2月20日──紅い花
今年も花粉の季節がやってきた。
「ああ、そろそろ鼻がむずむずとしてきたわ」
この星に来てすでに十年が過ぎていたが、いまだにこの花粉症とやらには慣れない。
「昔の地球でも、同じ病名のアレルギー性疾患があったそうだけどねぇ」
他人事のように言う夫を睨みつける。
一緒に移住してきたのに、夫は花粉症になったことがないから辛さが分からないのだろう。とにかくこいつに罹ると、然るべき処置をしないと、鼻はぐじゅぐじゅするし頭もボンヤリするのでとても不愉快なのだ。
「ま、そう怒りなさんなって。あとは任せて庭に行ってきなよ」
「分かったわよ。長引かせても辛いだけだしね」
あたしはお庭に出ると、目を瞑ってこの星の太陽に向かって顔を上げた。
しばらく待つと、あたしのお鼻の真ん中がパカっと開き、大きくて綺麗な紅い花が咲いた。
「あぁ、気持ちいい⋯⋯」
さわさわと風に揺られ、あたしの花粉は大空に飛んでいった──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます