3月9日──美味しい切手

「ん、何だこれ?」

封筒に切手を貼ろうと糊の部分を舐めていると、爽やかな風味が口中に広がった。

何とも不思議な味。

今度は別の切手を舌の上に乗せてみた。

「また違う味?」

両方とも、海の絵が描かれた美しい切手だったが、絵柄によって味が微妙に違うようだ。


ぼくは手紙を出すために駅前の郵便局に行った。

「あのう、こちらで購入した切手なんですがね、何か不思議な風味というか⋯⋯」

「おや、あれに気が付かれましたか?」

郵便局長らしき中年の男が、にこにこと笑いながら奥から出てきた。

「ええ、爽やかな風味というか」

「あはは、お客さんの買われたのは海のシリーズですね。これは爽快な夏の海をイメージした味付けです!」

切手売り場には、他にも春の草原や冬の山、または秋の野菜などのシリーズが置いてあった。

ぼくは全ての記念切手を購入した。


それ以来、ぼくは手紙を書くのがすっかり愉しみになってしまった──。


◉3月9日は「記念切手記念日」

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