2月10日──硬い蒲団

「いい加減、起きなさい!」

あたしはいつまで経っても起きて来ない息子に、最後通告を言い渡した。

「うーん、もう5分だけぇ」

息子は蒲団の両端をつかんで、すっぽりと顔を引っ込めた。

ジャキン!

「学校、遅れるじゃろがいっ!」

と叫びながら、あたしは20ミリ対戦車ライフルを連射した。

ドガガガガガガッ!

だが、蒲団の外皮には傷ひとつ付かない。

ブゥオオオオオォ!

次に火炎放射器の炎を浴びせるが、焦げ目ひとつ付かない。


「ふふふ、無駄だよママ」

攻殻の中から息子のほくそ笑む声が聞こえた。

「くっ!」

こうなれば最後の手段よ。

あたしは射角38度、南南西の方角へ向け、もはや亀の甲羅と化した硬い蒲団をカタパルトへ乗せた。そして、蒲団の隙間から焼きたてのトーストを滑り込ませると、レバーを引いて射出した。

「行ってらっしゃーい!」

「ファーイ」


息子の蒲団は空高く吹っ飛んでいった⋯⋯蒲団だけに──。


◉2月10日は「ふとんの日」

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