第10話 出現

休憩が終わり移動の時間になった。当初の予定では5人だったが、休憩終了間際にフォンティルが話しかけてきて加わることとなり計6人になっていた。たとえ、アリアの為だとしてもそれで協力してくれるのだから悪いやつではないのだろう。


前を見ると少しずつだが、距離が開いていくのがわかった。少し考えれば早く歩くよりも今の速度で長い時間歩く方が後々楽になるのにバカな奴らだと思った。後ろを見るとやはり不安は隠しきれない表情をしていた。


「あたし達はゆっくり行けばいいさ。 隊長に多少怒られるだろうが、歩けなくなるよりはマシだ」


「そうです。 イヴさんが言ったように皆さんで頑張れば大丈夫なので頑張りましょう。 もし、歩くのが厳しくなったら言ってくださいね。 私が肩を貸します」


「ありがとうアリアさん、ローランさん、俺達を助けてくれて。 もしあのままだったら俺達は死んでいたかもしれない。 本当にありがとう」


「照れくせぇ。あたし達が助けたいからやったことだ。 もし文句があるなら泣くまで言ってやる。だから、今はあたし達に助けられとけ」


「ありがとう」


「そういえばローラン下兵とアリア下兵は女性と見受けられる。 どうしていつ死ぬかもわからない兵士になったのかを是非聞かせてもらいたい」


「私も聞きたい」


ゲルネルツとエリアから提案が出る。イヴは乗り気だが、アリアは正直言いたくはなかった。でも、1つだけならいいと思いその提案に乗る。


「俺もその提案に乗るぜ。 エルドナフはどうする?」


「ぼ、僕ですか? 僕も大丈夫です」


フォンティルは恥ずかしそうにしながら答える。ナイラルクがよしと声を上げる。それを見てイヴは口を開く。


「あたしとアリアは話してやろう。 ただし! 条件がある」


さっきまで笑顔だった男どもは嫌な予感がして顔が青ざめてく。


「心配する必要はねぇ。 お前らはあたしがする質問に答えればいい。 なぁに、簡単な質問さ」


イヴが少し興奮しているのを見てかなりエグい質問をすることはわかっていた。アリアは心の中で可哀想にと哀れむ。

見ると、男達は4人で集まりイヴとアリアには聞こえないようになにかを話していた。


「どうする?」


最初にナイラルクが口を開く。


「私は別に構いません」


「私もです」


2人の答えに自分とは意見が違ったのか少し不機嫌な様子になる。


「僕はやめておいた方がいいと思います」


フォンティルの意外な言葉にナイラルク含め3人が驚きの表情を見せる。


「フォンティルならやるって言うと思ったけど、意外だな。 なぜ、そう思ったんだ?」


「単純にローランさんの質問が優しいとは思えないからです」


「私もそう思いましたが、ここはリスクを負ってでも聞くべきじゃないですか?」


「私もシュノットル下兵に賛成であります。 個人的にアリア下兵がどのような理由で兵士になったのか聞きたい所存であります」


「つまり、情報を1つでも多く手に入れてアリアさんに近づきたいんだな」


ナイラルクが面白おかしく言うと、ゲルネルツは慌てる素振りを見せる。


「違いますぞ。 ナイラルク下兵。 私はただ仲間の情報を1つでも多く集めたいだけですぞ」


「はいはい、そういうことにしといてやるよ」


4人の男達は笑う。今までこんなに笑ったことはない。 兵士としての役割を果たさなければならないという重圧と戦ってきた。 しかし、今は沢山の仲間から見捨てられ逆に吹っ切れてしまった。その笑い声はイヴにまで聞こえていたようで近づいてくる。


「おいおい、楽しそうじゃねぇか。 あたしらが兵士になった理由はもういいってことでいいのかい?」


男達は決めていた。決まらないなら誰か1人に決めてもらおうと。


「フォンティル頼んだ」


ナイラルクが指名する。


「え、僕ですか⁉︎」


「頼みましたぞ。 エルドナフ下兵」


「お願いします」


続いて2人もフォンティルを指名する。


「わ、わかりました」


「それでどうするんだ? フォンティル」


「僕はやめよーー」


「ああ、そうそう。 アリアはどんなことでも答えてくれる奴が好きらしいぜ」


その言葉に揺れる。いや、揺れるという表現では収まりきらない。先ほどの決意が嘘のように揺れまくる。そして、無意識に口を開く。


「やります」


その言葉で3人の男達は驚き、イヴは喜びの声をあげる。そして、フォンティルがアリアに恋心を抱いているのをアリア以外のここにいるものは確信した。










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