第9話 パーティー結成
「え、僕たちの世界とアリッサさんの世界の総理大臣違くないですか!?」
「いやいや浮く車ってなんだよ!?君らの世界の技術進歩半端なくね!?」
と、アリッサが自分は日本人だと打ち明けてから高校生たちの反応はがらりと変化し、ものの数分で打ち解けてしまった。
途中からはリーシアも話に加わり、また彼女にいらぬ現代知識を植え付けることになってしまったが、リーシアも喜んでいる様子なのでこの件に関しては放置を決め込む。
そうして少しずつ会話に混ざるようになった麗奈に安堵したところで部屋の扉が開かれた。
「失礼します。お時間になりましたのでご準備の方をよろしくお願いします」
「は、はい!」
リーシアではなく、このパーティーのリーダーであり勇者の新垣が背筋を立てて兵士に返事をする。
「皆、行こう」
「ああ」
「………」
「ええ」
「おう」
金剛、麗奈、リーシア、アリッサの順に並んで部屋を出るとそのまま兵士に案内され、以前パーティーで通った大扉の前にやってくる。
そこには既に剣、槍、弓の勇者3名と彼らの旅に同行すると思われる高校生とこの世界の冒険者が並んでいた。
「おせえぞ、新垣」
「ご、ごめん」
これからの冒険に心を躍らせている角刈りの剣の勇者は興奮した様子で新垣を軽く弄り、その後ろに並ぶアリッサとリーシアに目を移らせる。
「へえ……」
「きめえ」
胸元や太ももに突き刺さる視線にリーシアは我慢できたようだが、女の身でも中身は男のアリッサは我慢できず、剣の勇者へ嫌悪のまなざしを向ける。
「はっ?」
「なに見てんだよ。黙って並んでいろや」
「あーしも同感。マサルってばまじでただのエロガキだったんね」
「お、お前ら何言ってんだよ!?」
チャラ男の槍とギャルの弓の勇者の思わぬ援護射撃にアリッサは面食らうが、そういやこいつら仲が悪かったことを思い出して納得する。
「そ、そう言えば3人とも旅の同行者が多いんだね」
「ん?ああ、なんかついて行きたいって言ってよ。俺は別に1人でもいいんだけど、こいつらがさ」
「俺も勝手に部屋に入ってきてお世話になる言われて困ってんだわ」
「あーしもさ~旅に出る気なんてないんだけど勝手に連れて行かれそうで嫌なんですけど」
そう、3人の勇者のパーティーは8人組だった。マサルと呼ばれた剣の勇者は8人のうち5人が同じ高校生。新垣の会話から察するに槍のチャラ男がハヤシと呼ばれ、8人のうち5人が高校生。それも4人は女子で1人は友達と思われる同じチャラ男。
そして弓の勇者ことハチクジは8人のうち3人が高校生。そして2人が女子でもう1人が気弱そうな雰囲気を受ける男子だった。
「逆にさ、ガッキーの仲間少なくない?それで大丈夫?それに1人はお荷物じゃん?」
「は?それはあたしのこと言ってんの?ケバ女」
「は?」
「は?」
「おい、そこまでにしておけ。なにもこの世界に来てまで仲違いをしなくてもいいだろう」
ハチクジの一言に髪の毛を弄っていた大海の目が鋭くなり、一瞬にして睨み合いに発展するが、金剛の言葉で2人はそっぽを向く。
「まーじで仲悪いのな。お前ら」
「あたし達のクラスだけが特別よ。他のクラスはそうじゃないんだけど」
「1年生の時はそうでもなかったのだが、たまたま他校で仲が悪かった組同士が2年に上がると同時に集まってしまってな……麗奈もハチクジとは小学生の頃から仲が悪いのだ…」
「彼女も幼馴染?」
「違う。ただの腐れ縁」
「私も学生だった頃に仲が悪い貴族がいたけれど、社交に出るとそうも言っていられないのよね。だから、あなたもどこかで折り合いをつけなさいよ?」
「どうせ高校が終われば会わなくなるような関係だ。だから、大海さんが先に大人になればいいんさ」
「分かってるもん…」
年上の2人からそう諭され、少しだけ頬を膨らませる彼女を見てアリッサとリーシアは、自分達の言葉が届いたことに安堵して頷きあう。
それから勇者ご一行は王様のありがたい言葉を承り、路銀と称して1万ゴールドを受け取ったアリッサ達は謁見の間を後にする。
謁見の間を出るなりマサルは振り返って言葉を投げかける。
「お前らはどうすんの?」
「俺はとりまノイシュさんの家に行って情報を集めるわ。この世界のことなんも知らんし」
「あーしもそんな感じ。つか、装備なんもないしさ」
「ぼ、ボクは……」
新垣はちらりとアリッサに目を向けるが、彼女から自分の正体は黙っておいて欲しいと事前に言われていたため『ハヤシ君と同じかな』と答える。
「なーるほどね。俺もそうっすかね~」
「それがいいぜ。んじゃ、またどっかで会おうや」
「………」
「またね、絶対皆一緒に帰ろう」
「おうよ!またな!」
あっさりとした別れだった。次会う時に誰も欠けていなければいいが、とアリッサは心の中で思う。
「ノイシュ、貴方は嫌な奴だけれど頼んだわよ」
「ええ、その言葉そっくりそのまま返しますが、わたくしがいれば大丈夫ですわ」
去り際、ドリルロールの金髪貴族ノイシュにリーシアは言葉を投げかけた。2人の間に悪意はなく、恐らくライバルのような関係なのだろう。
「大樹、これからどうする?」
「えっと……どうしましょうか…アリッサさん」
「オレに振るのかよ……新垣がリーダーだろ?」
「え、で、でも……アリッサさんボク達よりレベルが高いし…」
そう、既にアリッサ達はパーティーを組んでいてリーシアのレベルもバレている。もちろん新垣も金剛も大海もレベルは1でオンラインゲームで言う初心者だ。
「最初はアリッサが決めればいいんじゃない?右も左も分からないこの状況下で貴方は先輩なのだから、せめて最初だけ道を示してあげなさい」
「ん………分かった。とりあえずリーシアの爺さんを頼るか」
「え?爺さんを?」
「ああ、3人ともこの世界に来たばかりだし、スキルも戦い方も分からないはずだ。だから、まずオルバルト道場で指南を受けつつ森でレベルを上げる。それで大分動けるようになってきたらブラッディベアー先生を狩って3人分の装備をオレが作る」
「え、アリッサさん武器を作れるんですか!?」
「まぁね。だから、まずはこの世界に慣れよう。きっと弱音を吐きたくなるような戦いばかりになるだろうけど、一緒に頑張ろう。オレとリーシアがサポートするから」
こうして新垣勇者パーティーの方針は決まった。オルバルト道場に行く前にリーシアの屋敷へ寄り、お父さんから3人でも装備できる武具を貰い、更にアルバルトがマーカスために装備を用意してくれたので、さっそく彼に付けると心なしか喜んでいるように見えた。
ちなみに新垣のクラスはシールダーという固有クラスだ。自分の身の丈はある大盾を軽々と持ち上げ、右手に長剣を持つスタイル。要はパーティーにおける囮、タンクとしての役割を兼ねており、前衛で攻撃を受けることに彼は『が、頑張ります!』と力強く頷いた。
金剛はファイターのクラスだ。近接を得意とし、拳や短剣を装備して止むことのない嵐の如く敵を攻め立てるパーティーにおけるアタッカー。勇者ほどの補正はないが、普通のファイターに比べて特に攻撃ステータスの上昇が高く、若干召喚者としての力を受けているようだ。
大海はシークのクラスだ。別名盗賊とも言い、短剣やボウガンを装備でき、迷宮における罠や宝箱の解除を得意とし、特に敏捷力の上昇が高い。それに対して大海は『なんで泥棒なの…』と愚痴っていたが、決められたものは仕方がない。この世界に転職システムがあるのか分からないが、オーディアスになかったのだからないんじゃね?とアリッサは思い始めている。
ここにリーシアを加えると何とも前衛が多いこと。それにリーシアはパーティー内でヒーラーとしての役割を担っているためちょっと負担が大きい。いずれこの問題は解決しなければならないだろう。
マーカスは魔法職として戦って貰うつもりだ。彼は賢いらしく、アリッサとリーシアが話す言葉を理解している。そこで後ろから魔法で援護してくれないか?と頼んだところマーカスはこくこくと首を縦に振ってくれた。
ただ、彼には馬車を牽引してもらうので、それを引きながら戦うのは難しいと考えていたところ、リーシアの父であるアルバルトがマーカスの防具を作ると同時に自分で着脱可能な馬車を用意し、これでいつでもマーカスが戦闘に加われるようになった。
そして最後にアリッサはマルチアタッカーとしての役割を受け持つ。普段は後衛から弓で射抜くが、もし前衛が崩れれば剣を持って前に出て前線維持に努める。
明らかにリーシアとアリッサの負担が大きいが、最初は仕方がないだろう。彼らは初心者だ。先輩が身体を張るのは仕方がない。
そう言い聞かせて2人はこの役割に納得した。
「んじゃオルバルト道場に行くか」
どうやって?という顔をリーシア以外がするなか、新垣パーティーは転移した。
目を開ければ懐かしい森の風景。都会から一瞬で田舎に飛んだ一行はオルバルトがある村『テミス村』に着いた。学生3人が驚愕してキョロキョロ周りを見渡していれば、村から子供が走ってくる姿が見えた。
「あー!リーシア姉ちゃんだ!」
「リーシアお姉ちゃんおかえりなさい!」
村に入るなりリーシアの弟と妹が背中にビーストランスを背負いながら走って来て、リーシアはそれを優しく抱き留めた。
「ええ、ただいま。元気にしてた?」
「うん!アリッサお姉ちゃんもおかえりー!」
「アリッサ姉さんだー!」
「おう、ただいま」
2本の槍も2人をちゃんと守っていたそうで、キラキラとまるで新品のように磨かれた矛先がそれを物語っている。
『2人とも27レベルか……相当この森で戦っているな……』
この年齢で王宮兵士と互角のレベル。いや、オルバルトの孫というのもあるのだろう。
「3人ともしばらくこの村で滞在する。ここで動きを覚えながらモンスターと戦い、レベルを一定水準まで上げて行く」
「分かりました。2人もそれでいいね?」
「ああ」
「いいわよ」
「私は爺さんに話を通すために会ってくるわ。今の時間帯なら道場にいると思うから、アリッサ達は家に行ってて」
「おーけー」
この村にも慣れているので勝手知るや一直線でリーシアの弟妹と手を繋いで家を目指し、まるで自分の家のように『ただいま』と言って入る。
「アリッサ姉さん今日はどうしたの?後ろの人はだぁれ?」
「ああ、後ろの3人は勇者なんだ。これからリーシアが説明すると思うから一緒に待っていようね」
「うん!」
妹のクーナちゃんはアリッサによく懐いている。自分はロリコンではないが、小さい女の子から無邪気な笑顔を向けられれば心が洗われるし、何でもしたくなる。だから今もクーナを膝の上に乗せてひたすらに頭を撫でている。
その様子に弟のバングくんは不服のようだ。だが、クーナよりも年頃なのか年上の女性のアリッサに甘えたくとも甘えられないお年頃のようで、ただ不機嫌そうに口をへの字にするだけになっている。
クーナが小さな体で用意してくれたお茶とお茶請けを食べつつ待つこと数分後、リーシアはマスターランサーオルバルトと共に我が家に戻って来た。
あちらが本家ではあるが、彼女の心情を考えると恐らくこっちの家が我が家なのだろう。
「ご無沙汰しております。オルバルト爺さん」
「おお、アリッサ殿。驚きましたぞ、旅に出たと思いきやリーシアが戻ってきましたからな」
朗らかに笑う老人はちらりと学生3人に目を向け、リーシアは無言で爺さんのお茶を用意する。
「大変恐縮なのですが、また爺さんのお力を借りたくて戻ってきました」
「リーシアから話は聞きましたぞ。なんでも勇者の仲間になったとか」
「ええ、詳しくはこちらの手紙を」
それはオルバルトの息子のアルバルトからの手紙だった。娘の力になって欲しい、勇者達の身の上の話など王城で何があったのか事細かく記されていた。
オルバルトは難しい顔をしながら手紙に目を通していた。アリッサ達は手紙の内容を知らない。アルバルトにはただ自分の父親に力添えを頼むとしか聞かされていない。
そんなに深刻そうな顔をしていると逆に不安になってくるんだが。
「なるほど、理解しました。このオルバルト、微力ながら尽くさせて貰いましょう」
「ありがとうございます!」
これにパーティーのリーダーとして新垣は深く頭を下げ、それに続くように金剛と大海も頭を下げる。
正直修行についてあれこれ口出しするつもりはない。昔やっていたオンラインゲームでなにも分からない坂口龍之介は最初の街でギルド勧誘を行っていたプレイヤーに誘われ、その世界のイロハを教えて貰った。
だが、この職業は弱いだのこのスキルとこの装備の組み合わせはいいだのとほぼ龍之介が口を挿む隙間もなく彼の道は決められた。
それが当時の龍之介はたまらなく嫌いだった。だから、そのオンラインゲームも長続きはしなかったし、1週間程度でギルドも脱退した。中には自分はよく分からないし、経験豊富な先輩プレイヤーに決めて貰いたい人もいるだろう。でも、坂口龍之介は他人に自分の道を決められるのが嫌いだったのだ。
だから、自分の考えをこの3人に押し付けたくないし、あくまで自分はわき役に徹すると決めている。
「新垣君、今の目標はとりあえず強くなることでいいんだよね?」
「そうですね。それと早くこの世界に慣れないといけませんね」
「しばらく頑張ってみるか」
そんなやる気のないアリッサの一言によって盾勇者パーティーの修行が始まった。
1週間ほど稽古と森での実戦を経験して分かったことがある。それは大海が意外と戦闘に前向きな姿勢を見せていることだ。
新垣や金剛はもちろんのことだが、正直痛いのは嫌だの戦いたくないのだの言い訳をして修行をサボると一番に思っていた。しかし、今アリッサの前にいる大海は汗だくで息を切らしながらオルバルトに木の短剣を構えている。
この大海に幼馴染の2人も驚いていた。大海はある夜に言った『もう置いて行かれたくないから』と。
ぽつりと語った元いた世界での2人は、アリッサが目を見張るほどのスーパーマンだった。
金剛は小さい頃からボクシングを始めて以来幾度も大会で優勝し、それは高校に上がってからも同じで学校では有名人だった。
新垣は見た目はただのオタクだが、高校生でプロ入りは確実と言われるほどの棋士で、将棋界においては知る人ぞ知る天才っ子だった。
対して大海は水泳の選手だった。両親から英才教育を受け、大会では結果を残しているものの2人に比べればどこか劣る。そう、自分を語った。
全国大会は行くが、順位は下から数えた方が早いくらい。弓の勇者のハチクジは小学生の頃からの腐れ縁。彼女とは同じ水泳で何度も大会で競い合ったそうだ。勝ち越しているが、ほとんど五分五分の勝敗。
だから、圧倒的才能でライバルを蹴散らす力を持っている2人にどこか距離感を覚えていたそうだ。大海は『だから、せめてこの世界では一緒に肩を並べたい』と言った。
それが今彼女を突き動かす原動力になっているのだろう。
スポーツマンだから汚れることを厭わない。泥臭くても這い上がることを知っている。ただ一緒に2人といたいがために。
「終わりかね?」
「はぁ……はぁ……!!ま、まだ……!行けます!」
「その意気だ」
「よろ、しくお願いします…!!」
本気で修行に臨む大海を2人は目を逸らさずその瞳に焼き付けた。2人が何を想ったのかは分からないが、3人は元の世界に戻ってもきっと前のように仲良く出来るだろう。
「バング!クーナ!お前らも見とらんで修業せい!」
「は、はい!」
「はい!」
とっくに稽古の時間は過ぎているにもかかわらず、大海のやる気に熱の入ったオルバルトの言葉に逆らえなかった2人はそのまま学生3人と一緒に武器を振るうのであった。
修行を始めて2週間。3人のレベルも30台に乗り、動きも最初に比べれば大分ましになった。まだまだスキル頼りの戦い方だが、オルバルトも『これなら及第点もあげられましょう』と口にしたため、5人と一頭はブラッディベアー先生に会うため森深くまで行くことになった。
途中のモンスターは全てアリッサとリーシアとマーカスで蹴散らし、学生3人はその様子を声を出さずにただじっと観察していた。
「アリッサさんってボク達と同じ日本人なのに動きが熟練者のそれですよね」
「え?」
戦闘終了後モンスターの素材を剥ぎ取っていると、新垣がそう声をかけてきた。それには金剛も大海も同じだったようで、真実を言おうか言うまいかアリッサは悩む。
「あーうん……言ってなかったか。実はオレってここの森で召喚されたんだよ」
出した答えは半分嘘でもう半分真実を語るというものだった。自分がテスターでこの世界を知っていることを隠し、あくまで1人で戦った期間が長かったから否応にも身に着いた、と誤魔化す。
「え、アリッサさん1人で戦っていたの!?それやばすぎでしょ」
「この世界で1人か……考えたくないな……」
「うわぁ……」
モンスターとの戦闘を経験したからこそ分かる戦いの辛さを知る3人は、この森を単独でサバイバルしていたなど聞いて絶句する。
「そうなのよ。アリッサったら村に来た時は返り血だらけで防具はボロボロでそれはもう酷かったわ」
「あの時はマジで助かったよ」
アリッサはまだ次元宝物庫を隠している。これを使えば3人の旅は簡単になるだろう。だが、それは同時に3人の成長を阻害するものともなり、アリッサに依存しなければろくに戦えなくなってしまうと恐れた。
この考えにリーシアも同意しており、極力危ない場面に陥らない限りは後衛で学生3人のサポートを務めることに決めた。
ここ2週間で学生3人との距離も大分縮まった。
新垣はアリッサを信頼できる先輩として尊敬し、金剛は自分を強くしてくれる師匠と仰ぎ、大海は気軽に相談に乗ってくれる女友達と態度が大きく軟化した。
リーシアとも仲良くなれて、同世代の友達が増えたと嬉しそうに自分に言っていたことを思い出す。
「この森で1人サバイバルはやだなぁ……流石の武人も無理じゃない?」
「ああ、見栄を張りたいところだが、流石に無理だ。モンスターの返り血を浴びれば視界は悪くなるし、武器の切れ味も落ちる。なんならモンスターの血を飲んでしまって病気になどなってしまったら終わりだからな……」
「あたし、魔法使いになりたかった……」
大海が恨めしそうに食材やポーションを積んだ馬車を引くマーカスを見るが、当の本人は『そんな無茶を言うなってお嬢さん』って顔でそっぽを向く。
「シークも魔法使えるんだけどな?」
「ほんと!?」
「まぁ攻撃魔法はほとんどない。大体ブラインドやポイズンと言った妨害、状態異常系ばかりだ」
「はぁ……」
「アリッサさん、ボクは?」
「シールダーは分からない。固有クラスだから未知数過ぎるわ」
「ですよね……」
「アリッサ先輩、俺は?」
「ファイターもシークと同じで攻撃魔法はほとんどない。大体自分の身体強化系か味方の攻撃バフってところだ」
「なるほど。まぁ俺は気にしませんけどね。この肉体があれば十分です」
「私は使えるわよ。聖魔法や治癒系。僧侶に近い槍職と言ったところかしら」
「だな。ホーリーランサーは回復と槍を極めた時になれる上級クラスだから、必然と2つのクラスの美味しいどころ取りになる」
「リーシアさんいいなぁ……」
「ふふん、オオミも早く上級クラスになって魔法が使えるシークになりなさい」
「え!?魔法が使えるシークってあるんですか!?」
「ああ、あるよ。ロビンフッドっていう最上級クラスがある。使える攻撃魔法は爆発や火炎と言った炎系統よりだが、あくまでこれはオマケで真の強さは敵全体に振りまくデバフの多さにある。攻撃力ダウンや防御力ダウンやら毒、麻痺などそのクラスだけで他クラスのデバフを補えるほどの多さ。パーティーに1人は欲しい存在だよね」
「さ、最上級クラス……まだまだ先は長そう」
「アリッサ、ロビンフッドなんてビースト族の英雄ガレフしか到達していないクラスよ?彼女にそれを言うのは酷だわ」
「ガレフねえ……――――まぁ別にロビンフッドなんてそこまで難しくはないよ。シークを60まで上げてハイシークを解放して80レベル以上で盗賊王ロビンフッドの手記を読めばなれるしな」
「ええ……身もふたもない……」
ゲーム知識を持っているアリッサが耳打ちしてくるリーシアに小声でそう返すと顔を引きつらせながら、彼女の中の世界の常識が崩れて行く音がしてくる。
「リアル重視のこの世界でそれがどうなるかは分からないけどね。恐らく手記に記された道を辿るとかそんなくっそ面倒なイベントをこなさないといけない気がしてくるけど」
「ちなみに私が目指しているマスターホーリーランサーは?」
「ホーリーランサーを80まで上げてアスガルドに勝つ」
「はっ!?そんなの無理よ!無理無理!神獣に勝つとか無理ー!」
「手伝ってやるから。そんな拒否反応示すなって」
「アリッサが手伝ってくれるならいいわ……どうも爺さんの昔話を聞いていると苦手意識があって……」
「アスガルドつええしな」
前衛で仲良く魔法に憧れを持っていた3名と巻き込まれた一頭を交えて魔法談義をしているなか、リーシアは先を思い描いてアリッサに聞くべきではなかったと後悔するのであった。
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