第2話 芹沢 美水希のお礼
よくよく考えてみたら、寝てる女の子に自分の上着をかけるってとんでもなく厚かましくってキモイんじゃないのかな? と自分の取った行動に疑問を持ったり恥ずかしかったり悶絶している間に授業が終わった。
終業のチャイムが響くと芹沢さんは静かに目を覚ました。
結局、授業開始からずっと眠っていたと思う。
勝手に寝顔を見たりなんだり……なんか申し訳ないという思いが溢れる。
彼女は大きく伸びをする。
細長い両腕をぐっと伸ばして、ちょっと涙目になりながら。手の甲で潤んだ瞳を軽くぬぐう。
クールなイメージの芹沢さんだけど、その仕草には愛嬌があって、どことなく猫のように見えてしまう。
寝ぼけ
「これ、きみがかけてくれたの?」
「う、うん。その……俺のやつで、そのごめんね……」
ん? と小首をかしげて芹沢さんはちょっと笑う。
「どうして? きみのだもん。嫌じゃないよ。それに、あったかくて気持ちよく眠れたよ。ありがとね」
そう言うと肩にかかっていたブレザーをそっと渡してくれた。
返してもらったブレザーに袖を通すと、少し温かくてほんのりと甘い匂いがする。
ちらと、芹沢さんの顔を見ると小麦色の肌が
「そ、そのね。すぐに着られるのって恥ずかしいかな……」
前髪を
「あああ、ごめん!」
慌てて言いつくろうも総てが言い訳っぽくてなんだかバツが悪い。
「べつに謝るようなことじゃないよ。私が勝手に恥ずかしくなっちゃっただけ。きみは気にしないで」
それじゃあ私、購買に行くねと彼女は言うと足早に教室を後にした。
慌てて駆け出していってしまった芹沢さんを見送ると改めて嬉しさと羞恥心が湧き上がってきた。
手で顔を覆って
「青春するのは構わないが――」
声をかけられ振り返ると英語の教科担任のひくついた笑みがあった。
ちょっと状況が飲み込めないが、負けじとひくついた笑みを返してやった。
その後、居眠りをしていた芹沢さんではなく、俺が延々怒られる破目に会うのであった。
理不尽に涙目になってしまった。
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