3月4日──校正鬼

 今日から編集部に、新しい校正機を導入する事になった。


「コンチワ! 誤鬼五号イイマス」

 そこには鬼のような形相のロボットが立っていた。

「よ、よろしくお願いします⋯⋯」

 編集部の全員がごくりと喉を鳴らした。

「誤字ッタ人、罰与エマス!」

 肩からずるりと抜き出したトゲトゲの鞭を、ぶうんと振るった。

「アハハ、これから気をつけろよ」

 編集長が軽口を叩いた瞬間、唸りを上げて彼の顔面を打った。

「ぎゃッ!」

「コイツ編集後記デ誤字ッタ」

「ぎゃッ!」

「コノ女、コラムデ誤字ッタ」

「ぎゃッ!」

 と、編集部の皆を片っ端から血祭りに上げ始めた。


 眼鏡っ娘のS子にも鞭を振るおうと近づいたが、

「正式名称は誤鬼ではなく、誤記五号となってますよ」

 S子は冷静にWakipediaの画面を見せた。

「エッ!?」

「あなたの自己紹介も誤字よ」

 ロボットは鞭を巻き付けると、自分の体をゴキゴキと解体し始めた──。


 ◉3月4日「雑誌の日」

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