第5話『心境の変化』

「会いたかった」


いきなり抱きついてそう言ってきたアイに俺は慌てる。周りからは好奇な目で見られてる。恥ずかしいよ。


「お前がロータスだったんだな、いつも話を聞いてて酷いやつもいたもんだと思ってたけどまさか私がそれをやってるなんてな、ほんとにすまなかった」


⋯⋯女王様が謝ったー。一体どんな心境の変化があったんだろうか。確かに俺のことを心配してくれてたアイが俺を虐めていたのは事実だけど。


「ウチ⋯私はロータスと話してた1年間とっても楽しかった。お前がオタクじゃないことはこの1年で知ってるから、お前に対して酷いことをしたと思ってる」


ゲーム内での会話で俺達の仲は確かに深まった。お互い結構知ってるし、だからそんな俺に対して酷いことをしたことを謝りたいのだろう。


「わかった、別に構わないよ、虐められて学校が辛かったけどアイのおかげで頑張れたのは事実だし、まさか虐められた本人から慰めてもらってたとは思わなかったけどな」


「それはごめん、私もホントはカツアゲとかパシリとかやりたい訳じゃなかった。ロータスなら知ってるよな私の家のこと、妹も弟もいる。弱い私は見せられなかった。だからギャルになって威張ることによりクラス内で虐められないようにしてた」


うん、知ってる。いつも大変なのは聞いていた。それでギャルになってたのを知ってそれなら仕方ないかもとか思った。


「仕方ないじゃん、家の事情でなる必要があったならいいと思うよ、まぁ、それで被害に遭ってた人たちは嫌な気持ちだけど」


「うっ、ごめん」


「俺なら気にしないよ、理由もわかったし、アイが水瀬だと知ったおかげであの虐めもそこまできにしなくて済むよ」


「ありがとう⋯⋯ありがとう⋯」


俺が気にしないと言ったのが余程安心したのか涙が溢れてるよ。まったく、仕方ない、いつまでもこんな人目ある場所じゃなくてどこか落ち着ける場所に行くか。もうそろそろお昼だしついでにご飯にもしよう。


そして近くのファミレスに連れてきた。ナポリタンとハンバーグを頼む、セットはBセット(ご飯、コンポタ)


ファミレスに来て水瀬も落ち着いて来たみたいだ。


「ロータスありがとう」


もう完璧にあのいじめっ子水瀬あいりではなく俺の嫁アイにしか見えないや。もうどんなに強気になっても気にならない。


「気にしなくていいよ、それよりも学校でどうするのか気になるんだけど、水瀬は自分を強く見せなきゃ行けないんだよね」


「うん、そうなるな、やりたくはないけど⋯」


やっぱり本根の部分は優しいんだよね。


「ならこのまま俺が虐められるよ」


「え⋯」


「その方が周りの人に迷惑にならないからね、迷惑かけるなら俺にしとけばいいしね」


「それじゃあ、ロータスがみんなから酷いこと言われるじゃないか!」


「別に俺なら大丈夫だよ、アイがいるし、俺には学校を卒業しなきゃ行けないという意思があるから、途中で潰れたりはしない」


「でも、それだって⋯」


「水瀬が理解してくれていれば充分だよ、それにいきなり態度変えても変でしょ、不自然にならないようにしないとだからさ」


「⋯⋯わかった、ありがとう」


水瀬はまた涙ぐむ。ほんと優しい。


「この後どうする?」


この後のどうするかを聞く。


「色々あったけどこのままデートしよう」


「わかった」


「じゃあ行こ!」


そのままファミレスを出てデートを始める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る