2月20日──紅い花

今年も花粉の季節がやってきた。

「ああ、そろそろ鼻がむずむずとしてきたわ」

この星に来てすでに十年が過ぎていたが、いまだにこの花粉症とやらには慣れない。


「昔の地球でも、同じ病名のアレルギー性疾患があったそうだけどねぇ」

他人事のように言う夫を睨みつける。

一緒に移住してきたのに、夫は花粉症になったことがないから辛さが分からないのだろう。とにかくこいつに罹ると、然るべき処置をしないと、鼻はぐじゅぐじゅするし頭もボンヤリするのでとても不愉快なのだ。

「ま、そう怒りなさんなって。あとは任せて庭に行ってきなよ」

「分かったわよ。長引かせても辛いだけだしね」


あたしはお庭に出ると、目を瞑ってこの星の太陽に向かって顔を上げた。

しばらく待つと、あたしのお鼻の真ん中がパカっと開き、大きくて綺麗な紅い花が咲いた。

「あぁ、気持ちいい⋯⋯」

さわさわと風に揺られ、あたしの花粉は大空に飛んでいった──。

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