2月19日──造花の神

目覚めると、おれは一軒の青い家に住んでいた。


ドアを開けると花畑が広がり、上空には小型の人工太陽が浮かんでいた。この家を中心とした半径百メートルほどの円盤状のお花畑が、宇宙空間を漂っているのだ。

たまにやってくる「観察者」によると、おれのいた地球はすでに宇宙の塵になっているそうで、わずかな情報を元に部分的に再現したという。

なので外に広がるお花畑も、よく見ると全て造花だった。家も木造だと思っていたけど、実はプラスチック製のようだ。

一人で居ると退屈なので「女」を作ってもらった。

話し相手になってくれたがすぐ飽きてしまったので、他にも色々なタイプの人間を作ってもらった。

賑やかなのはよいが、段々と手狭になってきたので「観察者」に指示して世界を増築してもらった。


いまでは少し離れた「街」の会社へ通勤しているのだが、全て作り物だということは、新しい地球の皆さんには言わぬが花だろうね──。


2月19日は天地の日

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