第7話

角刈りの体格の良い30代男性と金髪の10代男性は駅の向かい側の少し人目に付きにくい場所で駅内のコインロッカーに行っている色白で細身の20代男性を待っていた。


「行ってきましたよ。」


「ご苦労さん。」


「お疲れっす。」


「指定したロッカーにカメラを置いてきたか?」


「あ、はい確かに確認しました××(コインロッカーの数字)のロッカーにカメラを入れました。合ってますよね?」


「ああ、間違いねぇ……よし!。これで終了だ。」


色白で細身の20代男性はオドオドしながら角刈りの体格の良い30代男性と金髪の10代男性の傍に戻ってくると地面にしゃがみ込んでいた角刈りの体格の良い30代男性は立ち上がり吸っていたタバコを落とし踏みつけて火を消した。


「ほ、ホントに大丈夫なんでしょうか?」


「大丈夫っすよ!。ねぇ。」


「ああ…俺達が誰かに喋らなきゃぁな…。」


「で、でも…脅迫してきた奴とか…。」


「まぁ、心配すんのも分かるがあっちが俺等の援交動画をばらしたらあっちも捕まっちまうからな…今回の事でだ…だからお互い静かに口を割らずに過ごしてりゃぁ今まで通りに平和に暮らせる。」


「でも…どんな奴っすかね~。若い女っぽかった気がするっすけど…。」


「それも踏まえて静かに暮らした方が身のためだぞ。俺達もこれっきりでもう会う事もないからな…。詮索は無しだ。」


「……そうですね…。分かりました。」


「了解っす!。でももう一回ぐらい犯(ヤ)っときたかったすね…正直な所、あんな可愛い子、絶対出来ないっすよ!」


「はぁ…やっぱ若ぇな~。結構、犯(ヤ)っただろ?」


「わ、私はもうこりごりです。」


「「お前が一番ガッツいてた癖によく言うな!」」


角刈りの体格の良い30代男性と金髪の10代男性は声を揃えて色白で細身の20代男性に言った。


「あの眼鏡を掛けたおとなしい娘でも全然良いっすね!。あの娘も結構レベル高かったっすから♪」


「おい…。あの子がもし街中で見かけてももう二度と声掛けるんじゃぁなぇぞ!。」


「分かってるっすよ!。冗談っす!。俺も長生きしたいっすから。遊ぶんだったら風俗行くっすよ♪」


「分かりました。」


「だったら良いが…それじゃぁこれで解散だ…。もう会う事もねぇ。まぁ…元気でな。」


「うっす!。さよならっす!」


「お元気で…。」


角刈りの体格の良い30代男性と金髪の10代男性と色白で細身の20代男性の三人はお互いに全く逆方向に歩き出して分かれて行った。

しばらくして角刈りの体格の良い30代男性は歩きながらスマホを取り出し電話を掛けた。


「………私です…今、終わりました。えぇ…今、二人と別れた所です。…はい…ちゃんと指定のロッカーに入れました。2,3日保管してますのでその間に誰かに取りに来させてください。………えぇ…あの二人にもしばらく監視の者を付けさせておきますよ…住所や会社も調べておきましたので…まぁ…大丈夫だと思いますが…こっちとしては先生の娘さんの方が心配ですよ。」


角刈りの体格の良い30代男性はスマホで会話をしながら少し歩いた後、路上に止めている一台の高級な黒い車の前に着くと直ぐ運転席に乗っていた若い男性が降りて後部座席のドアを開けた。

角刈りの体格の良い30代男性は悠々と乗り込んだ。


「とりあえず全部終わりましたので…はい…では…例の件もよろしくお願いしますよ。」


角刈りの体格の良い30代男性はスマホでの会話を終えて運転手に事務所に行くように言うと高級な黒い車はゆっくりと走り出した。

角刈りの体格の良い30代男性は徐に座っている後部座席に体を預け目を瞑りながら天を仰いだ。


「…はぁ…親子共々、面倒を見るのは疲れるぜ…。」


「お疲れ様です。」


「おぅ!。有難うよ!。まぁ面倒だったが元はキッチリ取らせてもらうからまぁ良いけどよ…女ってなぁホント怖ぇな…やる時は男よりえげつない…。」


「そうですか?。」


「うん?。あぁ…俺達も平気でソープとかに沈めるが個人だけだ…けど今回は先に娘がやっている事が分かってから先生が対処した形だが…敵陣営の支えている会社の一つを潰しながら娘の問題も一緒に始末しちまってる…どっから情報を仕入れたのか…まったく…怖ぇ怖ぇ…。気を付けねぇと明日は我が身だからな…」


「はい…。」


角刈りの体格の良い30代男性は溜息交じりで言い流れる景色を徐に見ながら高級な黒い車は繁華街を通り過ぎて行った。





祖母はボロボロになって全裸で倒れている少女を見て言葉にならない絶叫が無人の部屋に響き渡った。

祖母は自分の視界が徐々に狭くなり意識が薄れゆく中、膝から崩れ落ちていく様に座り込むと手に持っていたライトが辺りをぐるりと回る様に光を当てながら床に落ちた。

祖母が落としたライトの灯りが少女の顔を一瞬、眩しく照らすと虚ろな意識の中、全裸で倒れている少女は一瞬顔に照らされたライトの光に反応して徐に目を向けた。

祖母が悲痛な表情で口を大きく開けながら胸を押さえて膝から崩れ落ちて行くように倒れる姿がとてもゆっくりと静かに少女の目に飛び込んでくると少女の意識が急速に鮮明に戻って行った。

意識が鮮明になった少女はボロボロになった全裸の体を跳ね上げる様に起こし飛び込む様に縛られた両手を崩れ落ちていく祖母の体を拾う様に伸ばしたが祖母の体が一瞬早く崩れ落ち床に突っ伏して倒れた。

少女は体中に擦り傷を付けながら這いずり倒れた祖母になんとか近づくと少女は力を振り絞り起き上がり縛られた両手で倒れ突っ伏した祖母を揺すりながら悲鳴を上げ過ぎて声が出ないながらも何度も祖母を呼んた。

少女は泣きじゃくりながら祖母を起こそうと縛られた両手を動かすと祖母は力なく倒れた。

少女は倒れた祖母の横顔が目に入ってきた。

目を見開き驚愕の表情で固まったままの祖母の顔を見て既に死んでいる事に少女は気付いた。


「ぁ?ぁ?ぁ?ぁ?ぁ?ぁ?~~!!。っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!」


少女は死んだ祖母に縛られた両手を置き天を仰ぎながら言葉にならない絶叫を上げた。

少女の喉が切れ口から血を流しながらも絶叫し続けた。

絶叫しながら少女は心の中で既に亡くなっている父、母に何度も謝罪の言葉を叫び続けた。

自分のせいで祖母が死んだ事に少女は何度も謝罪した。


『ごめんなさいっ!お父さん!。ごめんなさいっ!お母さん!。私のせいでおばあちゃんが!!…私のせいで!!…私のせいで!!…私のせいで………。』


少女が何度も心の中で謝罪している時、突然『シャン』と何処か遠くから【神楽鈴】を一振り短く鳴った音が微かに少女の耳に入ってきた。

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