3月15日──赤色申告

 今年も青色申告の締め切り日が迫ってきた。

 なのにほとんど簿記をやってない!

「ああ、これじゃ提出は無理ですよ」

 税理士のおじさんも匙を投げた。

「ふぇえ、そこをどうにか!」

 年収も結構あるので、白色だと色々うるさいのだ。

「うーん、では赤色申告でもやりますかネ」

 赤色申告?


 別室に通されると、真っ赤な頭巾を被った老婆が腰掛けていた。

「少し痛い思いをするが、ええかね?」

 もう腹式呼吸をやってるヒマはない。

「よく分からないけど、お願いするわ!」

 老婆は申告書に、魔法陣らしき模様を描いた。そしてあたしの手を取り、その模様の上に重ねた。

「ギィヤァァーーーーーーッ!」

 あまりの苦痛に思わず悲鳴を上げたが、目を開けると書類は完全に出来上がっていた。


 ふう、これでひと安心と思ってたら、何だかあたしの年収、すごく減ってるような気がする!?

「この技は、収入が赤字になってしまうのが欠点なんじゃよ」

 老婆はずずずっとお茶をすすった──。



◉3月15日は「青色申告の締め切り日」

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