2月7日──魚・魚・魚

 俺はギョっとした。

 近くの川で妙な形のフナが釣れた。

「やけに下鰭が発達してるなぁ」

 針を外しているとバタバタと暴れ、その鰭を使って川の中へと走り去ってしまった。

 新種の魚なのだろうか?


 それから数日後。

「おい、あの子……」

 俺はギョっとした。

 庭で遊ぶ俺の子の隣に、フナのような顔の子が居た。

「最近、隣に引っ越してきたF男くんよ」

「何だか魚みたいな顔してないか?」

「あなた、そんな失礼なこと言っちゃダメよ」

 妻は真剣な顔で怒った。

 俺の気のせいなのだろうか?


 日曜の朝。

 また近くの川へ釣りに行こうと、餌のミミズと釣り道具を持って玄関から出ると、隣の家の奥さんが顔を出した。

「おはようございます!」

 俺はギョっとした。

 どう見ても顔がフナだった。

 気を取り直して俺も挨拶を交わしたが、言葉が出てこない。

 そのフナのような目で俺の手の中のミミズをじっと見ると、口をパクパクとさせた──。


◉2月7日は「フナの日」

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