3月8日──行列のできる床屋

 ある町に新しくできた床屋さんは、最初の客を待ち詫びて毎日せっせと準備をしていました。


 そこに一人の若者がやってきました。

 床屋さんは「お客さまだ!」と大喜びで迎えますが、「ぼくを雇ってください!」と、頭を下げるのです。

 最初の客が来たと喜んだ床屋さんは、がっかりしました。しかし従業員もいた方が良いと思い、彼を雇うことにしました。

 それからは、毎日せっせと二人で準備をしていましたが、なかなか最初の客はやってきません。

 客の代わりに、一人、また一人と、店で雇って欲しいという若者が訪れます。

 そのたびに従業員は増えてゆき、髪を切る役の床屋さん以外に、頭を洗う役、床を掃除する役、鏡を拭く役、パーマをかける役、肩をもむ役、くるりん棒のスイッチを入れる役⋯⋯等々、あらゆる役割を分担し、数十名の若者が楽しそうに働く床屋になりました。


 今日も「雇って欲しい若者たち」の行列が、どこまでもどこまでも⋯⋯。


◉3月8日は「散髪の日」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る