▶3月1日──ビキニ・デー

 ドカンと音がした。

 近くの幻視力発電所からだ。


「ついに睡爆実験をしやがったな!」

 誰かの怒声が聞こえた。

 幻視波が町中を駆け抜け、人々の身体に作用しだした。

 肉体が締め付けられるような感触。

 俺の胸は三角形の布切れで覆われ、トランクスも窮屈な下着に変わっていた。

「なんじゃこら!?」

 辺りの連中も同じ姿に変わっていた。

 女性を見てようやく気が付いたが、いわゆるビキニの水着のようだ。恥ずかしさのあまり、俺は自分の自宅へと急いだ。


 家に帰って胸の布切れを剥ぎ取ろうと試みるも、全く取れない。下も同じく、有機的に体に張り付いているらしくビクともしない。

「うう、小便がしたくなって来たけど、どうすんだよこれ!?」

 ああ、ヤバい、ヤバい!

 ハサミで水着に切れ目を入れ、トイレに駆け込んだ。


 生温かな下半身の感触で爆睡から目が覚めた。

「なんてこった」

 まさか二十歳にもなって寝小便するとはねぇ⋯⋯。


◉3月1日は「ビキニ・デーの日」

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