォルトゥナと同じことを言っている。やはり鍵はあの子らか……」
「え?エウロどったの?」
「以前、僕はこの世界に危機が迫っていると言ったね。それが邪神達によるものなんだ」
「邪神!?え!?来るの早くね!?邪神達が来るのはあと50年くらい先の話だぞ!?」
「ケツァルコアトルがやられたのがいい例だ。既に童達の世界に来ているのだな」
「……やっぱりあのモヤは邪神のだったのか……」
「アリッサ君、フォルトゥナ神は曖昧な未来しか見えない。だが、君は既にデウスエクスマキナ神からもたらされた結果を知っている。何か他に邪神へ対抗できることはないかな」
「他にか……なら、今すぐ勇者達を鍛え上げて大陸全土の災厄認定を受けているモンスターを倒すしかない」
「操られるのだな?」
インドラの言葉にアリッサは強く頷く。
「それは良くない未来が待っているね……特に獣人国のマザータイラントワームが暴れれば地殻変動が起きる」
「地底の奥底でエネルギーを抑えているムスプルヘイムにも影響が出るだろうしな。早めに討伐せねばならぬだろう」
「……まだ我らの力で邪神の侵攻を抑えつけているが、猶予はどれほどあるとみる」
「ゲームの知識になりますが、ケツァルコアトルにも影響が出ているのを見るに猶予はあと3年ほどでしょうか。下手をすれば1年しかないかもしれません」
「………それほどなのか……邪神の力というのは」
「あっちは既に理性の無い力の塊ですからね……死ぬことなんてお構いなしなんです」
タナトスは深く頷く。そしてエウロに顔を向け、エウロは視線を受けて話を変えた。
「えっと、話を変えて君とインドラを呼んだ理由だったね。それはアリッサ君の妹さんの唯さんに渡したものに関係しているんだ」
「結局なんなのだ?そこまで言葉を濁すようなものなのか?」
「インドラ様、怒らないでまずは話を聞いてくださいね?」
「神の前で暴れたりなどせぬ」
「ほんとかなぁ……」
「え~と……タナトス神」
「ああ……インドラよ、渡したものというのはバハムートの卵なのだ」
「…………いま…なんとおっしゃいましたか…?バハムートとおっしゃいましたか?」
「厳密にはこの世界のバハムートではないがな」
「失礼を承知で申し上げます。タナトス神よ、奴がもたらした悲劇を知っていて渡したのですか?」
「ああ、そうだ。インドラよ、許せ。これは最高神全員の認可を得て渡した決定事項である。そなたが奴を破壊することも危害を加えることも許さぬ」
「わ、童の父は奴に殺されました。他にも多くの真竜が!同胞が!奴の手に!配下によって殺されました!それでもですか?!それでも奴にかける想いがあるのですか!?」
「そうだ。それでも奴は始祖竜なのだ。フォルトゥナ神が導く未来にそこの転生者の妹と共に肩を並べて戦う姿があるとな」
「馬鹿な……!」
「恨むのなら我ら最高神を恨め」
タナトスは言うべきことを言ったと判断をすると、来た時と同様に黒い渦の中に静かに消えていった。
残されたアリッサ達というと―――――
「何故だ……なぜ奴を解き放つのだ……!奴はこの世界を破壊する…!」
「アリッサ君……バハムートってどう足搔いても邪竜なの…?」
「………一つだけ、ひと作品だけ友好的だった話があります」
そっと寄って来て耳打ちするエウロにアリッサは、握り拳を握って震えるインドラを悲痛そうに見ながら口を開く。
「真竜大戦が起こるずっと前の話です。バハムートがファフニールやアジダハーカと群れずに人間の真似事をして冒険者をやっていた時があるんです。そこで、ある国の姫様に恋をするんですよ。それで人の心に触れ、抑圧されてきた破壊衝動も薄れ、人間の味方として数々の苦難を退け、真竜の役目を捨てて人の王としての道を歩むなんて世界線があったんですよ」
「なんだその世界は……」
「信じられませんよね。それ以降バハムートが改心することはなかったのですが、味方の時のバハムートは恐ろしく強かったなぁ……――――アルティメットブレスが強すぎてバランス崩壊してたし」
アリッサの悪い癖であるゲーム知識を話す中でインドラは、湧き上がる怒りを握り拳に込める。
「姫様、貴方の怒りは最もだわ。だけど、これは最高神が満場一致で決めた事実。覆ることはないわ」
「分かっておる……分かっておるが、童は……!童の受けた苦しみは!どこにぶつければよいのだ!!」
あの大戦を良く知るリヴァイアサンがインドラに話しかけると、彼女の怒りが爆発し空間が打ち震える。
「奴のせいで童は!父と母を失った!!」
「アテン……ね」
「お前の言いたいことは分かる。母上は生きておる。だが、あのような声の届かぬ廃人となった母を以前の母と言えるか!!」
「……否定はしないわ。アテンはこの世界を守るために力を出し尽くし、その結果廃人となった。壊れた太陽を戻すために」
「全ての元凶はバハムート!!奴のせいなのだ!!まだ生まれぬ赤ん坊だろうと奴は再びこの世界を混沌へ導くだろう!お前は神の裁定が全てだと思っているのか!?」
「思わないわ。神はあくまで監視者。世界を作っていくのは我々真竜よ」
「そうだ!なのに!なのになぜ奴をこの世界に解き放った!!それほどまでにこの世界は追い込まれているとでもいうのか!!」
そこでインドラの矛先は部屋主であるエウロへ向く。言葉を浴びせられたエウロは静かに向き直り、帽子を深くかぶる。
「ああ、追い込まれている。今はインドラ……キミですら関与できない次元の向こう側での攻防が続いているが、状況は芳しくない。我々神は決まりで下界へ過度の干渉を禁止されている。だが、今回はイレギュラーが過ぎる。よってかの邪神を瀬戸際で止めているわけだけど、奴の力は思った以上に強大でいずれ奴は次元の壁を越えて君の世界へやってくるだろう」
「なんか知らないけど、あの邪神は神への特効を持っているみたいだから、エウロとか神様相手には滅法強いんだよね。だからこそ、神の力を持ちつつ人間である勇者が邪神を亡ぼす担い手になるわけだけど」
「どうりで僕らが負けるワケだ」
「なんということだ………だが、バハムートを開放せねばならぬは納得いかん…!」
「インドラ様、ここはひとつオレの妹を信じてみませんか?」
「妹だと?」
「こっちに来てしまったオレの妹ですよ。根は真面目で優しくて愚直なほど真っすぐな奴でさ。そんな奴の懐にいたらバハムートも考えを改めるんじゃないかなって思うんですよ」
「そんなわけ――――!」
「バハムートに異変が起きたらエウロに連絡をくれるように頼んでいます。もし、あいつの懐にいてもこの世界で滅ぼされたやつと変わらないようであれば、その時はインドラ様が破壊すればいいと思います。正直邪神なんてバハムートがいなくても勇者のみで勝ててるので、いらないと思うんですよ」
まだ何か言いたげなインドラの言葉を遮ってアリッサは話を続ける。
「ただ!奴を破壊するのは早いっす。だから、一つここは見守りましょう。奴が悪の道に進むようであれば即座に破壊し、善の道に進むのであれば良しとしましょう。味方になればあれほど心強い竜はいませんからね」
「期限はどうする?だらだら言い訳されるのも嫌だぞ」
「邪神撃破までとしましょう。その時になればきっとオレと妹も合流しているでしょうし。その時にバハムートがどうなっているか、確かめてやりましょう」
「………分かった。今はお前の口車に乗ってやろう。水神よ、此度の件は童と神の間に確執が生まれたと思え」
「うん、すまなかったね。神を代表して謝るよ」
まだ完全に納得したわけではないが、怒りの矛先を収めたインドラは渋々引き下がって先にこの空間を去って行った。
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