7.まだまだ、ティーブレイク(途中)

 ともかく、今、一番の緊急の課題を実行する。席を入れ換えて、シュワノールを、あのノズルの下に座らせる。

 ほどなくして、あの金属製のノズルが、天上から出てくる。

 やった! 茶色い液体が、シュワノールの頭の上に勢いよく飛び出してくる。

 だが、シュワノールは平然として、なにごともなかったかのように、私を見つめ返す。私はびっくり仰天して、さけぶ。

「なに。なによ。なにがあったの?」

「なに言ってるの? 立体映像は、さっき経験したでしょ?」

「立体映像ーっ?」

「そーだよ」

「微妙に、私の物真似をするんじゃないわよ」

「だいたい、私が、自分に、紅茶なんかかけるわけがないでしょ」

「じゃ、なんだって私に、あんな熱いお茶をぶっかけたのよ」

「だって、ひとごとだもん」

「あーのーねー」

「でも、人間って、不思議よねえ。ひとごとだと、どんな辛い苦しみにも、耐えることができるもの」

「そのギャグは、前にもやったわよ」

「そうだったかしら」

 シュワノールは、どこ吹く風と受け流し、自分勝手に話を続ける。

「はるか昔、別の宇宙に、アメリカ合衆国という国があったの」

「なんだか、うさんくさい話ね」

「その国では、ともかく、自分を主張するようにという、教育を行っていたの」

「なんだか、さっきの話と反対ね」

「まさに、そう。ともかく、みんなが自分の考えを主張することに、やっきになっていたの」

「ほー、そうですか、としか言えないわね」

「その結果、みんな主張するだけで、相手の考えや立場を思いやる能力は封じ込められ、結局、見事に知能水準の低い市民ばかりが育っていったわ」

「なんで、そんなバカなことを?」

「一説には、支配している民族が、自分たちばかりに有利な社会の仕組みに、他の民族の人たちが気がつかないようにはかった、と言われているわ」

「そんなこと、あるのかしら」

「ま、なにしろ、はるか昔、別の宇宙だからね」

「便利な表現ね」

「その頃の、その宇宙では、認識が分化していない人間が、よく、選挙で選ばれていたものよ」

「なんで、また?」

「要するに、選挙民が、また、それ以上に認識が分化していなかったのね」

「考えられないわ」

「もちろん、そうでしょうね。そうならないように、この世界では、認識を分化させることに、教育の最大のエネルギーを費やしているからね」

「それで、ほとんどの人が、高い知能水準にあるわけね」

「そう。自分と異なる考えや、立場を理解できるから、みんながいろんな人の存在を受け入れているの。だから、犯罪が、ほとんど起こらないのよ」

「ところで、さっきの話だけど」

「さっきの話って、なに?」

「選挙民が、認識が分化していなかったって話」

「ああ、だから、立候補者も心得たもので、口当たりのいいことばっかり言うのよ」

「理由を示したりは?」

「そんなことは、しないの」

「でも、どうやって実現するか、とかは?」

「だから、そういうことは、なし。みなさんのために、とか、みなさんにとって一番いいように、とか、そういうことしか言わないの」

「それじゃ、誰も投票しないじゃない」

「さっき言ったでしょ、選挙民の認識が、分化していないって 」

「そうすると、どうなるの?」

「みんな、認識が分化していないから、自分の認識以外の認識があるとは、思わないのね。『一番よくなるように』と言われると、自分にとって一番よくなるって、単純に思っちゃうのよね」

「だって、


(まだ、続きます。)

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セブン・タワー・シティはおおあわて(旧) 凹田 練造 @hekota

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