鏡なんて何よ

定食亭定吉

1

 のぞみは高校一年。性格は内向的で、ルックスも良くなく、太っている。しかし❗高校生になり、鏡を見ることが多くなる。彼女なりに過去を振り切ったようだ。夜は明け始める。薄暗い空が明るくなり始める。ロマンを感じる、のぞみ。窓を開け、換気を始める。無風だった。

 同じ中学校のメンツが一人も進学しない高校は、自宅からは遠く、朝六時に起床し、朝七時には出発しなければ余裕はない。一時間で準備しなければいけない。しかし、同じ中学の生徒とは違う高校へ進学したので苦でない。

 一通り仕度を終えて、自宅を出発する前に再度、鏡を覗き見る。一重の目に満足しないのぞみ。そして、肥満体型。先ずは減量をしたい。

 朝七時となり自宅を出発するのぞみ。まだ通学路の景色を楽しむ余裕などない。最寄り駅から高校最寄り駅まで、電車利用する。ディーゼル車両なためか、運転席にサイドミラーが付いていた。のぞみは線路を走るのに、サイドミラーの意義が理解不能だった。そのサイドミラーで顔をチェック。自分の顔をチェックした。

 ディーゼルカーに乗り込む。たまたま近くに着席した女子高校生が読んでいた雑誌が気になり、横目でチラリする。女子高校生が読みそうなファッション雑誌だった。〈読者モデル募集〉という欄を見た。随時募集とあった。それに謝礼もある。応募する事にしたのぞみ。自然と登校が楽しくなる。

〈帰宅後〉

 夕方、帰宅したのぞみ。いつものように自分の部屋へ直行。

 早速、ポラロイドカメラで自撮りする。ノーメイクで精一杯のいい顔をした。自信はなかったが、勢いで郵送作業を済ませる。後は投函するのみ。しかし、自分の容姿に満足するのはいつだろうか。

 鏡を見る程、コンプレックスで悲しくなる。それを誤魔化すため、取り合えず学校の課題をする事にした。そんなに難しくはなかった。今時、わら半紙のプリントされた現代文の課題。小説の人物の性格を想像してみよう!とあった。〈きっと、私のように友達もいなく、人間関係で苦しんでいたのでしょう

〉と記入した。正解がない現代文はのぞみは好きだ。

(約一ヶ月後)

 帰宅してポストをのぞく。のぞみ宛ての信書が届く。応募した読者モデルの雑誌社から粗品の謝礼と、のぞみが掲載された雑誌のサンプルだった。サンプルを見る。頑張る素っぴんさんという事で、特別に掲載されたのだ。何とも言えぬのぞみ。鏡を覗き込んで見て、出た答え。挑戦すれば何か変化があると知れた。今までに他人から心ない言葉を浴びせられ、自信を失いがちだったが、そんなものは根拠なきものと気付いた。角度を変えれば、別の写り方をする鏡。これに囚われながら、根拠なく答えない美しさを追求するのぞみ。高校デビューという言葉がある通り、それを飾ったのぞみ。やや自信が付き始める。勢いに乗って、次はダイエットする事を決心した。善は急げ。早速、ジャージに着替え、ジョギングに出る。

 まずは準備運動。五分ぐらい入念にし、走り始める事になった。

「あのさー」

どこからか声がする。こんな所に来るよそ者はいないと思うのぞみ。

「はい?」

記憶があるような人物でなかった。

「あの、同じ中学だった藤川だけど」

「えっ?ごめんなさい。わからないです」

ほとんど中学校には登校していなかったので、記憶はない。

「付き合って下さい❗」

「。。。」

何を言われているのか理解出来ないのぞみ。

「あなた、自分の顔を鏡で見たら?あなたみたいなイケメン、私みたいな不細工では」

「いや、あなたみたいな人が好きです❗」

豊満な女子が好きな藤川。

「だったら、私が痩せたらね」

顔を曇らせる藤川。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鏡なんて何よ 定食亭定吉 @TeisyokuteiSadakichi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ