第7話『夫婦と挨拶』

俺は今水瀬の家に向かっている。

街中を出歩いているとまた誰かに遭遇して楽しめないと言われ、邪魔の入らないと所に行くと言われた。


「水瀬、今日家族は?」


「家にいると思うけど?」


「そこに俺が行くの?大丈夫?」


このまま俺が言ったら家族に捕まるんじゃないだろうか。それに弟や妹がいるのに二人でいるなんて無理なんじゃ⋯⋯。


「いやー誰かを家に連れてくの初めてだよ」


それって結構重要だよね。友達いないと思われてるんじゃない?大丈夫かな?色々不安になってきた。


それから住宅街に入り、しばらくして古めのアパートが見えてきた。


「ここだよ」


アイから話は聞いてはいたけどアイも大変だったんだ。でもちゃんとグレずに下の子の面倒も見て偉い。


「行こ」


階段を上がり2階の1番手前の扉を水瀬が開けた。俺は水瀬と一緒に扉をくぐる。


「ただいま」


と言ったら中からドタドタと音が聞こえてくる。


「おかえり〜」


「おかえりなさ〜い」


弟と妹が出迎えに来たみたい。


「お姉ちゃん、その後ろの人だーれ?」


妹ちゃんが俺の事を聞いてきた。


「えっとね、私の大切な人かな」


小さい子だからそれだけ聞いて理解したのか俺にも笑顔を向けてきてくれた。可愛い。


「二人とも挨拶して」


「はーい、わたし真菜まなって言うのよろしくおねがいしましゅ」


「僕、とおるって言います⋯⋯よろしく」


「初めまして、相葉蓮です。よろしくね」


俺はしゃがみ2人と視線を合わせ自己紹介をする。

真菜と透は俺の名前を覚えるため呟いてる。


「じゃあリビング行こう」


「うん」


そのままリビングに行く。中にはお母さんとお父さんと思わしき2人が座ってのんびりしていた。

それも俺が入るまでで俺が水瀬の後に続いて入ったら両親は目を点にしてこちらを見ていた。


「あ、あいり、おかえりなさい⋯そちらの方は?」


テンパってる水瀬母。水瀬と違い目元が優しくふわふわした感じの人。水瀬が男を連れてきてビックリしてるみたいだ。


「彼はね私の大切な人だよ」


水瀬はここでもその説明をした。両親にもかかわらず躊躇い無く言った。


「まぁ!ちょっと貴方あいりが男の子連れてきたわよ!」


水瀬母が水瀬父の肩を叩きながら言う。


「あ、ああ、まさかあいりが男をな⋯⋯二人ともとりあえず座りなさい」


おかしい。今日は2人の記念日でオフ会だったはず。それが何故に両親へのご挨拶に変わってるんだ!?どこで間違えた。展開が早すぎる!


そのまま両親の向かい側に2人で座る。真菜と透は離れたところで二人で遊んでいた。


「初めまして相葉蓮ですよろしくお願いします」


「初めまして父のつよしです。こっちは妻の麗花れいかだ」


「よろしくね蓮君」


「それで2人はどんな関係なんだ?大切な人と聞いたがあいりの好きな人なのか?」


水瀬父が俺達について聞いてきた。


「えっとね、実は私と蓮君はねゲームの中で出会ったの、当然それが蓮君だなんて知らなかったよ、でもねゲームの中で結婚というシステムがあってそれで結婚したの、今日で結婚して1年になるんだ。

ゲームの中でお互い結構リアルのことについて話したりして励ましたりしてた。だからリアルで会ってみたくて今日記念日に会ってきたの。そしたらその人が同じクラスの私がいじめてた相葉蓮君だった」


水瀬は⋯⋯あいりは俺達の出会ったことから今日のここに至るまでを話した。


「いじめていた?どういうことだ」


「私学校ではギャルでクラスの中で下の人間をパシリに使ったりしてた。それが蓮君だった。」


「あいり⋯⋯お前、そんなことしてたのか!!」


剛さんがあいりの頬をビンタする。あいりも申し訳なさそうな顔してる。


「蓮君、あいりが迷惑をかけた」


剛さんが頭を下げる。麗花さんも頭を下げてくる。


「やめてください、確かにあいりが俺にいじめをしてたのは事実です、でもゲームの中ではそのあいりに慰めて貰いました。毎日いじめられてるからとゲームの中では愚痴をこぼしてそれをあいりが聞いて慰めてくれる。そのおかげで俺は学校に行くのを頑張れました。

あいりがギャルになったのは弱く見せたくなかったから、家が貧乏で下の子の面倒も見ないといけない。自分がいじめられる立場になりたくなかった。そういった理由があってギャルになったんです。俺はそれをあいり自身から聞きました。だから俺は大丈夫ですよ。いままでは辛かったけどそれをしてるのがあいりだと分かれば俺は我慢できます」


「蓮君、ありがとう、私達がもう少し稼げればいいんだけど、あいりにも無理をさせてたのね。こんな娘でも好きになってくれたんですものこれからもよろしくお願いします」


「そうだな、蓮君のおかげであいりの学校での様子もわかった、蓮君にとって複雑な状態になってたのはなんとなくだが分かる。だがこれからも娘のことをお願いしたい」


「ええ、あいりの事が好きなんで大丈夫です」


俺は両親からあいりを任された。あいりは顔を真っ赤にさせて俯いてしまってる。ただのオフ会が両親への挨拶になりしかもOKというおかしな展開。あいりのことは好きだから別にいいけどどうしてこうなった?

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