第8話 出発

新兵達はできるだけ早く出発する為に馬車に大量の荷物を詰め込んでいく。しかし、あまりの荷物の多さに2時間もかかってしまう。


フォンティルは荷物を積み終わったのを確認するとすぐに隊長を呼びに行く。彼自身怒られると思ったが、そこまで怒られることはなく、寧ろ少し褒められた。


隊長が新兵達の元に到着すると1人ずつロングソードを渡される。王国領内で移動をするだけで武装をする意味はアリアには分からなかったが、それを知らない新兵が質問したところ、念のためだと返ってきた。


30を超える馬車には御社と馬2頭を配置し、新兵達は荷物でいっぱいの馬車には乗ることができず、横を綺麗に隊列を作り歩いていく。因みに隊長は1番前の馬車に乗りなにかを叫んでいる。王都の街を正面入り口から出て行った後少し歩き、現在辺り一帯草原だけの場所を歩いている。


(しんどい…… もう5時間は歩いてる感じ…… 休みたい……)


弱音を心の中で吐きながら重い鎧を動かしながら1歩ずつ確実に前に進んでいく。


「アリア大丈夫か?」


疲れているのを見破ったのか隣で歩くイヴが声をかけてくる。


「はい、大丈夫です…… 少ししんどいですが……」


「あたしも同じだ。 こんな風に長距離を鎧を着たまま移動する訓練なんか学校でしなかったのに、急に5日も歩きっぱなしは無いだろ……」


「そうですね。 でも、今はこれに耐えて進むしかないですよ」


そして、静寂が来る。いや、周りの新兵達の荒い息が鎧越しから聞こえてくる。隣のイヴも顔は鎧で見えないが、かなりしんどそうだ。


「なあ、アリア」


「どうしたの?」


「もしあたしを含め新兵達が倒れたら絶対助けるんじゃないよ」


「ごめんさい、イヴさん。 それは聞けないです。 ここにいるのは性別が違えど今は仲間ですから私は助けます。 例えそれで感謝されなくても……」


「それがあんたの本心なんだな?」


「はい」


「わかった、なら私も助けるよ」


「そんな私が勝手にやることなんで大丈夫です」


「別にそういう訳じゃねぇ。 常識で言えば付いて来れない奴は置いて行くのが王国の兵士が取るべき行動なんだけど、私はそれが気にくわないのさ。 だから、これは私がやることなんだからきにする必要はねぇ」


「イヴさん……」


仲間というのは大切だ。1人いるだけでも戦い方が変わる。それは矛となり、時には盾となる大切な存在だ。


「そういえば第2訓練所で何人かの男の兵士に声をかけられてたな?」


「はい、6人ぐらいだったと思います」


「かぁ〜 美人は羨ましいね。 それで、どう思ったんだい?」


「どうと言われましても…… 特には……」


「やっぱあんたは男に興味はないのかい?」


「興味ですか…… 友達としてなら大丈夫ですけど、恋人となると全くです」


「そうかい、まあそれは仕方ない。 でも、その男達の顔は覚えていた方がいいよ」


「どうしてですか?」


「兵士というのは女が歓迎される場所じゃない。でも、話しかけてきたやつらは少なくともあたし達を対等に見てくれてる。 実際事が起きてからじゃ遅いからな。だから、こういう仲間は多ければいい多いほどいいというわけさ」


「なんとなくですがわかりました」


アリアは記憶のページにまた1枚刻み込む。実際兵士になってから学ぶことは多い。 この世界は剣と魔法を使った戦争が起こっていること。 相手は魔物かと思ったら人間で、魔物と呼ばれる生物はいないこと。 そして、自分の国が破滅へと着々と進んでいること。


そのほかにもあるが、この世界は本で読んだ通りにはいかない。だから、1つでも多くの知識や技術を身につけて生き残らなければならない。自分を育ててくれた母のためにも……


息が乱れながらも歩き続け、休憩ができたのは約6時間後であり、距離にして約19kmであった。











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