第9話

隣にはOL2人組、まだ新入社員かな。


私にもあんな時があった、仕事に燃えて希望に満ち溢れてた。

どうやら好きな人の話で盛り上がっているようだ。


「ほんと惚れっぽいよね、リサは。」


「だって、好きになっちゃったんだもん、ちゃんといつだって真剣だよ。」


「たしかに、人を好きになるのに理由なんていらないよね、気づいたら好きになってるし、好きになるのは止められない。」


友達二人して恋愛体質なんて珍しい、類は友を呼ぶか。


「いいなぁ、若いって。

私たちもあんな時あったよね、会社なんて好きな人の顔見に行ってたし、仕事なんて全然おろそかで。

コピー頼まれたらドキドキしたり、片思いしたり、常に好きな人いて。懐かしいな。」とゆりが言う。


「そんな好きな人簡単にできないでしょ。」


「何言ってんの、好きになるのなんて簡単よ、いつのまにか好きになるんだもん、気付いたら好きになってるもんでしょ普通。」


え、ゆりまで・・・「ゆり今まで何人好きになった?」


「そんな数えたことない、いちいち気にしないし何人目かなんて。付き合ったのは5人だけど。」


「好きな人と付き合った人、比べたらどっちが多い?」


「ホント何言ってんの?」


衝撃が走った。頭の中を駆け巡る。私、好きで付き合った人って淳以外、思い当たらない。


昔の彼ギャンブル好きだった、でも本当にはまっていたのは私の方だった、彼の給料も彼の貯金も私のほしいものと遊興費に消えて自己破産する手前で彼の親が救いの手を差し伸べた。


私がそうしてほしいといったわけでもなく、彼が望んでしていると思っていたから心は痛まなかったが、

結果彼はほかの女と結婚した。

そうするしか別れられないと思ったと最後に言われた。

彼に尽くすことはしなかったが、ほかの女のものになると思った瞬間彼へ執着した。


会社勤めをしていた時、上司たちはいつも私に味方してくれた。

私の周りの邪魔な人、苦手な人はいつも退職したり移動させられていなくなった。

私の方が有能だから、会社が私を選んだのだからしょうがないと思っていた。


母親はいつも機嫌が悪く、遠足の時に限って具合が悪くなり、お弁当を作ってくれることはなかった。

父親はいつも母親に気を使い、顔色を気にしていた。

怒り狂うと手が付けられなかった。

子供の私の服を買うよりより自分を着飾る事を優先した。


そういえば淳が前に言ってた。

『俺、自分から恋人に別れようって言ったことない。』


わたしもそうだ。

何の予兆もなく急に音信不通にするという終わり方ばかりだった。

何十回も着信があっても、『お願いだから連絡して』とメールがきても無視し続けた。

ある日突然消えるというやり方をしていたのは私も同じだった。


携帯すぐ、検索。


サイコパスの特徴

日常的に嘘をつく。

自分の都合のいいように周りを操る。

冷淡、良心がない。

我慢が出来ない、ギャンブルや高い買い物をするのに躊躇がない。

自分の非を認めない、自分の犯した罪を人のせいにする。

人に寄生しとことんまで搾取する。

性関係に節操がなく、心ない恋愛を繰り返す。

初対面でもだれとでも仲良くなれるが、その違和感から周りがいずれ離れて行き人間関係が長続きしづらい。

飽きっぽく、平凡が苦痛、仕事は転職を繰り返す、変化や刺激を求める。

自分に自信があり選ばれた人間だと思っている。


違う、違う、当てはまるような、そうでないような、わからない。


あ、サイコパス診断・・


だめだ、あんな根拠ないもの信じられない。


病院行って脳を調べてもらう?怖い、もしサイコパスと診断されたら・・


【サイコパス症状チェック】やってみた。

―65点―サイコパスの可能性があります、親や親戚に精神病者や犯罪者がいないか調べてみましょう、専門医に相談することをお勧めします。

え、65点で?!

この診断はあてにならない、ほかのやつ。


ℚⅠ あなたは女の子に靴を買ってあげましたが、女の子はそれを喜びませんでしたなぜですか?

一般人の答え;女の子の好みではなかったから。

サイコパスの答え;女の子には足が無かったから。


ℚⅡ あなたの子供のお通夜で、あなたは親戚の集まる隣の部屋で嫌がる妻とセックスしましたなぜですか?

一般人の答え;喪服の妻に色気を感じた、隣の部屋の親戚に気付かれると思うと興奮するから。

サイコパスの答え;セックスする度、妻が今日セックスした自分を思い出し苦しむように。

あ―全然わからない。


【サイコパスセルフチェック】

動物や赤ちゃんを見るとどう感じますか?

①可愛い

②なんとも思わない

③子供や動物は嫌い


他人をコントロールして自分の思う通りに動かすのは得意だ

①はい

②いいえ

③逆に利用されるほうだ


敵だと思った人物に対しては?

①徹底的に攻撃

②無視する

③あまり敵はいない

質問に回答していく・・


今までのは、自分でそうかもしれないと思って回答したところもあったから・・今度のはちゃんと人間らしく、回答した、大丈夫なはず。


―あなたはサイコパスである可能性があります。単にわがままだったり、無神経なだけなのかもしれませんがもし人が怒ったり、泣いたりしても相手の気持ちがわからない場合は専門家に相談することをお勧めします。


こんなのあてにならない、みんなをサイコパスに仕立てるようにきっとできてる。


ほかには?【あなたは異常者?サイコパステスト】 タイトルがやだ。


外国のやつ、これ信憑性あるの?

いくつかの画像が出てきます、感じたままあてはまるものを選んでください。

―あなたの脳は一般人とは異なりますが、才能として受け入れることが出来ればそれを生かし発揮することが出来るでしょう。

褒めてんの?必死にやった時間返して。


どうやら普通の人と感覚が違うことだけはやってきたテストの回答から察することはできた、常識がないとか昔から一番カンに障る言葉。


サイコパスだったとしたらどうだというの?


サイコパスの被害者の書き込みばかり、サイコパスに関わるとろくなことがないとか、戦うことをせず、離れましょうとか、幸せになって見返しましょう、年齢と共に外見も見劣りしていく現実が彼らには待っています、彼らは最終的に誰からも相手にされなくなり一人になるのです。


たしかに好きでない人と付き合ったこともあったけど、人の心をもてあそんだことなんて一度もない。

どうせ向こうも本気じゃなかったし、好きになるよう努力もしてみたし、途中から連絡とらないようにしたりしたのは無理して付き合うより、その方が相手に対して誠実だと思ったからで、無理して付き合い続ける方が悪いし。

私だって振られることもあったし。むしろその方が多いし。私、悪くない。


だから今まで幸せになれなかったの?

だから親友がいないの?

だからみんな離れていくの?


どっちが正しいのかなんて関係ない、関わりたくなくて離れていった人たち。

いつも一人なのには理由があったの?これからも一人なの?

この先どうなるの私。


確かに悪気なく突拍子もない事を言ったり、言わなくてもいい事を言ったり、トラブルに巻き込む様な事を言ったりしたあとに、周りの人が露骨に違和感をあらわにした。

どうしてあんなこと言ったんだろうと後悔した。

周りが怒ることが推測できなかったんだと思う。


反省の色がないと言われ悩んだりしたこともあった。子供の頃はどうしたら反省していると周りに感じてもらえるか考えたがわからなかった。

何かしてあげても喜ばないからこの子は精がないと言われ傷ついた、どうすれば大喜びしてると感じてもらえるか、普通の子のように大人達に可愛がってもらうために。

きっと子供の頃は罪悪感や喜びを感じることが出来ないことすらわからなかったんだと思う。


自分を守るために、私はいつも周りの目を気にし、人の心をつかむということに神経を集中し、こういうことを言ったら相手は喜ぶだろうなとか、常に考えて先にする様になった。

そこにもちろん自分の感情などない。


たとえば夜の電車、みんな疲れ切っている。

席はすべて埋まっている、そこへ老人。

普通の人は席を代わらないと、という良心と気づかないふりをするという罪悪感の戦い。

さっきまで携帯触ってたのに、寝たふりしたり。

でもサイコパスには選択肢はない、罪悪感がないから席を譲るという選択肢しかない。

目の前にいる老人の前で席を譲らず堂々としている人間になるのは避けなくてはいけないとインプットされているから。

罪悪感も良心もない人間が時として、普通の人よりいい人に見える瞬間である。

場合によっては周りの人からはそれが尊敬に値したりする。


私は歳を重ねるうちに自分のほしいものを手に入れる手段をなんとなく身に付け、次々親切な人が都合よく現れたりした、人脈に食い込むことも躊躇なくできた、いらない人間を排除して自分に居心地がいいように巣作りをする。


変わった人だと思われないよう細心の注意をして。


その本質は興味のないものには徹底的に無頓着、手に入らないと判断したものに対しては無駄な努力もしない。

ただ自分のものが手元からなくなることは許せなかった、異常なまでに執着し、自分の気持ちを抑えることが出来なかった。


もっと早く、自分の事がわかっていたら、もっとうまく立ち回れたかもしれない。


サイコパスに生まれて、幸せになれない人間と自分の性質を理解している人間じゃだいぶ違う。


満たされることのない幸福感を求め続ける人生、淳もさまよっていたの?それとも彼はすべて知っていたの?


私が人を好きになれたのは、彼がサイコパスだったから。


飽きたらいなくなる、そしてまた現れる。思い当たる、私の中の気分次第で復活する恋人たち、淳が私にしてきたように。


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