第13話 爆発

3日目はあれから何も起こらず、同じような1日が過ぎた。怪我をしている人が増えたせいか、全体の歩くスピードは遅くなっていた。それに謝りもせずにいるやつらが腹立たしかった。隣にいるイヴも同じ気持ちのようだが、今は協力し合うしかないと言われたので、ここはグッと我慢した。


兵士達の不満が溜まっていく中4日目はそれらを小声で言ってるものが数人見受けられたが、特に大きなことはなく休憩の時間を迎えた。


「なあ、アリア」


隣で座って休憩しているイヴが話しかけてくる。


「どうしたんですか?」


「この状況どう思う?」


「どうですか…… そうですね、私の意見としましてはもうすぐルミサンスに着くと思われますので特に大丈夫だと思います」


「そうか……」


アリアは兵士達が街に着かないことに不満があると思っていた。現にアリアを含む何人かの兵士はそれに不満を抱えていた。


(大丈夫、きっと街に着けばみんな落ち着くはず。 だから、もう少しの辛抱)


最初にあった不安は今やもうすぐ到着して辛い移動を終わることができると考えると逆にやる気が出てくる。きっと他の人もそうに違いないと思い込んでいた。


「アリア、1つだけいいか?」


「どうしたんですか?」


「今からあたしから離れるなよ」


その言葉に少し驚き、照れてしまう。イヴが考えていることが全く別のこととは知らずに。アリアは顔を伏せて口を開く。


「はい……」


(アリアはこれでよし。 後はフォンティル達だが、あいつらは4人で集まってるみたいだから大丈夫だな)


「イヴさん」


「どうした?」


「実は私思うことがあるんです」


「なんだ言ってみろ」


「もしも、ルミサンスに着いたとして私達に安らぎは待っているのでしょうか? もしかすると、このまま使い古されて終わるのでしょうか? 私は最近そればっかり考えてしまって……」


「そうだな、あたしもはっきりとは言えないが、それはアリアによると思うんだ」


「私ですか?」


イヴはアリアの目をしっかり見ながら、強く頷く。


「そうだ、お前は優しすぎる。 全てを救うことはできない。 だから、選択するんだ。 お前がどちらが大切かを」


「たしかにそうかもしれません。 私は仲間というものがいるだけでこんなに心強いとは思いませんでした。 だからこそ、できれば全員救いたいんですが、それが不可能な事だと心の何処かで分かっていました」


「兵士になるからには覚悟しなければならない。 もしもアリアがこの先も使い古されて終わりたくなかったら、仲間にも情けをかけるな。 そうすれば、いつかはお前が求める安らぎにたどり着くはずだ」


「 でも、私にできるのでしょうか?」


「それは、お前次第だ。 はっきり言ってあたしだって仲間を裏切ったりすることは嫌さ。 だけど、そうしないといけないこともあるってるのはわかっている。 だから、救える仲間は救って、無理な時は見捨てると決めているんだ」


その言葉はイヴの本心だろう。全ては救えなくても目の前の救える命は救いたい。そういう決意が感じられる。だからこそ、本来失うはずのなかった命を平気で見捨てる王国のやり方に嫌悪感を示しているのだろう。


「イヴさん、相談を聞いてくれてありがとうございます」


「別にいいってことよ。 もし、また何かあったらあたしに相談しな」


「はい」


その問いに笑顔で答える。アリアの心の中で詰まっていたものが晴れた気がする。簡単な話だった。イヴ、フォンティル、ナイラルク、ゲルネルツ、エリアと母だけを守ればいい。他はいらないんだ。なんだか感情が解かれた代わりに何かが鎖で封じ込められた気がした。


(それに、私が今も兵士をやっていけるのは友達がいるからなんだ)


そうして休憩の時間も終わり再び兵士達は進みだす。それぞれの思いを胸に宿しながら……















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