第14話 歩み
それから4日目も終わり、5日目の夕食を食べている時それは起こった。それは、数人の兵士による暴動だった。
兵士達は剣を持ち、隊長を威嚇するようになにかを叫んでいる。それを周りの兵士も隊長もただ聞いてるだけだった。
「俺達はもう我慢できない! 今すぐ近くの街に寄るんだ!」
「この程度も我慢できないのか。 お前らは教育し直す必要があるな」
そう言いながら隊長は歩みを進める。
「近づくな! それ以上近づいたら斬る!」
「偶にいるんだ。 学校というぬるい環境から我が45部隊に配属され、その厳しい環境で自分の立場を弁えずに私に逆らう者が。 残り2、3日だというのにお前らは人生を棒に振ったな!」
「うるさい! 俺を含めたここにいるほとんどの兵士は怪我をしているんだ! それが悪化したらどう責任を取るつもりだ!」
「口の聞き方がなってないな! 悪化したらどうするだと? それはお前らが2日目にスピードを上げることを選んだからだろうが!」
その怒声は鳴り響く。森の奥で反響し戻ってきているようだった。たとえ自分に言われていないと分かっていても体が震えてしまう。
「知るか! だいたいお前がスピードを上げるか、長く歩くか言ったんだろ!」
「救いようがないな。 5人程度なら問題ないな」
隊長は深く息を吸う。
「今からお前達に初任務をやる! 敵勢力剣士が5人! 既に我らが陣地に侵入し、包囲されている!我が祖国に仇なす敵を打ち滅ぼすべく行動を開始しろ!」
隊長のその言葉に兵士達は戸惑う。どういうことだ、何を言ってるんだなど様々な疑問が頭に思い浮かんでいた。
「お、俺達を殺すだと……。 隊長何を言っ--」
「私はもうお前達の隊長ではない。 もう1度言う! お前達がやらなければ仲間を失い、家族を失い、国を失う。 そうなりたくなければ速やかに排除せよ!」
ついさっきまで仲間だった者達を手に持っている剣で斬ることはできない。誰しもがそう思っていた。1人を除いて……。
それは、集まっている兵士達の隙間を掻き分けてきた。鎧はつけておらず、剣を持ちそのキレイな金髪をしならせながら、敵兵の前に立つ。それは、見た目は女神のように美しかった。しかし、次の瞬間鎧を着ていない敵兵士は首に剣が食い込んだ。敵兵が訳もわからず突っ立っている間に剣を引き抜く。そこから鮮血が勢いよく吹き出る。
そして、2人、3人と同じように殺していったところで4人目の敵は反撃してくる。その剣は重く、受ければ力負けするだろうと思った。だから、剣を上手く受け流し、そのまま喉に突きを入れる。貫通はしなかったが殺すのには十分な威力だったようで、敵兵の剣が力なく落ちる。
最後の敵兵はそれを見て、恐怖で尻餅をつく。4人分の返り血を浴びたアリアはすぐに剣を引き抜き、ゆっくりと最後の敵に近づいていく。
「た、助けてくれ……。 まだ、死にたくない……」
その顔は涙で濡れぐしゃぐしゃである。そんな声を無視し、近づくと首を刈り取るように剣を入れる。残念ながら首が飛ぶことはなかったが、それによって最後の敵は絶命した。その行いを終えるまで1分もかからなかった。こうして、アリアの非情さを兵士達は知ることになった。
その後、隊長に命令され死体を片付ける。中には初めて死体を見たものもいたようで嘔吐していた。そんな中ルカスは少し考え事をしていた。
(新兵達の資料を見た時、印象的だったから覚えている。 アリア・ラ・エニエスタ、学校で1人殺しておきながらもそれは監督兵士の不注意ということで処理された危険な存在。 問題は監督兵士が訓練として模擬戦で仲間を殺すことまで許可した時、僅か10秒足らずで相手を殺したことか)
それは、許可されたからやったのか。それとも今まで抑えていたものを解放したのかはわからない。ただ、ルカスは1つだけ言えることがある。それは、彼女が危険極まりないと言うことである。
(私が新兵の名前を覚えることになるとは思わなかったな。 今回のこともそうだが、しっかりと監視しとかなければな)
それと同時に仲間だとしても、敵と言われて行動できなかった他の兵士も鍛え上げる必要があると、更に新たな課題が浮かび上がってきた。
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