3月18日──点字ブロック

 仕事中、突然目が見えなくなった。


「うわっ、目が!?」

 部長の声だ。

「えっ、停電!?」

 同僚のK子だ。

 盲人になったのは俺だけではない。

 あちこちから同様の声が聞こえ始めた事から、何らかの理由で社にいる全員の目が見えなくなったらしい。

「とりあえず外に出て助けを呼んできます!」

 俺はゆっくりと廊下に出た。

 足裏に何かゴツゴツしたものがあった。

 手で触ると、丸いドットとライン状の凹凸があった。

「点字ブロック?」

 そう、これは明らかに点字ブロックだが、社の廊下にそんな物があるはずはない。

 とはいえ、この状況では他に頼る物はない。

 俺は点字ブロックの指示に従い、廊下を歩き階段を下り、ビルの外へ出た。


「誰か助けてぇ!」

 大声で叫んでも返事はない。

 ビルを囲むように丸いドットの合図が触れる。

 異様な強風が下方から吹いて来るのを感じ、俺は点字ブロックの向こう側に行くことができずにいた──。



 ◉3月18日は「点字ブロックの日」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る