第19話『進展』

球技大会の次の日。

学校に行き、自分の席に座る。

少ししたらあいりが登校してきた。俺は昨日のことが頭によぎって顔が赤くなる。あいりは俺の所まで来て⋯⋯来て!?


「⋯⋯おはよ」


それだけ言って自分の席に帰ってった。

たった一言、朝の挨拶されただけだけどクラス中で驚きの声が上がった。


「おい、今相葉に挨拶してなかったか」


「どうしたんだ?」


「え、水瀬さんいきなりどうした?」


そりゃそうだよね。今までパシリやなんやっていじめられていたのに今日になってみたらいきなり挨拶をするって。


「あいり〜どうしたん?」


「あのキモオタに挨拶してなかったなぁ?」


あいりも友達に聞かれてるな。

今までのあいりを見てたら不思議に思うよな。


「別に、勝負の結果だし」


「勝負?」


「なんの?」


「うっさいこっちの事だから」


勝負?一体なんのことだ?昨日の負けちゃったってことと繋がるのかな?

それで負けたから俺に挨拶ってこと?


「れー君」


「うわっ!」


俺が悩んでいると東流院が近くに来ていた。


「おはようございます」


「おはよう」


東流院さんは顔をニコニコさせていて何を考えているのかわからない。


「勝負⋯⋯知りたいですか?」


!?


「あれ、私と勝負したんです」


「教えてくれるの?」


「ええ、大丈夫、知りたいなら教えるけど?」


「⋯⋯いいや」


「あら?気にならないの?」


「気になるけど、知っても何も変わらないよ」


「まぁいいです、これでやっと⋯⋯」


「ん?」


「なんでもないわ、またね」


それだけ言って東流院は自分の席に戻っていった。

ほんとによく分からないや。



お昼になり俺は購買に向かう。

今日はパシリとかされることはなくのんびり行ける。

俺は購買でメロンパンとベーコンエッグパンを買って屋上に向かう。

屋上に出ていつも通りご飯を食べていると屋上の扉が開く。

そこから出てきたのは⋯⋯なんとあいりだった。

あいりはそのまま近くまで来て横に座る。

手元からパンを出して食べ始めた。昨日のことを思い出してまた顔が熱くなる。それを頭を左右に振り正常に戻す。

なにか話そうと思ったけど食べてるからと思って何もせずそのまま俺も自分の分を食べ始める。


それからあいりも俺も食べ終わった頃。


「ねぇ、蓮君」


「なに?」


「私ね、これからは蓮君と仲良くしていきたいな、こっちでも」


「それは、俺も嬉しいけど、いいの?」


「うん、勝負したの東流院さんと」


「うん」


「でもね負けちゃった、テニスの試合どっちが勝ち進むかって勝負でね、私は準決勝敗退、東流院さんは優勝、それでね負けたら蓮君へのいじめを辞めるって約束したの⋯⋯ちょうど良かったのかなこれで辞める理由がはっきりできたし、これからは蓮君とこっちでも仲良くできればなって思ったの」


「あいり、ありがとう」


「うん、流石にまだ挨拶が限界だけど、私、頑張るからね」


あいりはいつもの睨んだ目付きではなく目元が緩んだ笑顔でそう言った。

俺も明日は挨拶を返そう。そう決めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る