2月9日──少女漫画家 綺羅星子

「はじめまちて、星子でち」

玄関には、2メートルを越す巨大な幼女が立っていた。


「先生、そのかぶりモノ暑いでしょ?」

「せやな」

「脱ぐの手伝いましょか?」

「慣れとる」

 というと器用に背中のジッパーを下し、中からは2メートル近い大男が現れた。この方こそ、少女漫画界に彗星のように現れた天才漫画家の綺羅きら星子ほしこ先生、その人であった。

「イメージ崩れる思てね」

 その関西弁の方が問題な気も。

「では、次回作のご相談をお願いします」

 打ち合わせはつつがなく進み、まさに綺羅星のようなアイデアの数々に私は深い感銘を覚えた。

「月曜までにネーム切っとくさかいにな」

「ありがとうございます」

 といい綺羅邸をあとにした。


 が、少しして手帳を忘れてしまった事に気が付いた。

「先生、忘れ物をしてしまって」

 と先ほどの部屋に戻ると、先生の背中が開かれて、たくさんの幼女たちが次の漫画の作業を分担していた。

 私は溢れる涙を抑える事ができなかった──。


◉2月9日は「漫画の日」

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