第17話『球技大会2日目』

今日は俺が参加するサッカーの日だ。

残りのは決勝や昨日の残り試合とかだ。


俺達の最初の相手は1年生だ。チームメンバーはサッカー部が3人活発そうな男子が6人、俺と似た運動が苦手そうな男子が3人いる。

俺は普通にスタメンとして出されたのでまぁ頑張るしかない。


試合が開始して最初は特に問題ない。サッカー部と元気ある男子がどんどん押していくのでボールは相手側だ。

ちなみに俺のポジションはディフェンスだ。

そのまま味方が1点取ってきたので相手チームになる。

1年生ということもありまだまだ余裕がありこっちにはボールが来ない。前の方でブロックしてそのまま味方がボールをカットしてまた前線に持っていく。はっきり言って暇だ。


1試合目は勝てた。


次の2試合目は俺はベンチで休憩だ。ここを離れる訳には行かないのであいりを見に行けないのが残念だ。昨日は最後まで残っていたから、今日もまだやってるはずだ。


2試合目も勝てたみたいだ。

次の相手は3年生らしい。しかもサッカー部が5人いるらしい。その中の一人は部長だとか。

あーこれは負けたかな。


3戦目の試合は結構いい勝負をしている。

試合前はダメだな。負けると思っていたけどこっちの元気ありあり男子達が頑張ってくれている。

俺もこっちまで転がってきたボールを前線にしっかり蹴り返してるのでようやく参加できてる気がしてきた。


点数は2対1。こっちが1なので負けている。

いまは向こうがボールを持っていてそのまま攻めてきている。

そうそう、さっきふと観客席の方を見たらあいりが見ていた。顔がまだ赤くタオルを首にかけて、今終わったばっかりなんだろう。


まぁその油断がダメだったんだよね。


「相葉!」


「え!?」


強く名前を呼ばれ意識を前に向ければボールが目の前に迫ってきてた。

俺はそれを顔面で受けて頭を強打して意識を失った。



◇◇◇



はぁはぁ⋯⋯


私はいま準決勝の舞台にいる。

昨日から勝ち続けてなんとかここまできた。

私は一応テニス経験者だ。まぁ部活とかでやってた訳じゃなくほんとに遊びで少しだけ、だから人よりは出来た。おかげで東流院さんに勝負を挑めたし、まだ負けが決まった訳では無い。


昨日東流院さんからテニス経験があると言われ納得した。だってプレイを見ていて普通に上手いんだもん。多分部活とかでやってたと思う。


私の対戦相手は3年生の現役選手だ。流石に遊びでやってた私じゃ全然取れない。点差も広がって、私はそのまま負けてしまった。


横では東流院さんが準決勝をしていて今リードしているのでこのまま行けば私は負けるだろう。

せっかくだし今日は蓮君が参加するサッカーのはずだ。

まだ残ってるなら見に行ってあげたい。


そして、私はサッカーの試合をしているところに来た。

ちょうどいま試合をしているらしく、蓮君もスタメンとして出ている。

場所は結構後ろだけど守りをやってる場所みたいだ。

点数は2対1。負けちゃってる。流石に3年生チームの方が強いのかな。


蓮君を見ていたら偶然目が合った気がした。直ぐに目を逸らしたけど私を見つけたのかな?それだったら嬉しいな。


────────相葉!


遠くから⋯⋯クラスメイトが蓮君に叫んだ。

私も蓮君の方を見たら、蓮君はボールを顔で受けてそのまま倒れた。


「蓮君!!」


思わず叫んじゃった。だって蓮君が倒れて、今だって起きてこないし、試合も止まって蓮君の周りに先生やクラスメイトが集まって容態を見てるみたい。

蓮君は先生が持ってきた担架に乗せられて運ばれてった。

私はいてもたってもいられなくなり私も保健室に向けて走る。


保健室に入ると蓮君はベッドに寝かせられていた。

鼻にはティシュを詰められ頭には包帯が巻かれている。

先生が私に気づいた。


「水瀬か、どうした?」


「蓮君は大丈夫ですか?」


「ああ、頭を打って気を失ってるだけだろう、顔の方はボールが当たったからな、鼻血は出たが多分それだけだ、安心しろ」


「よかったぁ」


私は力が抜けたのかその場で崩れてしまった。

先生も私を見て少し驚き、苦笑いしながら。


「少し休んでから戻ってきなさい」


そう言って先生達は戻って行った。



私はベッドの傍の椅子まで行き座る。

顔にはボールの跡がついてる。私は蓮君の頭を撫でる。

一応無事だと言われているけど頭を打ったんだから心配だよね。


───────ガラガラ


保健室のドアが開いた。誰か来たみたい。ここはカーテンで仕切りがされている。

そのカーテンが開く。

来たのは東流院さんだった。


「あら?なんでこんな所にいるんですか?追い討ちでもしに来たんですか?」


「ち、ちがっ!」


って私が何言ったところで今までのことで私に対してはそう思われてるよね。


「まぁ、あなたがあんなに大声でれー君の名前を呼ぶとは到底思ってもみなかったんですけどね」


「っ!?」


あれを聞かれてた⋯⋯。


「ふふっ、ちなみに勝負は私の勝ちです、優勝しましたから、じゃあ約束は守ってくださいね」


それだけ言って東流院さんは戻ってった。何しに来たんだろ。蓮君の様子を見に来たんだろう。私がいたから少し見て、結果だけ伝えて戻ったんだろう。


「負けちゃったか⋯⋯明日からどうやっていけばいいんだろ」


元々あんな事はしないってお父さんに言われてわかってた。やめないといけないって。ちょうど良かったのかな、今日の勝負で負けて、これでいじめることをしなくなって。

これから普通に接して大丈夫なのかな?はぁ⋯⋯まだ無理だよね。


「さてと、そろそろ戻ろうかな、起きてくれたら話したかったけど⋯⋯眠ってる蓮君⋯⋯起きるかな⋯⋯ちゅっ」


⋯⋯。


⋯。


「⋯⋯っ!⋯⋯流石に無理か、じゃあ失礼しました!」


顔真っ赤な気がする。流石にあそこにいるのは恥ずかしかったから急いで出てきちゃったけどまだ戻れないよ。あいりはそのままトレイに駆け込み心を落ちつけるのであった。



◇◇◇


誰もいなくなった保健室。


「はぁはぁ!いや、ちょっと待て、落ち着け!今何された!?」


俺は気を失ってたけどあいりが独り言。負けちゃったかって所で起きてた。

でも、なんか落ち込んだあいりの声が聞こえてきたから起きるに起きられなかった。そしたらまさかキスされるなんて思わなかった。

流石に起きることは出来なかった。あそこで起きたら気まづいなんてなんてもんじゃなかった。


「まったく、バカだよ、明日からどんな顔すればいいんだよ、気づいてない振りとか俺苦手なんだけど」


そして俺はひとり悶々と悩むこととなった。

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