第7話
『元気?来月、同期のユウミの退職と出産のお祝いを兼ねて飲み会をします。久しぶりだから来ない?』
『久しぶり、元気だよ。お誘いありがとう、その日は先約があって行けそうにないの、ゴメン。みんなによろしく』
そういえばユウミ子供生まれたんだ、披露宴以来あってないな。
「お前、そういの行かないよね、親友とかいなさそうだし。」
「ちゃんと友達くらいいるよ。」
「じゃなくて、親友。コイツのためなら自分犠牲にしてでもなんだってしてあげれるみたいな。」
「そんな場面に出くわしたことないけど、その時が来たら私だって、友達にできるだけのことはしてあげようと思うよ。
それにユウミは同期でもそこまで仲良くなかったし、部署移動になったいきさつがちょっといろいろあって、気まずいとこもあるんだよね。」
ユウミとは配属された部署が同じでお互い担当を割り当てられた。
ひとつ上の桜井さんが指導に当たってくれていた。
初めて任された仕事でどうしても認めてほしかった、そんなに難しい案件ではなかったが私たちの努力むなしく、そのプロジェクトは成功しなかった、その後ユウミは営業店に移動になった。
ユウミは仕事ができないわけではなかったが、私としては彼女にもっと頑張ってほしかった。
桜井さんにそのことを相談したことがユウミがチームから外される原因になったようだ。
別にうまくいかなかった事すべてをユウミのせいにしたつもりはなかったし、何より営業店の雰囲気は彼女に合っていたようで、そこで知り合った取引先の人と結婚したのなら結果彼女にとってはよかったんじゃないかなと思う。
人には向き不向きがある。
テレビでセックスレスの話題。
女性コメンテーターが日本の夫婦のセックスの頻度のデーターを伝える。
淳と最近セックスしたのって思い出せない。
まだ、夫婦にもなってないのに。私、彼にとって魅力ないのかな。
「女って、セックスしなくなるととたんに機嫌が悪くなる。
直接言わなくても態度に出る、そのくせその逆で『カラダが目的なの?』とか平気で言ったりするから俺はセックスを相手に合わせてするつもりはない、昔からどの女に対してもそうしてきた。」
私の心読まれたかのような発言。
「旅行行きたいな、どこ行った事ある?」
「お前その質問前もしたよな。
覚えてないの?おんなじ質問何度もするなよ、わざといってんの?お前、馬鹿?病気?
そういう人ならちゃんと言って。
大丈夫。俺、なんとも思わないから。でも知らないといけないことだし。
大丈夫受け入れるから。
さすがに何度も同じ質問されるとこっちもしんどいわけよ、でも病気ならしょうがないよね。」
涙が出た、ひどいこと言う。
確かにまえにも同じ事聞いたことあったかもしれないけど、何度聞いてもいいじゃない。
「泣いてんの?だから大丈夫だって、俺お前がそういう病気の人でも気にしないから。」
彼が髪をなでる、キスをする。
悪魔と天使、アメと鞭、何も言い返せない。
私、そうなのかな、病気なのかな、嫌われないように今度から気を付けて質問しようと思った。
わたしはあなたが好きよ。
ほかの人ではダメ、心から思う。
彼が喜んでくれることをいつも探してる。
彼の事を考えると苦しい、彼に嫌われないようにしなきゃといつも思う、でも馬鹿な私はいつも彼をイラつかせてしまう。
人生のうちに人を好きになるなんて、そうそうない。
彼を失うことだけが怖い。
最近彼の顔色ばかり見ている。
私は馬鹿だから彼をすぐに怒らせる。
この間も、私のせいで彼を怒らせてしまった。
「次、喧嘩したら、知らないよ。こっちは最後の切り札使わずに我慢してるんだから。」と言われ、泣いて謝った。
「お灸すえただけ、愛してるよ。」と優しく、髪をなでてキスしてくれた。
彼と一緒にいると今でもドキドキする。これが愛なんだと思う、
神様・・・・。
ソムリエ受験の時の恩師のお店、ドイツから生産者を招いてのワイン会どうしても断れなかった、今日は淳が来る日なのに。
『今、終わった。急いで帰ってご飯作るから。』走って帰ってきた、淳居ない。
急いで着替える、ドレッサーの引き出し、心臓が止まる。
シャネルの時計が無くなってる・・・
電話かけてみる、メッセージが流れる。
またかける、メッセージ流れる、を繰り返す。
どうして・・何が何だかわからない。
LINE『連絡して!警察に言うよ』
その日から音信不通になった。
お願い、帰ってきて。
お願いどこにいるの。
時計がなくなったことよりも彼がいなくなった事にパニックになった。
何がダメだったんだろう。どうしていなくなったんだろう、私がちゃんとしていなかったから彼を怒らせたの?
あの日から、例えようのない脱力感。彼を中心に私の世界は回っていた。
何も手につかない。
彼を探す、平野区中。彼の自転車を探す。
フェイスブック、ブログ、インスタ、ツイッター、何もヒットしない。
すべてが壊れてしまった。
あてもなく、彼の住んでいる町をさまよう。
彼を見つけるまで永久に探し続けるような気がした。
まるで、生きる目的をさがすかのように彼を探してる私がいた。
仕事も手につかない、人として機能してるのかどうかもわからない、抑えきれない性欲にかられた。我慢できず勤務先の更衣室でオナニーした。
何が何だかわからない。何もかもどうなってもいいと思った、そしてまた一晩中彼を探す。
彼を探す手がかりを検索し続ける。
無くなった時計のシリアルナンバーから突き止めるか、家族構成、確か大学は国立。
もっと決め手になるもの。
ヤフー、グーグル、NTT電話案内。
・・・・・・・だめだ。彼はもう戻ってこない。
忘れよう、忘れよう、忘れよう。
忘れる方法、記憶喪失、心理カウンセリング、心療内科、メンタルヘルス。大好きな彼を忘れる方法、失恋から立ち直る方法。幸せに生きる方法。彼が窃盗。彼が突然消えた。
検索する、関連を読みあさる。何か答えがほしい。
―彼を失いました、彼はサイコパスだったのかもしれません― だれかの書き込み。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます