第3話
「………あんたは良いよね…あの人とは関係ないしさ…成績だって学園で3位で…推薦だってもう医学部受かってるしさ…もう将来なんて余裕じゃん…。」
「………。」
きつい顔立ちの美少女は目に涙を溜めながら長身で凛とした少女を睨みつけた。
長身で凛とした少女は無言のままきつい顔立ちの美少女の目を真っすぐ見つめた。
「クラスの皆もあんたがこの町の政治家の娘だから言う事を聞いてあの子を無視してるけどもうそろそろやめた方が良って思ってるわよ…来年で卒業だし…男子だってもういい加減にしないと…」
「うるさいっ!うるさいっ!うるさいぃぃ!。分かった風な口を聞かないで!何にも分かってないくせに!……行くわよっ!」
「っ!……。」
「…………はぁ…ほんと…どうしたのよ…。」
きつい顔立ちの美少女は長身で凛とした少女の言葉を遮る様に叫び眼鏡を掛けたおとなしい少女の腕を強引に引っ張って足早に屋上から降りて行った。
長身で凛とした少女は暫く立ち去った後を眺めて腰に手を置き大きくため息を付いて項垂れた。
放課後になり少女は近所のスーパーに寄って買い物を済ませ足早に家路に着くと真っ先に両親の遺影に手を合わせた。
何時もの様に少し早い目の夕飯を祖母と一緒に作り終えると祖父が散歩から帰って来た。
「……魚もええんじゃが、たまには肉も食いたいの~。」
「ぷっ。あははははっ♪。ごめんね~お爺ちゃん…。明日はお肉にするから今日は我慢してね。」
テーブルに並べられた食事を見て申し訳なさそうな顔をしながら祖父がさみしそうに言うと少女は祖母と見合って祖母が今朝言った予想が当たり少女は思わず笑いだした。
祖父は全く分からずに首を傾げていると少女は申し訳なさそうに謝った。
「いつも夕食の買い物ありがとうね~。もっと学校の友達と遊んできても良いさね~。」
祖母が少女に申し訳なさそうに笑顔で言うと少女は少し寂しそうな笑顔を祖母に向けた。
調度品が数多く並び走っても音が鳴らないほど柔らかい焦げ茶色の絨毯が引いてある大広間できつい顔立ちの美少女は亀の様に絨毯の上で体を縮こまらせていた。
少しタイト目の高価なブランドスーツを着た壮年の女性が激怒しながら絨毯の上で体を縮こまらせているきつい顔立ちの美少女の背中を鈍い音を立てながら力強く何度も踏みつけていた。
「あんたって子はっ!。どうして私の足を引っ張るのっ!!。やっとの事であの大病院の婦人と親密な友人になってご長男とお前との婚約迄、やっと…やっと此処迄来たのにっ!」
「ぇぐっ!。…ご、ごめっ…っぐ!…なさい…。がっ!。っぐぅ…お、お母ん…。ぉぐっ!」
ぐぐもった声をだして何とか謝罪の言葉を絞り出して蹲っているきつい顔立ちの美少女の脇腹を肩で息を切らしながら壮年の女性が足の裏でねじり込む様に踏みつけた。
「はぁっ…はぁ…はぁっ……さっき婦人から私の携帯に連絡があったわ…お前との婚約の約束は少し考えさせてほしいって…理由は教えてくれなかったけど少し調べたらお前が学校でやった事が原因みたいね…。」
「……っ!。で、でも…!。あれはっ、ぐぇ!…。」
「っ!…。だ・か・ら・!あの子をこの町から追い出すんだったらもっと上手くやれって言ってるんだよっ!。……何の為にバカ高い授業料を払ってこの町一番の学校に入れたと思っているの!。特待生のあの子…あの子みたいに頭が良い訳でもないお前に今までどれだけコストが掛かってると思っているよ…まったく!。良い?!…あのご長男と上手くやって結婚しなさい…子供でも何でもさっさと作って強引に。お前は外見だけは良いんだから…でないとお前には価値は無いし要らないから…。私はこれから講演会だの会議だのスケジュールが詰まっているんだから…いちいち面倒を掛けないで…分かった?。」
「…がっ!………は、はい……。」
壮年の女性は屈んで亀の様に蹲っているきつい顔立ちの美少女の髪の毛を掴み強引に引き上げ顔を上げさせるときつい顔立ちの美少女は涙を溢れさせた表情で返事をした。
投げ捨てる様に髪の毛を掴んでいた手を放して足早に大広間から壮年の女性は立ち去って行った。
しばらく嗚咽の混じった啜り泣く声だけが豪華な大広間に響き渡っていた。
きつい顔立ちの美少女は震える手で自分のスマホを手にして眼鏡を掛けたおとなしい少女に電話を掛けた。
「………今すぐ来なさい…。」
少女が住んでいる家から少し離れた場所にある駅近くには2階建てのゲームセンターが古くから営業をしていた。
平日の正午を少し過ぎた時間帯は古くからある数十台のゲーム台が人が殆ど居ない広い店内を人の静けさをかき消す様に映像と大音量だけが店内に流れていた。
店内の隅にある麻雀ゲームの一台に夜勤明けの中年男性一人がほろ酔い気分でダラダラとゲームを楽しんでいた。
「は~♪。夜勤明けでストレスが爆上げ状態を癒すにはこれが一番だな♪。明日も休みだし♪。癒されるわ~♪。」
酔った勢いもあり誰も居ない店内で独り言を呟いてノスタルジックに浸りながらゲームセンターの開店から今までダラダラと過していた。
コンビニにアルコールを買いに行っては飲みながらゲームセンターに戻り気ままにゲームを楽しんではまたアルコールをコンビニに買いに行ったりと足元が怪しくなるまで続いた。
その中年男性が満足してそろそろゲームセンターを出ようと出入口付近に行くと突然横から声をかけられた。
中年男性は声がした方向を向くとそこには眼鏡を掛けたおとなしそうな私服の少女が立っていた。
「………。」
「………えっ~と…何でしょうか?」
中年男性に声をかけた眼鏡を掛けたおとなしそうな少女はしばらく黙ったまま俯いていた。
声をかけられた中年男性は目の前に居る眼鏡を掛けたおとなしそうな少女の顔を見て酔いが回った頭を鈍く働かせて記憶を巡らせたが全くの初対面だと分かった。
中年男性はそのまま無視してゲームセンターを出ようと思ったが眼鏡を掛けたおとなしそうな少女をよく見てみると悲壮感を表して手が少し震えていた。
「え~っと、何か困った事でしたら店員さんに…。」
「あっ!。あの!…わ、私と…わ、私と…」
「………。」
「え、え…援助交際して下さい…。」
「………は?……。」
中年男性は眼鏡を掛けたおとなしそうな少女が何を言っているのか全く分からずに口を丸くポカンと開け片眉を限界まで吊り上げながら時間が止まったかのように眼鏡を掛けたおとなしそうな少女に目を向けていた。
「いっ…!い、一万円…ご、五千円で、でっでも良いのでっ!!。お、お願いします!」
「え…っと…うぇっ…!えぇっえ!!」
眼鏡を掛けたおとなしそうな少女が勢いよく頭を下げたと同時に反射的に中年男性は後退りしながら奇声を上げた。
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