洋楽(M~N)

Marvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)

70年代ソウルの代表格とも言える存在。個人的には本当に大好きなアーティストで、アルバムも何回聴いたか分からないのだが、困ったことにあまり語ることがない。というのも、あまりにもまっとうに良い音楽ばかり作っているので、「ここがいい」ということを説明しづらいのだ。楽曲のクオリティも良いし、それを支えるミュージシャン達も調べれば名うてのツワモノ揃い。そりゃ凄いアルバムが出来るよな。まぁ、強いて特徴を上げるとしたら「どちらかと言うとゆったりとしたメロディと演奏に、深くて染み渡るようなシャウトしないボーカルが乗っかる」とかかしら。でもきっと、にわかの俺なんかの言葉よりも、実際に聴いてみたほうがいい。名盤「ホワッツ・ゴーイン・オン」の1曲目を聴いて何かを感じたら、それは貴方が彼に惹かれたということだ。音楽との出会いは縁みたいなものだし、それでいいと思う。


Massive Attack(マッシヴ・アタック)

以前のチャプターで述べた「トリップホップ」の代表格。しかしインストゥルメンタルも多かったDJShadowと違い、こちらは比較的ヴォーカルをフィーチャーしているうえ、音作りもよりドープで重々しい。そこそこラップもしているので、「熱くならない」という点を除いては意外とヒップホップとして聴けるかもしれない。だが、やはり暗い。そしてどこまでもヘヴィ。聴けば聴くほど、その作り込まれた世界に呑み込まれていくようだ。Cocteau Twinsのエリザベス・フレイザーをフィーチャーした楽曲が収録され、ロック色の強い3rdアルバム「メザニーン」が初聴きにはオススメかも。というか俺が3rdまでしか持ってない。半端でごめん!


My Bloody Valentine(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)

いやバンド名かっこよすぎない? と最初は思ったものだった。言わずと知れたシューゲイザーの代表グループ。彼らを特徴づけるのは、とにかく圧倒的な轟音につぐ轟音。そして狭間で囁かれる淡いボーカル。尋常ではない音の厚みがいきなり襲いかかり、何杯も酒を浴びたような酩酊感を起こさせる。現実と夢の境目が分からなくなり、いつしかその狂気じみたギターの重奏に美しさを感じるようになっていく。とにかく細かい説明はいらない。爆音で聴け、それからぶっとべ。2ndアルバム「ラブレス」を最初から最後まで聴き通したら――宇宙が待ってるぞ。


Nick Drake(ニック・ドレイク)

英国の生んだ孤高のシンガー・ソングライター。僅か三枚のアルバムを遺して早逝。しかしその音楽は生き続けている――そんなメランコリックな前置きをしてしまいそうになるほど、彼の創る音楽は内省的で繊細で、圧倒的な孤独に満ちている。アコースティックギターの爪弾きと、僅かなパーカッションやピアノだけで成立するシンプルイズベストな世界。激しさとは無縁の音楽だが、そこには世代を超えて通じるなにかがある、ような気がする。落ち込んだ時にそっと寄り添ってくれる――彼の音楽とは、俺にとってはそんな感じ。だから俺は彼のアルバムを夜に聴く。悲しみと絶望の中、ほんの僅かに差し込む希望――それがどうしようもなく弱い俺を癒やしてくれる。ああ、またポエムになっちまった。いや、でもほんとにそんな感じなんです。沁みますよ。


Nirvana(ニルヴァーナ)

もう説明が要るのか!? っつーぐらい超有名ロックバンドですわな。スメルズライク以下略ですよ。ギターでドカーン!! 世の中クソッタレ、そんな俺もクソッタレ!! Aメロで静かに、サビで爆発!! もう、どれだけの洋楽にわかの人間の心を破壊して、永遠に修復不可能にしてしまったか。「グランジ」で括られるバンドは数あれど、ここまでの普遍性を獲得したグループはそうはないだろう(カートは嬉しくないかもしれないが)。だって、滅茶苦茶ポップなんだもん。この手の音楽に似つかわしくないほど分かりやすくて歌いやすい楽曲がズラリ。カラオケで歌うよな? 俺はたまに歌う。モテないダメ男達が更に痛々しい男へと変化するのに必要なロックバンド、それが彼らだ。そう、それでいい。その先に行くと――3rdアルバムにしてラストアルバムの世界に突っ込んでいってしまう。そこで描かれるのは圧倒的な空虚と自己嫌悪。その先で……カート・コバーンは自殺した。ニルヴァーナはいいバンドだ。かっこいい曲を沢山作った。ひとまずは、そこで留めておいたほうが良い。カートの精神ギリギリの状態から吐き出された楽曲群が、クールでかっこいいだけでなく、実は暗く、美しいということに気付いてしまったら、きっと彼の世界に踏み込んでしまう。それだけはやっちゃいけない。少なくとも、俺達は灰になるより、弱々しい炎のまま生き続けるのを選んだほうが良い。だって、そうしなきゃ、音楽を聴き続けられないじゃないか。

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