第11話

眼鏡を掛けたおとなしそうな少女ときつい顔立ちの美少女の母親の秘書はお互いに玉のような汗を掻きながら肩で息をして警察に連絡を入れた。





「なんなのよぉ…何処なのここはぁ…お願い…誰か助けて…」


突然通話が切れてその場にへたり込む様に腰を落としたきつい顔立ちの美少女は涙を流しながら震える手で何度も電話を掛けた。

先程まで普通に通話が出来たが全く通話やメッセージが送れなくなっていた。

力なく項垂れながら片手を石畳について座り込んでいたが徐々にゆっくりと濃い霧がきつい顔立ちの美少女に迫っていたのに気づいてはいなかった。


「きゃっ!!。な、何なのよっ!。いっ、いったいっ!!」


力なく項垂れて座り込んでいたきつい顔立ちの美少女の後ろ側の石畳についていた手がまるで突然机を退かされて無くなった様に置いていた石畳が急に無くなり手が落ちた。

驚きながら反射的に体を起こし落ちかけた体の態勢を直すと周囲を見渡した。

じっくりと見てみると周囲の濃い霧が徐々に迫っている事に気付いた。


「う、嘘…石畳が無くなっている……。」


きつい顔立ちの美少女は恐る恐る濃い霧の中に手を入れてみると何事も無かったが先ほど手を置いていた石畳の辺りまで濃い霧が迫って来ていた。

石畳を探る様に手を濃い霧の中に伸ばすと石畳がすっぽりと無くなってまるでドライアイスの箱の中に手を入れている様な感覚に包まれた。

きつい顔立ちの美少女は顔面蒼白になり四つん這いになりながら急いで黒と白の鳥居辺りに向かった。

きつい顔立ちの美少女は振り返ると見る見るうちに濃い霧は速度を上げてきつい顔立ちの美少女に迫って行った。

きつい顔立ちの美少女は小さな悲鳴を上げて飛び込む様に黒と白の鳥居を潜り振り向くと濃い霧まるでガラスの板で防がれている様に鳥居の外に充満して瞬く間に先ほど自分が居た場所が全く見えないほど立ち込められた。

きつい顔立ちの美少女は涙目になりながら力なく立ち上がり黒と白の鳥居が無数

に立ち並ぶ石畳をトボトボと歩き出した。






日が沈み辺りが暗くなった頃、きつい顔立ちの美少女の自宅に二台のパトカーが非常灯を回して暗くなった周辺を照らしながら止まっていた。


「はぁ…はぁ…はぁ…こ、これ、本当に木のドアですか?。壁に埋め込まれた鉄のドアじゃなく…。」


「は、はい…。この子が先ほど迄、この寝室で先生の娘さんと居たみたいです。」


「………。」


大柄で短髪の40代の巡査長が膝に手を乗せて肩で息をしながらきつい顔立ちの美少女の母親の秘書に確認すると秘書は苦笑いを浮かべながら申し訳なさそうに答えた。20代の警察官が巡査長の代わりに汗を滲ませ気合を入れながらドアと悪戦苦闘していた。

少し離れた場所で眼鏡を掛けたおとなしそうな少女は顔色を悪くしながら俯き立ち竦んでいた。

大柄で短髪の40代の巡査長が息を整えて思案していると寝室のベランダに回っていた二人の警察官が巡査長の元に帰って来た。


「巡査長。ベランダに回って調べて来ましたけど…そ、それが…。」


「ん?…どうした?」


「ま…窓もこちらのドアと同じ様にビクともしませんでした…それと…中の様子何ですが……」


「中に誰かいたのか?」


「それが…部屋の中に真っ黒で濃い霧?の様な…煙の様な状態?で全く見えませんでした…。」


「…なんだそりゃ…?。全くわからんぞそれじゃ…」


「そうなんですけど…ライトで照らしてみても全く光を通さない状態で…何がどうなっているか…一度行きます?」


「そう…だな…このドアもビクともしないしな…交代して確認するか…。」


大柄で短髪の40代の巡査長と20代の警察官は寝室の隣の部屋の窓から寝室のベランダに移り大きな窓越しに寝室の中を見ようと目を向けた。


「な、なんだ…これは…」


「じゅ、巡査長…な、何なんですか…これ…」


「俺に聞くな…真っ黒な煙か?煙だったらドアの隙間から漏れないとおかしいし…どうなってるんだ?…これ?」


「ライトを当てても全く見えませんよ…ホントに煙なんですか?」


大柄で短髪の40代の巡査長と20代の警察官は窓にへばり付く様に顔を近づけ目を凝らして必死に中を見ようとしたがまるで真っ黒な板で防がれている様に真っ黒で何も見えなかった。

ライトを当てると窓から数センチ内側の所で煙や霧の様な真っ黒い粒子が渦舞いている様に動いているのが微かに見えた。

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