第4話
「コンパにこの間誘われたけど、断った。食事会って聞いてたから最初は行くって返事したんだけど、行かないことにした。
私、コンパとか行かない、コンパって結局その日やりたいだけの男の人しか来ないんでしょ。」
「何もせずに帰る人もちゃんといるよ、そもそもやるやらないってお互い合意の上なのにどうして男が悪いの?
食事会とコンパの違いって何?そんな理由で断ったら誘ってくれた人に悪いよ。子供じゃないんだから、食事会なら行くけどコンパなら行きませんって、友達とごはん食べるってことにかわりないし。」とアツシ。
もう1週間も連絡がない。不安になってメールする。
『私たちって、ほんとに付き合ってる?』
✉『付き合ってるよ』
3日後、こちらからメールする。
『もう、飽きたの?別れるならはっきりして。』
返信なし。
『今日、来なければ別れます。』
これ以上おあずけは気が変になりそうだ。
✉『自分が会いたいからって、別れるとか引き合いに出すのってずるいと思う。前も言ったと思うけどおたがい生活があるんだし。』
『ごめんなさい、許して。もう連絡ないと思って、はっきりさせたくて。でも別れたくない』
アツシはそれから来ることはなかった。
出会いから2か月経っていた。
アツシの苗字も年齢も結局知らないままだった。
それから私は、飲み会という名のコンパに行きだした。
自分の身の丈に合った人と結婚するのを目標に。
せっせと精を出すけどだれのことも好きにならない。
楠木君と同じような人が数名同時進行。
楠木君も直人<イケメンスケベ>も会ってない。
アツシにうつつを抜かしているときに、連絡があってもすべて無視した。
ちゃんと対応しなきゃなと思ったけど、いい加減なことしてしまった。
アツシにとってのあたしはきっと楠木君なんだろうなと思った、そう思うと諦めもついた。
髪をばっさり切った。変わりたくて、アツシに近づきたくて、アパレルの営業をしていると言っていた彼はいつもおしゃれだった。
お気に入りの美容室。
オーナーがこだわりを持って立ち上げて、ひとりでシャンプーからブロウまでしてくれるサロン。
33歳の若いオーナーに、束の間付き合った若い彼の話をしてみた。
一通り話し終わった後、もともと無理だったんだよね歳も違うし。と、笑い飛ばした。
「さっきから黙って聞いてたら、好きなこと言うよね。いらっとする。
身元知らないとか言いながら自分も実年齢言ってないし。
ちゃんと最初から正直になってたら受け入れてくれたかもしれないのに、幸せになりたいとか、変わりたいとか口でいうだけで。
本当に変わりたいなら引越ししたら?
他の女と結婚した前の彼氏との部屋まだ住んでるんでしょ、家賃一人で払いきれないのに。」
涙が出た。こんなきついこと言うんだ。全部本当の事だけど。
確かにおっしゃる通りです。
何も変わらない、変わってない私。幸せは遠くなるばかり。
その月のうちに引越しした。繁華街からは遠くなったけどアツシの住んでいると聞いていた町からは近くなった。
引越ししただけで変わったわけではなかったけどアツシにメールした。
✉『引越ししました。気が向いたら遊びに来て。』
『今から行く』アツシから連絡がきた。
寒い。
もうすぐ着くからと言われてから30分も駅で待ってる。
どこから来るのかいつ着くかもわからないけど。
人を好きになるって難しい。
なかなか本気で好きになることなんてないのに手に入らないと思ったときはやたらのめりこむ。
こんな私でもいつかしあわせになれるのかな。
その後も、彼は突然来た。
夜中にいきなりチャイムが鳴る。
私から連絡することはなかった。
会いたいと言うことも一切なくなった。
午前4時。
チャイムが鳴った。アツシだ。
「今日お前が仕事行ってる間、家で寝ててもいい?風呂も入りたいし。」
「わかった、鍵ポストに入れといて。待っててくれると嬉しいけど。」
急いで帰宅したけどアツシはもういなくなってた。やっぱり。
1週間後クローゼットのシャネルのバックがなくなってるのに気が付いた。
間違いない、引越しの時ここに直しておいたはず・・絶対なくなってる。
アツシだ。とっさにそう思った。
前にも財布からお金が無くなっていることが数回あった。
はじめは信じられなかった。
賢くて私より大人の考えをするアツシがこっそりお金取るなんて。
本人に問いただすことも怖くてできなかった。
どうしようもない、脱力感。
あんなに好きだったのに、アツシは私の事なんてなんとも思っていなかった。
何してるんだろう私。
親に買ってもらったバック。
一人っ子だったし、裕福な家庭ではなかったけれど節目にと一生もののバックと時計を買ってくれた。
そのバックがなくなった。
何も親孝行しないまま、ふらふらしてる私。
ほんと何してるんだろ。
✉『今まで目をつぶってきたけど、もう嫌。全部返して。』
アツシから返信が来ることはなかった。
結局どこに住んでいるかも、苗字も知らないままだ。どうせ、結ばれることのない男。
未来がない関係ならこれでよかったやっと忘れられる、そう思おうとした。
どうしてあんなこといったんだろう。
アツシに会えなくなってからずっとアツシが頭から離れない。
普通の人と普通に恋愛できない私は神様にもう一度彼に会いたい、一度だけでいいから会わせてくださいと心から祈った。
次彼に出会ったときは二度と自分から彼を離すようなことはしないと。
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