第2話

< 4週間前 >


飲み会で知り会った楠木君と会う約束をしていた。

二人で会うのはこれが2度目。


公務員で兵庫県在住。

個室タイプの居酒屋となり同志のカップル席。

あーこれお互いのパーソナルスペースに入り込むことで男女の仲が深まるってやつ、っていうか全席個室にしたいけど狭いって店側の事情じゃん。


たしかに、距離近っ。

普通にボディタッチして、キスする。

次の店、誘われたけど気分が乗らない。

「ものすごく残念だけど、今日は実家に帰らないといけなくて、また絶対連絡するから。」と言って別れた。


毎日メールしてくれるまめな人、こういう人を選べば安泰なのかな。


楠木君と出会った2日前に7年一緒に暮らした彼氏と別れた。。

いずれ結婚すると思っていたのに、新しい女ができてその女と結婚したといわれた。


確かに1年くらい前から喧嘩ばかりで、別れ話は出ていた。

でもこの歳まで一緒にいたのに今更別れるなんて。

今までだって、喧嘩はしたしそれでも別れなかったし、今回はいつもより長引いているだけだと、あまり縛りつけてもいけないから自由にさせてあげようと、帰ってこない日が続いても咎めなかった。


彼の最終通告を受け入れることができなかった私は、彼にしがみついた。

「あなたがいなくなったら生きていけない。」と。


「そういうところが嫌なんだ、わがまま放題した挙句自分だけが被害者になって。

もう、解放してほしい。別れてくれないからこうするしかほかになかった。」


なんて男。自分が悪いのに正当化するなんて。


彼は私より7つ年下。

8つ下というその奥さんはわたしとは15歳も違う。

勝負にならない、男は結局若い女がいいのか。


楠木君には7つサバよんでる。

ほんとの年齢言うと引かれるかなと思って、嘘ついてしまった。

ほんとのこと言わなきゃいけないけど、めんどくさいからこのまま終わりにしてしまおうなんて思う時もある。


ちゃんとしよう、こんなことしてるから私はダメなんだ。


神様ごめんなさい。


楠木君と別れてからの帰り道、ふとした街角男の子と目が合った。

とても可愛い子、ついじっと見た。目と目が合う。3秒、4秒、、、、ダメダメ。

こんなことがまえにもあった。


<3週間前>

元彼と別れてから、寂しくて誰でもよくって偶然街で見かけた男、カッコよかったからじっと見たらすぐ追いかけてきた。

そこから付き合うようになった、カッコよかったけど、馬鹿でスケベでおまけに女がいた。


元彼のこと考えなくて済んだし、神様が私に苦しい試練を乗り越えるために一時与えた男なのかなと勝手に思って付き合った。


楠木君とは寝れなかったけど、イケメンスケベとは抵抗なかった。


そんなこと考えながら歩いていたら、誰かに肩をたたかれる。

振り返るとさっきの彼。


可愛い、若い、イケメンスケベより楠木君より。

「なんですか?」

「別に、すごく見てきたから知り合いかと思って。」

「違います。」

「何してたの?」

「なんですかキャッチセールスですか?」

「違うよ、ほんとに知り合いかと思って、何歳?」

「・・・・・・・三十三。」


また嘘ついた。

「ほんと?俺のほうが年上かと思ったよ、連絡先教えて。」

そんなわけない、すでにだいぶサバ読んでるのに。


どうせ元彼の携帯解約するところだし、ここでメアドもったいぶって教えないのも変だしと自分に言い訳して教えた。


「俺のメアド送っといたから、帰ったら連絡して。じゃ。・・あ、俺の名前。アツシ。」


久しぶりにドキドキした。もう二度とひとのことは好きにならない、この世の終わりとまで思いつめた恋が終わって、ひと月後のことだった。


1分後私からメールする。『帰った』

アツシ『うそつけ』


夜中2時

『もう寝てる?』

『いまのメールで起きた』

『ごめん、明日また連絡しますね。おやすみなさい。』


こういうところなんだろうなわたしのダメなとこ。

まあいいか。今は、リハビリ期間ということで。


次の日。

彼から連絡ほんとに来るかな。

からかわれたのかな。彼、何歳だろう。


メール着信音、すぐに開く。

『昨日はありがとう、あのあと無事実家帰れた?』楠木君だった。

『こちらこそ、昨日ありがと。楽しかったね。今度はゆっくり』

心ここにあらず。


✉『出てこれる?昨日のとこ7時に』アツシだった。

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