孤高の魔女の誕生譚 3

 おでこがひんやりとする。

 その心地よさに誘われ、フィーアリーゼはゆっくりと目を開いた。


 最初に映ったのは白くしなやかな指。

 さきほどの奴隷少女がフィーアリーゼを見下ろしていた。


「あぁ……ようやく目が覚めましたわね。気分はどうですか?」

「気分? そうだ……私、急に目眩がして――」


 飛び起きようとするが、鎖で繋がれて身動きが出来ない――なんてこともなく、フィーアリーゼは荷台に敷かれた布の上で寝かされているだけだった。


「急に起き上がったらダメですわよ。まだ、毒が抜けきってないんですから」

「……毒? それって――」

「そうよ。あなた、フィールの実を食べたでしょう?」


 商隊でご相伴にあずかった食事に果物の類いはなかった。食事に混ぜられていたと思っていたフィーアリーゼは、なにそれと首を傾げる。


「記憶がないのかしら? それとも、フィールの実がなにか分からない? あなたの服のポケットに入っていた果実のことなんですけど……」

「あ、あああああっ!」


 お腹が空きすぎて、最後の手段と思って食べた果実の存在を思い出した。


「もしかして、毒のある果実だった?」

「やっぱり食べたのね。あれは美味しそうに見えるけど、しっかりと毒が入っていますわ。一つ程度なら大丈夫だけど、いくつも食べたら危なかったですね」


(ね、念のためにと、一つだけで様子を見ておいてよかった)


 冷や汗を流しつつ、フィーアリーゼはゆっくりと手を閉じたり開いたりする。少し気怠さが残っているが、毒の方はおおよそ抜けているようだ。


「……もう大丈夫かしら?」

「ええ、おかげさまで。……そういえば、看病してくれたのよね。迷惑掛けてごめんなさい」

「本当に。あなたが急に倒れたから、わたくしがなにかしたんじゃないかって、セドリック様に疑われて大変だったんですのよ?」

「それは……本当に迷惑を掛けたわね」


 フィーアリーゼはセドリックを疑ったわけだが、セドリックは彼女を疑っていたらしい。

 もっとも、健康そうな少女が突然倒れたのだ。外部からの関与を疑うのは、フィーアリーゼ本人も、セドリックも同じだったという訳だ。


 関与を疑われるなんて、奴隷の彼女は生きた心地がしなかっただろう。だが、彼女は「少し驚いたけどあなたが無事で良かったですわ」と気遣いまで見せてくれた。


「えっと……セシリアさん……だったかしら?」

「ええ、そうですわ」

「なら、セシリアさん。看病してくれてありがとう」

「お礼なら、セドリック様に言って上げてください。あなたの看病をするようにとわたくしに命じたのはセドリック様ですから」


 フィーアリーゼは、自分が倒れたとき、セドリックも側にいたことを思いだした。そして、彼が非合法な奴隷商かもしれないと疑ったことも思い出す。

 だが、フィーアリーゼが倒れたのは、セドリックに毒を盛られたわけではなかった。


「さっき、あなたは自分が騙されて奴隷になったとか言っていたけど……?」

「あぁ、セドリック様は善良な商人ですわよ」


 セシリアはフィーアリーゼが濁した言葉の意味を正しく読み取ったようで、自分を騙したのはセドリックではないと教えてくれた。

 どうやら、セドリックの件は完全な誤解だったようだ。


「それじゃ、セドリックさんにもお礼を言っておくわ。でも、貴方にもお礼を言わせて。看病してくれたのは、間違いなくあなたなんだから。ありがとうね」


 感謝の気持ちを込めて微笑むと、セシリアは少し複雑そうな顔をした。


「私がなにかおかしなことを言った?」

「いいえ、そうじゃないわ。ただ……」


 どうやら、奴隷になってから、人にこんな風に感謝されたのは初めてだそうだ。逆に、奴隷になる以前はお礼を言われるのが普通であまり意識していなかったらしい。


「そういえば、ずいぶんと育ちがよさそうよね。あなたは一体……」

「――彼女はいまは亡き隣国のお姫様なんだ」


 答えは背後から。

 セドリックが馬車の荷台に上がってくるところだった。

 さきほど悪人かと疑ったフィーアリーゼは気まずい思いをしたのだが、セドリックは気にした風もなく荷台に上がり、近くに腰を下ろした。


「セドリック様。あなたの所有する馬車とはいえ、いまはフィーアリーゼ様が寝ているんですよ? そこにノックもなしに入ってくるのはいささか失礼ではありませんか?」

「……む。たしかにその通りだな。すまない、フィーアリーゼ嬢」

「い、いえ、ただ横になってただけですから気にしないでください。それより、なんだか助けてもらった上に、迷惑までかけたみたいで……すみません」


 慌てて掛け布団をどけて座り、ぺこりと頭を下げる。

 セドリックに直接疑惑をぶつけたわけではないが、疑ったことは紛れもない事実で、フィーアリーゼの内心は罪悪感と気まずさにまみれていた。


「あぁいや、気にする必要はない。それより、緊急時とはいえ勝手に服のポケットを漁らせてもらったことを謝罪する。あぁ、もちろん、それはセシリアにさせたから安心してくれ」

「なにからなにまですみません」


 どうやら気遣われているらしいと察したフィーアリーゼは更に恐縮する。


「いや、本当に気にする必要はない。それより、フィールの実を食べたのが倒れた原因ということで間違いないのか?」

「ええ……そうだと思います。空腹で動けなくなりそうだったので、用心して一つだけ口にしたんですが……見事に毒入りだったみたいですね」

「ああ、あれはな。発酵させてから食べれば大丈夫なんだが、そのままでも味は良いために、毎年食べて倒れる奴が後を絶たないらしい」

「あはは……」


 味に騙されたフィーアリーゼに反論の余地はない。

 もっとも、警戒して一つしか食べなかったおかげで、少し眠っただけで体調が戻ったのだから、素人ながらも警戒したのは無駄ではなかったと言うことだろう。


「ところで、話を戻しますけど、セシリアさんがお姫様だとか言いませんでしたか?」

「亡国のだから元、だな。今はただの奴隷だ」

「そこはせめて、育ちの良い高級な奴隷といってくださいませ」

「どっちにしても奴隷には変わらん」


 セシリアの苦情に、セドリックはすげなく言い放つ。だが、そういったやりとりをすること自体、フィーアリーゼの知る奴隷とはかなり違う。


 彼女が特別なのか、現代の奴隷が総じてこうなのか、元お姫様であることを考えたら、おそらくは前者なのだろう。

 奴隷なのに妙に堂々としているという印象だ。


「それにしても、元お姫様がどうして奴隷になんてなったんですか?」

「よく聞いてくれましたね。私は騙されたのです」

「おい、紛らわしい言い方をするな」


 そのままの意味に取ると、セシリアがセドリックに騙されたように聞こえるが、セシリアは少し笑っているし、セドリックも不満気だが焦っているようには見えない。


「……誰に騙されたの? あ、敬語を使った方が良いのかな?」

「いまの私はただの奴隷ですから気にしないでください。ちなみに、私を騙したのは私の腹違いの弟ですわ」


 なにやらドロドロとした話っぽい。

 そんな風に思いながら聞いた詳細は、想像通りにドロドロとしていた。


 この国の隣にあるローゼン公国は小国でありながらも産業が発展していて、そこそこ豊かな国として栄えていたそうだ。

 だが、それで自分達が強いと勘違いした一派が、この国のアルヴィス領に戦争を仕掛けて領地を切り取ることを提案した。


 当時の国王と、王位継承権第二位のセシリアはそれに反対という立場を取っていたのだが、強行派は王位継承権第一位の弟を担ぎ上げて国王を暗殺。

 王位を簒奪してセシリアを幽閉したそうだ。


 そして、アルヴィス領に攻め入ったローゼン公国はあっさりと返り討ちにあい、逆にわずか一週間で城を制圧されて、王族は連座で処刑されたそうだ。


「……よく、それだけの戦力差で攻めようなんて思ったね」

「本当にそのとおりですわね」


 セシリアが恥じるように目を伏せた。


「でも、王族は連座で処刑されたって言ったけど、セシリアも王族なのよね?」

「わたくしはアルヴィス領との友好を望んでいたことと、当時は幽閉されていたおかげで連座を免れたのです。まあ……その代わりに奴隷堕ちしたんですけどね」


 セシリアは冗談っぽく言っているが、まったくもって笑えない。

 そもそもの成り行きが、フィーアリーゼにとっては他人事じゃない。自分と同じように近しい者に騙されて、そのおかげで生き残った。


 奴隷堕ちという結末は、フィーアリーゼにとっても在ったかもしれない未来だ。


「……大変だったんだね」

「そうですね。でも、本当に大変なのはまだまだこれからです。高貴な血筋なんて言えば聞こえは良いですけど、しょせんは亡国のお姫様。わたくしに価値を求めるなんて……」


 瞳を伏せるセシリアの態度から、おおよそを察した。

 礼儀作法は知っていても、家事一つ出来るかどうかも怪しい。政治的なことに関わらせるのは危険だし、彼女を買い求める者の用途は限られてくる。


「そういうことでフィーアリーゼ様、わたくしを買ってくださいませんか?」

「………………はい?」


 あまりに唐突で、なにを言われているかまったく理解できなかった。

 だが、パチクリとまばたくフィーアリーゼに向かって、セシリアはもう一度、ことさら丁寧な口調で、自分を買って欲しいと願い出た。


「……私が、セシリアさんを、買うの? なんで?」

「逆にお尋ねしますが、フィーアリーゼ様はわたくしが欲しくありませんか?」


 心を読まれているようで少しだけどきっとする。

 たしかに、フィーアリーゼは絶対に自分を裏切らない情報源を求めている。だから、契約で縛れる奴隷の購入は決して悪い手ではないだろう。


「欲しくないとは言わないけど、残念ながらいまの私は無一文、なんだよね」

「む、無一文、なんですか?」


 セシリアだけではなく、セドリックまでもが目を見開いた。

 フィーアリーゼがとても高価な服、実際にはただの制服だが――を着ていることから、お金持ちだと思われていたようだ。


「そう、無一文。しかも食料もなくて、フィールの実を食べて倒れるような状況なの。だから残念だけど、あなたを買うという選択肢は最初からないのよ」

「そんな……」


 セシリアがきゅっと自分の手を握り締めた。出来れば助けてあげたいとは思うフィーアリーゼだが、無い袖は振れない。

 これ以上彼女を傷付けないように、事態を収拾して欲しいとセドリックに視線を向けた。


「ふむ……フィーアリーゼ嬢、少し魔導具を見せてもらえないだろうか?」

「え? 別に……構いませんけど」


 フィーアリーゼは事態の収拾を望んで視線を向けたのであって、セシリアを無視して世間話をしようとしたわけじゃない。

 奴隷は放置なのかと戸惑いながら、魔導具の腕輪を手渡した。


「ふむ……魔導具としても素晴らしかったが、装飾も見事だな。フィーアリーゼ嬢、少し鑑定させてもらっても良いか?」

「構いませんけど、それは――」


 セドリックが魔導具らしき水晶を取り出したのを見て待ったを掛ける。だが、セドリックは許可をもらった瞬間に魔導具を使い――バチッと弾かれて水晶と腕輪を取り落とした。


 腕輪の方は床に落としたくらいでは傷一つ付かないが、水晶の方はその限りではない。自分の不用意な発言で壊していたらと、フィーアリーゼは冷や汗ものである。


「す、すまない!」

「いえ、私こそ、鑑定を弾くと言いそびれてしまったのですみません。それに、腕輪は落としたくらいでは傷一つ付かないので問題ありません。……水晶も無事ですね」


 拾い上げて確認する。落としたことでは壊れていないが、元から壊れていると言っても過言じゃないほど不完全な魔法陣が刻み込まれている。

 これでは、表面的な能力を読み取るのが精一杯だろう。


 だが、さっきの反省を生かして手は加えない。その代わり、自分の魔導具の魔法陣を書き換えて、表面的な鑑定は通すように設定した。


「はい、これでもう一度鑑定してみてください」

「……大丈夫なのか?」


 差し出した魔導具を、セドリックが警戒した面持ちで眺める。

 安心させようと、フィーアリーゼが腕輪の設定を変えたので大丈夫だと補足すると、なぜか信じられないというような反応で、ますます警戒されてしまった。


「フィーアリーゼ嬢は、この魔導具の設定を弄ったのか?」

「ええ。といっても鑑定を弾く部分だけです。使用時の効果は変えてないし、偽装もしてないので安心してくださいね」


 フィーアリーゼの言葉にセドリックは生唾を飲み込んだ。

 その言葉の本質――つまりは効果を変えることも、偽装することも出来るという意味を正しく読み取ったからに他ならないのだが……フィーアリーゼは気付かない。

 自分が頼りなく見えるから、信用されていないのだと思っていた。


 セドリックは慎重に鑑定を使用して鑑定が通ったことに驚き、その内容に息を呑んだ。


「これは……素晴らしいな。ここまでの効果があるとは思わなかった」


 感心したセドリックが、腕輪を差し出してくる。アリアとの合作が評価されたことが嬉しいフィーアリーゼはそれを笑顔で受け取った。


「……うぅむ。フィーアリーゼ嬢、かなりぶしつけな願いだが、その魔導具を譲ってもらうわけにはいかないだろうか?」

「これを……ですか?」

「そうだ。もしそれを譲ってくれるのなら、対価はセシリアと引き換えでも構わない」

「――は?」


 意味不明なことを言われて、思わず間の抜けた声を上げる。


 試作品。デバイスの性能も考えれば、それなりに高級品である。セドリックの反応を見ても、この時代では更に価値が上がっているだろう。

 ただし、デバイスの性能は実物を見ればコピーできるという代物じゃない。いくらなんでも、元お姫様を購入できるような値段はつかないはずだ。


「足りないか。ならばセシリアとは別に、街についたら当面の拠点と食料を提供するという条件を追加しよう。そうだな……半年分でどうだ?」


(増えたっ!?)


 魔導具一つにどうしてそんな高値を付けるのかと困惑していたら、対価を追加されてしまった。一体どれだけ魔導具の価値が上がっているのかと驚く。


「フィーアリーゼ様、私とセットで、しばらく住む場所にも苦労しなくてすみますわよ。とってもお買い得だと思いませんか?」

「う、うぅん……」


 むしろお買い得すぎて恐いというのが本音。

 半年の生活費がメインの報酬で、元お姫様が二束三文のおまけだったとしたら納得できなくもない値段だが、いくらなんでもお姫様がおまけってことはないだろう。


「フィーアリーゼ嬢、お願いします。もしもわたくしを買って頂けるのなら、誠心誠意貴方にお仕えするとお約束します。だから、どうか……」


 セシリアがお願いしますと頭を下げた。

 そんな姿を見せられずとも、自分と同じような境遇という時点で、セシリアを助けてあげたいという気持ちになっている。


 もし、フィーアリーゼに彼女を買うだけの資金があれば、迷わず頷いていただろう。


「残念だけど、お断りします」


 フィーアリーゼは静かに首を横に振った。


「……わたくしは、お気に召しませんでしたか?」

「うぅん、あなたに非があるわけじゃないよ。他の魔導具だったのなら、私は喜んで取り引きしてた。でも……これはダメ。私にとっては掛け替えのない物だから」

「そう、ですか……」


 言いたいことはいくらでもあるはずなのに、文句の一つも言わずに引き下がった。セシリアの高潔な性格に好意を覚え、そんな彼女を見捨てる自分に罪悪感を抱く。

 だけど、それでも、アリアと一緒に作った思い出の品は手放せない。


「そろそろ戻るね。……それと、看病してくれてありがとう。あなたが、素敵なご主人様に買われることを願ってるわ」


 いたたまれなくなったフィーアリーゼは立ち上がって、馬車の荷台から降りる。

 ――刹那、右腕にパチッと痛みが走った。


(え、いまのはなに?)


 まるで鑑定を弾いたときのような現象。

 だが、フィーアリーゼは鑑定なんて使っていない。まるで腕輪が自らの意思を持って、フィーアリーゼになにかを伝えようとしたかのようだ。


(まさか、アリアが奴隷を買えって言ってる?)


 一瞬そんな考えが浮かんで、すぐにバカらしいと否定した。

 腕輪の魔導具は、あくまで道具でしかない。アリアが心血を注いで作り上げたデバイスではあっても、魂を封じ込めたわけじゃない。

 だから、いまのはただの偶然。魔導具の不具合かなにかだろう。


 だけど――と、フィーアリーゼは考えてしまう。

 たしかに、アリアとの思い出の品は大切で、何物にも代えられない。だけど、もしここにアリアがいたら、どうしていただろう、と。


(そんなの、考えるまでもないわね)


 その結論に至ったフィーアリーゼはクルリと振り返る。そうして荷台を見上げると、セシリアがジッとこちらを見ていた。


「一つ、質問に答えてくれるかしら?」

「ええ、もちろんですわ」

「あなたは、どうして私に買ってもらいたいの?」


 思い浮かべたのは、好色な男に買われたくないからという理由。フィーアリーゼで在る必要がないのなら、アリアとの思い出の品と引き換えには出来ない。


「フィーアリーゼ様が思い浮かべているような理由ももちろんありますわ。でも、一番の理由は、あなたなら私の願いを理解してくれるかもしれないと思ったからですわ」

「……あなたの願い?」


 どういうことかと、フィーアリーゼは続きを促す。


「わたくしはローゼン公国で生まれ育ちました。国が滅んでも、わたくしがお姫様でなくなっても、その事実は変わりません。わたくしは、ローゼン公国の民を守りたいのです」

「……いまは、この国が統治しているんですよね?」


 圧政でも敷いているのかとセドリックに視線を向ける。

 すると、セドリックは少し難しい顔をして、セシリアに向かって現状を話し始めた。


「現在はアルヴィス様が実効支配している。アルヴィス領に攻めてきた関係から、決して平等に扱っているとは言えないが、圧政を敷いているわけではないぞ?」

「もちろん、伺っております。その対応に不満があるわけではありませんわ」


 ローゼン公国の民を守りたいといいながら、いまの統治には不満がないという。ならば、セシリアはなにをしたいのかと、フィーアリーゼは重ねて問い掛ける。


「先ほども言ったとおり、民を守りたいのです」


 ローゼン公国は小さな国であるがゆえに、王族と平民の垣根が非常に低いらしい。ゆえに、セシリアは良く街に顔を出し、平民から姫様と慕われていたそうだ。


「わたくしは姫でなくなってしまったけれど、わたくしを慕ってくれた民達には幸せになって欲しい。わたくしは、そのために出来る限りのことをしたいんです。あなたの下でなら、それが出来る気がするんです。ですから、どうかわたくしを買ってください」


 まっすぐな瞳に射貫かれて、フィーアリーゼはぽかんとする。


 封印されて300年。

 ひとりぼっちになった彼女は、アリアの想いを引き継いで、一人で前に進もうとしていた。


 そんなフィーアリーゼの前に、アリアと同じ志を抱く少女が現れた。しかも、フィーアリーゼとなら、目的が果たせる気がするとまで言ってのけた。


 彼女と共にいけと、アリアがそう言っているような気がした。

 だから――

 アリアの想いを継ぐために、フィーアリーゼはアリアとの思い出を手放そうと決意した。

 

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