第2話

少女が教室のドアを開けて入って行くと教室には約半数の生徒がそれぞれ会話をしたり予習をしたりしていた。


教室に居てる生徒達は和気藹々と笑顔を見せながら会話をしているが教室に入ってきた少女には目を配る事も挨拶をする事も無くまるで教室に誰も入って来なかったかの様に少女の存在が掻き消されていた。


少女が自分の机に着くと何時もの様に机には嫌悪と憎悪が溢れ出しているかの様にドス黒い文字で机が真っ黒になる程、罵詈雑言が書かれていた。


少女は何時もの事だと平静を保っているが僅かに顔を強張らせた。


少女は一度、教室から出ると鞄から雑巾を取りだし少し濡らして教室に戻り机の落書きを落とす様に拭きだした。


教室の一番後ろで楽しそうに会話をしている3人の少女の内、きつい顔立ちの美少女が目の端で机の落書きを消している姿をみて一瞬、憎悪が混じった表情を浮かべた。


憎悪が混じった表情を浮かべたきつい顔立ちの美少女は3人での会話を止めてあきらかに面白くなさそうな雰囲気を漂わせながら少女に近づこうとした時、教室のドアが開き長身の青年が少し屈みながら入ってきた。


眉目秀麗と言う言葉はこの青年の姿から表されていると思わす程、端整な顔立ちに清潔感と清涼なイメージの短髪に揃えられた髪に細身でありながら鋼の様な筋肉の迫力が制服越しでもハッキリと分かる程の周囲にその存在感を出していた。


その青年が入ってきたドアの近くにいた数名の男子生徒と女子生徒は自然にその青年の行く道を譲る様にすぐさま退いた。


男子生徒からはどよめきと女子生徒からは黄色い囁きが教室を埋めていた。


そんな周囲の様子を気にすることなく教室に入ってきた青年は手に持っていた書類

に目を配りながら雑巾で自分の机を拭いている少女に向かって歩いていた。



「朝早くからすまない…○〇(少女の名前)ならもう学校に来てると思ってな…昨日纏めてもらった生徒会の会計の事で…って…何をしている?」


「えっ!。いや…その~…あはははは…。」


教室に入ってきた青年は机に覆い被さって苦笑いしている少女を訝し気な表情を浮かべながら言った。


「……。○〇(少女の名前)、ちょっと机を見せてくれないか?」


「え~っと…生徒会長。後で生徒会室で聞くと言う事で良いですか?」


「会計の事はそれで良いが今は○〇(少女の名前)の机の方が気になるからちょっと机から身を起こしてくれないか?」


「う~…。今は学校に来たばかりだから少し休んでいるので…動くのはチョット…。」


「はぁ~…。まぁ…大体の事情は分かった……。」


机に覆い被さって動こうとしない少女を書類を持っている片手を腰にあてもう片方の手で自分の目頭を押さえながら青年は溜息交じりに言うと教室を見渡した。


青年はきつい顔立ちの美少女を見つけた。


青年と目が合ったきつい顔立ちの美少女は少し体を強張らせた。


「△△(きつい顔立ちの美少女の名前) 。○〇(少女の名前) の机を綺麗にしておいてくれないか?」


「えっ!。な、何で私が…。」


「△△(きつい顔立ちの美少女の名前)はこのクラスの学級委員だろう?。嫌なら私がこのまま机を持って行って生徒会室で綺麗にするが?。もちろんその間、

○〇(少女の名前)は机が無く授業がまともに受ける事が出来ないから先生に理由を言って生徒会室で私と一緒に自習する様に伝えておくが…。」


「……っ!!。わっ!分かったわよっ!やれば良いんでしょっ!やればっ!」


「……ゆっくりで良いからな。○〇(少女の名前) には伝えていなかったが午前中の授業は生徒会の都合で抜けるからどのみち○〇(少女の名前) は生徒会室に来ないといけない。何もなければこのまま一緒に行きたいのだが…。」


「え…っと……。はい…大丈夫です…。」


きつい顔立ちの美少女は青年に言われて納得のいかない表情を浮かべたまま雑巾を取り少し荒く机を拭きだした。


青年と少女が生徒会室に向かう為、教室を出るときつい顔立ちの美少女は雑巾を強く握りしめて怒りを露にしながら二、三度机を叩いた。


生徒会室に着いた生徒会長と呼ばれた青年と少女は青年が持っていた書類に目を通しながら二、三の質問と確認を終えて何時も座っている青年は生徒会長の席、少女は会計が座っている席に着て休んでいた。


「△△ (きつい顔立ちの美少女の名前) が学級委員をやらせてから ○〇 (少女の名前) の嫌がらせが多少なりとも自分に返ってくると分かって大分無くなったと思ったが…難しいな……○〇 (少女の名前) を守ってやれない自分が情けない…本当にすまい…。」


「そっ!、そんなっ!。やめてください!頭を下げるのは!わ、私なら大丈夫ですから!」


椅子に座っていた青年は徐に立ち上がり深々と少女に対して頭を下げると少女は慌てて立ち上がり青年に頭を上げる様に言った。


「そうはいかない…元々原因は私にあるのだからな…再度、きっぱりと△△ (きつい顔立ちの美少女の名前)に私の気持ちを伝えて○〇 (少女の名前) の嫌がらせを強制的にやめさせようと考えたのだが…更に状況が悪化する可能性もあるからな…正直、△△ (きつい顔立ちの美少女の名前)が此処迄、愚か者だと思わなかった。それに今回の件で更に私の気持ちが冷めてしまっているからな。」


「えっと…。でも△△ (きつい顔立ちの美少女の名前)さんは生徒会長のフィアンセ…ですよね。」


「はっ。親同士が勝手に決めた事だし言触らしているのは△△ (きつい顔立ちの美少女の名前)側だからな…。それも踏まえて私が従う筈は無いよ…ちゃんと親には

言ってある。私の意志を無視するのなら病院は継がないと…私の意志を無視して私が家を出るのも私的には良いし私の意志を尊重するなら△△ (きつい顔立ちの美少女の名前)と家族にならずにすむ…どちらにしても私は君の返事をずっと待てるから親同士が勝手に決めた事は私的にはあまり重要な事ではないよ…それよりも…こんな場違いなタイミングで聞くのも私の我儘からだと十分に分かっている…けどすまない…

私との交際を真剣に考えてほしい…返事は何時でも良いから…。」


「………。」


生徒会長と呼ばれた青年は純粋に少女を優しい眼差しで見つめて言うと少女は顔を真っ赤にして黙ったまま俯いていた。


「よしっ!。この話はここまでにして自習をしようか…先生に提案した手前やっておいた方が良いからな…けどこの学園の創立始まって以来の最高の成績を維持している君には関係が無いけどな。そのおかげで私はずっと2位だから私の方が君に教えて貰う為に自習にしてもらったと言うのが本音だ。言い方は悪いがこの学園の最大の出資者である親の権限をフル活用させてもらった。」


「えぇ~…そ、そんな事をして良いんですか…。」


気分を変える為に少し気の張った声をだして言った青年は屈託ない笑みを少女に向けると少女はオロオロしながら少し顔を赤らめ少し上目遣いで青年に優しい声をかけた。


その様子を生徒会室のドアの僅かな隙間からきつい顔立ちの美少女の取り巻きの一人である眼鏡を掛けたおとなしい少女が聞き耳を立てつつ覗いていた。


暫くして眼鏡を掛けたおとなしい少女は静かにその場を後にした。


学園の屋上から壁を蹴る鈍い音を何度もならしながらきつい顔立ちの美少女が罵声を上げていた。


憎々し気に屋上の壁を蹴る音と共に眼鏡を掛けたおとなしい少女は体を何度も強張らせながら小さい悲鳴を上げていた。


「あのクソ女ぁっ!!マジムカつくっ!!ホント死ねよっ!!マジムカつくっ!マ・ジ・で・ムカつく!!」


「…っ!。ひぅっ…っ!。」


「………もうその辺にしておいた方が良いんじゃない?。」


「あぁっ!。なんであんたにそんな事言われないといけないのっ!。」


「………。」


肩で息を切らしながらきつい顔立ちの美少女は髪を乱し眉間に皺を寄せて少女に対して暴言を何度も吐いた。


何時も一緒に居てる眼鏡を掛けたおとなしい少女が体をビクビクと強張らせているその隣で長身で腰まである黒髪を1つに束ねている凛とした少女が腕を組みながら立っていた。


凛とした少女はきつい顔立ちの美少女を真っすぐ見つめていた。


きつい顔立ちの美少女は凛とした少女に苛立ちをぶつける様に言葉を吐いた。


「はぁ…幼馴染だからよ…。ほんとどうしたの?高校に入ってから…別人の様に変わったわよあんた。小学校や中学の時はこんな嫌がらせ一番嫌ってたじゃない。」

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