2月21日──猫シエーター

吾輩は猫である。名前はまだ無い。

培養槽から出たばかりだし。

遺伝子の七割が猫のキマイラ交渉人だ。培養中にすべての知識はインプリントされているので、やるべき仕事は心得ている。


「あなたが猫シエーター?」

「あとはお任せを」

吾輩は猫の身体能力で、犯人の部屋へと駆け上がった。部屋には、人質に取られた矢部総理が銃を突き付けられていた。

「きっ、貴様は誰だ!?」

吾輩は緑色の瞳を光らせ、自分の両手を挙げて犯人の前でゆっくりと回転させた。

「ううっ、何だそのぷにぷにの肉球は!?」

「触ってもいいんですよぉ」

強力な眼力で見つめ、さらにくるくると回転速度を上げる。

「はぁはぁ、そんなものに興味はない!」

言葉とは裏腹に男は徐々に近づき、ついに銃を捨てて吾輩の肉球を触ろうとした。

その瞬間、爪をにょきっと露出させて男の顔面をXの字に引き裂いた。

ギャア!


南無阿弥陀仏。

ありがたいありがたい──。


2月21日「夏目漱石の日」

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