2月13日──佐藤くん

「佐藤くんが、タイムマシンに乗って10年前のご両親に会いにいったらしいの」

 クラスメイトの女の子が心配そうに話しかけてきた。

「ええ、マジかよ……」

 この頃、ぼくらのあいだでは「無許可のタイムトラベル」をするのが流行っていた。

 ホントは許可を得て、国の厳重な管理の下でしか過去や未来には行けないんだけど、法を破るのが却ってスリルだった。

 ぼくも一度だけ自分の子どもの頃に行った事があるけど、帰ってきたら飼い犬のジョンの色が「白から焦げ茶」に変わってたのをみて、もう二度とタイムトラベルは止めようと思ったものだ。


「ヘタに両親なんかに会ったりしたら、自分の未来が変わる危険もあるって話だぜ」

 本当に心配しているらしく、彼女の表情は今にも泣き出しそうだ。

「大丈夫かな、鈴木くん……」


◉2月13日「苗字制定記念日」

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