第24話 門番
アデルとレイラと別れてから既に一週間。これまで、魔物との遭遇も無い。今朝もいつもと同じく午前六時に起き、いつもと同じ黒パンと干し肉を朝食として摂った。いつもと同じ。今日も魔獣の森の奥を目指して歩き始める。
それから魔獣の森を進む事半日。
鬱蒼と生い茂る巨木の枝葉によって陽が射さず、相も変わらず辺りは暗い。時おり吹く風も生臭さを感じ、到底爽やかとは言えない程だ。
地面は腐葉土の為にぬかるみ、気を付けて歩かないと足を取られてしまう。
今日も、魔物らしい魔物とも遭遇せず、快適とは程遠いものの順調に進めていた。
「アデルさん達の修行のお陰で苦もなく歩けるわね!」
「確かにね。でも、何度も死にかけたのは思い出したくないね」
「あたしは態と死にかけてたけど、最後の模擬戦だけは本気で死にかけたよ……。まさかあんなスキルを使われるなんて」
修行の辛さを思い出しながら、それでもそれを笑い飛ばして先へと進むレイ一行。
修行の成果はその速度にも表れ、普通の人間であれば足を取られるぬかるみも気にする事無く進んでいた。
そのまま少しだけ進んだ先で、そこだけくり抜いたかの様に陽が射している場所を見付け、昼食がてらの休憩を取る事にした。
そして、レイは気付く。ベロちゃんがいつの間にか居なかった事を。
「そう言えばノアちゃん。……ベロちゃんは?」
「それね。あまりにもしつこく再召喚しろって言うからさ、とりあえず送還したの。それで、今じゃ私たちの方が遥かに強いから再召喚しなくても良いかなって思って、そのままにしてたんだ」
レイが訊ねると、ノアはそう答えた。
確かにそれは一理ある。例え本来の姿で召喚出来たとしても、今じゃこの中の誰よりも弱いのは目に見えている。ならば、態々危険な魔獣の森で再召喚をする事も無いだろうと誰もが納得した。例え本来の姿であろうと、ベロちゃんの強さではこの先は命が幾つあっても足りない。ノアは懸命な判断をした様だ。
だが、今まで散々騒いでいたベロちゃんが居ないと無性に寂しくなる。なんだかんだでムードメーカーとして、パーティに一役買っていたベロちゃんであった。
ベロちゃんが居ない事を少し寂しく感じつつも昼食休憩を終え、レイ達は先へと進んだ。
ここまで、未だ魔物らしい魔物とも遭遇していないので若干の暇を持て余しているが、遭遇しないに越したことはないだろう。……と誰もが思っていた矢先。不意にソレは現れた。
「ねぇハイン? 何だか少し変だとワタイは感じるんさね……」
「リンカちゃんの気のせいじゃない? 僕は何も感じないよ?」
リンカはオークレディ。ようするに魔物だ。種族は違うが、同じ魔物としてその雰囲気に気付いたのだろう。
そして、それはレイにも言えた。レイの種族は魔物よりもより上位の悪魔だ。僅かではあるが、リンカよりも先にソレに気付いていた。
「みんな、気を付けて! 姿は見えないけど、確かに
レイの言葉で暢気にしてたハインも、ベロちゃんを送還した寂しさからボーッとしてたノアも、急いで臨戦態勢を取る。こんな所でも修行の成果は表れている様だ。
ともあれ、レイはストレージから
ムイラはレイの前へと素早く移動し、リンカも淡く光る巨大なバトルアックスを構える。
その後、魔法使いのハインを守る様に円陣を組み、辺りの様子を窺うレイ達。
すると、ソイツは姿を現した。
「な、何!? 地震!?」
「違う!
突然の激しい揺れに地震と勘違いしたノアだが、直ぐ様レイがそれに気付き、注意を促した。
そして、その場から急いで離れるレイ達。
揺れが少ない場所まで急いで移動し、ソイツの姿を確認する。ソイツは地面の下からゆっくりと姿を現した。何本もの巨木を背中から生やし、激しい揺れと共に立ち上がるその姿はまるで山。立ち上がる際に身体から剥がれ落ちる土は、さながら土砂崩れか。
ともあれ、地面の中……いや、森に擬態していた魔物の正体は”フォレストドラゴン”。それも恐らく、レイに匹敵する強さかそれ以上の強さを持つ個体だ。
その大きさは小さな山と言っても過言では無い。その小さな山を思わせるフォレストドラゴンの顔は、それだけで屋敷を思わせる程の巨大な顔だった。そして、フォレストドラゴンは巨大な首をグルりと捻り、爬虫類の目でレイ達を視界に収める。
『我が領域を無断で進むは何者ぞ……』
突如として目の前に山が現れたと感じ驚くレイ達だが、フォレストドラゴンから話し掛けられ、更に驚く。
だが、話が通じるならば戦闘しなくても良いかもしれないと、レイは代表して応える事にした。
「貴方は誰? あたし達は、この森の奥深くにあるダンジョンを目指してる者です! 貴方に危害を加えるつもりはありません! 宜しければ通行の許可を……!」
『……魔王の祠に挑むつもりか。ならば、力を示せ。我は門番なり……』
戦闘を回避出来るかもしれないと応えたレイであったが、フォレストドラゴンは門番だと答え、その後レイ達を睨み据えると、巨大な身体で前傾姿勢を取る。
「ま、待って! 魔王の祠って何なの!? それに、門番って!?」
『これ以上の問答は不要。……力を示せ……! 【
問答無用。そう言い放ち、フォレストドラゴンは口を大きく開いた。
音無き声がその巨大な口より発せられ、その圧だけでレイ以外の全員が力無くその場に崩れ落ちた。スライムであるムイラに至っては身体の半分程が消し飛んでいた。
フォレストドラゴンのあまりにも強大な魔力を乗せた無音の咆哮は、力無き者を振るいにかける。結果、レイだけがその場で立つ者となった。
「みんな!? くっ……! 『フォース!』そして『ダークソード!』……ムイラ! 少ししたらデヴィストを使うから、それまでに回復に専念して!」
「(了解しま……した、ロード。……『再生』)」
半分程の大きさになってしまったムイラへと指示を出し、自らはスキルによる身体強化をし、同時にミスリルソードの刀身に漆黒を纏わせた。
(出来るなら戦いたくないけど、力を示せって言うなら戦うしかないよね……! でも、あたしの攻撃って効くのかしら!? ダメ元で行くしかないか!)
その様にレイは考えるが、それも仕方ない事だ。力を示せと言うならば示すしかない。
しかし、フォレストドラゴンはあまりにも巨大だ。フォレストドラゴンが現れた場所は、底が見えない程の巨大な谷となっている。
どう考えても、フォレストドラゴンの身体にダメージなど与えられそうにはなかった。
「はぁぁぁぁっ!! 『ダークスラッシュ!』」
ならばと、無数の虚無の斬撃からなるスキルをフォレストドラゴンの顔へとレイは放つ。
唯一攻撃が効きそうなのは顔だ。目や口、それに鼻が弱点と言えば弱点の様な気がした。
『ふむ。我の弱点が顔だと思うたか。【
「……嘘でしょ!?」
フォレストドラゴンの顔に放たれたダークスラッシュは、その顔を漆黒の闇で覆った。その闇の内部では、全てを切り刻む虚無の斬撃が無数に行われている筈だ。ダメージは確実に入っている筈。そうレイは確信する。
だがレイの予想に反し、漆黒の闇は内部から破られた。樹木達が突如として、その内部から闇を切り裂きながら生えてきたのだ。驚きもする。
何本もの樹木が生えたフォレストドラゴンの顔は、例えるなら巨大な苔玉。だが、虚無の斬撃を以てしても、次々と生えてくる樹木が相手では効果は無い。現在レイが放つ事の出来る最強のスキルは、フォレストドラゴンには効かなかった。
(こうなったら、デヴィストを使うしかないけど……服、脱ごうかな? いや、その前に……!)
デヴィストでムイラを纏おうとしたレイだが、その前にやるべき事がある。ノア達の救助だ。
フォレストドラゴンの無音の咆哮で意識を失っているのだから、そのままにしておくと戦いに巻き込まれる。いや、踏み潰されると言った方が正しいか。どちらにせよ、命の危機に違いは無い。
幸いな事に、フォレストドラゴンは自らのスキル(?)によって視界が奪われている。この隙にノア達を移動させる事にした。
「ムイラ! 再生は終わったわね? 急いでノア達をこの場から移動させるわよ!」
「(了解しました、ロード)」
指示を受けたムイラは身体を薄く伸ばし、三畳程の水溜まりの様な形態へと変化した。そのムイラの上へとノア、ハイン、リンカの三人をレイは乗せる。
「これで良し! とりあえず奴から離れるわよ! 付いて来て、ムイラ!」
「(了解です)」
レイは今まで進んで来た道無き道を逆走し、ある程度離れた場所で止まると、一際大きな巨木の根元にノア達を寝かせた。フォレストドラゴンが魔王の祠と呼ばれるダンジョンの門番ならば、そのダンジョンから離れるならば一先ず安心だろうと思っての事だ。
だが、意識を失っている以上他の魔物に襲われる心配は有る。しかし、離れているとは言えフォレストドラゴンの近くに居るのだから他の魔物は寄っては来ない筈。
そう考え、ノア達をその場に寝かせたままフォレストドラゴンの下へと戻ろうとしたレイだが、念の為に少しでも匂いを消す為に腐葉土でノア達の体を覆った。
「たぶんだけど、これで大丈夫よね? 行くわよ、ムイラ! ……その前に、服、脱いでおこうっと。さすがに毎回服が溶けちゃったんじゃ、着る物が無くなっちゃうからね」
念の為、ノア達から見えない場所へと移動し、そこで全裸となりストレージへと服を仕舞うレイ。その若く美しい裸体は、神々しささえ湛えている。
「……人に見られたら変態ね、あたし。まぁいいや。やるわよ、ムイラ! ……『
まるで変態だと独り言ちながらデヴィストによってムイラを纏い、艶かしい女淫魔の姿へとなったレイは、フォレストドラゴンの下へと急ぐ。その速度はデヴィストの効果も相まって、正に瞬時に、とも言える物だった。
『ようやく戻って来たか。仲間を気遣っての事であろうが、我は初めからあの者共をどうこうするつもりなど無かったのだがな。だが、そなたが全力を出す事が出来ぬだろうと思い、あえて何も言わずにいたのだ』
「……気遣ってくれて、ありがとう。じゃあ、ここからは本気で行くわよ! 『
フォレストドラゴンの気遣いに感謝しながらも、レイはいよいよ全力を発揮する。
先ずは小手調べとでも言うべき全てを溶かす腐蝕霧を辺りに撒くと、すぐ様自らを何体にも分裂させた。これらはスライムの特性によるものだが、当然デヴィストの効果で数倍にも威力が上がっているし、分裂体も全てが同じ強さを持つ。
『なん……だと!? 我の”森”が溶ける……? グムゥゥゥ……!』
自らの体表に生える樹木をまさか溶かされるとは思っていなかったフォレストドラゴンは、そこで初めて驚愕の表情を見せる。……とは言っても、レイからすればそんな表情など見た事も無いので言葉からしか察する事は出来ないが。
ともあれ、フォレストドラゴンのその微妙な変化を見逃す事はせずに、レイは分裂体十体にて
「森が溶けた! 今よ! 『ダークソード!』それに『ダークフレイム!』」
本体のレイはその手にミスリルソードを持っている為ダークソードを普通に使えるが、分裂体は当然ミスリルソードなど持ってはいないので、それぞれの右腕を剣に見立ててスキルを発動する。それと同時、十体のレイは左腕にてダークフレイムを放った。
レイを含め、それぞれの分裂体が放ったダークフレイムの使用MPは100程。だが、一発の威力はそれだけでもドラゴン程度ならば容易く焼滅させる事が出来る威力だ。それを同時に10発。フォレストドラゴンの巨体の頭、首、胴体、腕、脚。それぞれに2発ずつ直撃した。
『黒い炎だと……!? まさかそなたは……! グオォォォォォォオ!!!』
「
フォレストドラゴンの鱗とも言える樹木を腐蝕霧によって溶かされ、そこへ凶悪な威力を誇るダークフレイムを全身に満遍なく喰らったのだ。この世界の魔物の大半は、これだけであっさりと命を落とすだろう。だが……
『ヌゥゥゥゥ……グオォォォォォォオ!! 【
「嘘!? この状態で反撃!? ……なんてね♪ 今のあたしには神聖属性の攻撃以外は効かないんだよねぇ♪ でも、そのまま攻撃を喰らうのも癪だから……『ダークスラッシュ!』」
漆黒の炎に包まれながらも、樹木のミサイルとでも言うべき物を数十本撃ち放ったフォレストドラゴンは、さすがと言える。正に、門番としての面目躍如だろう。その樹木のミサイル一本だけでも、通常種のドラゴン一体は身体を貫かれて死ぬのだから。
しかしそれらの樹木のミサイルは、十体のレイの放ったダークスラッシュの虚無の斬撃の前に、全てが無に帰した。
「……こんな所かな? 『
フォレストドラゴンを殺すつもりなど無かったレイは、ここまでだろうと戦闘に見切りをつけ、未だに燃え続ける漆黒の炎を瞬時に消した。炎が消えた後のフォレストドラゴンの体表は醜く焼け爛れているが、ドラゴンは驚異的な回復力を持つ上に竜言語魔法によっても回復出来る為、それでも命に別状は無いだろう。これも、かつてのレイが
ともあれ、フォレストドラゴンとの戦闘はこれで終わりであった。
『……我の負けだ。そなたの力を認めよう。魔王の祠へと進むがよい』
「その事なんだけど……魔王の祠って言うの? この先のダンジョンって」
シュウシュウと音を起てながら驚異的な回復を見せるフォレストドラゴンはレイを認め、先へ進む事を承諾した。
それはともかく、レイは魔王の祠……特に魔王について疑問がある。それと言うのも、元々レイは自分を設定した時に、裏コードを入力すれば自らの種族がその魔王になる様に設定したのだ。だが実際はどうか。裏コードは一部しか実行されず、自らの種族も魔王とはならない。裏コードが受け付けられない以上、何らかの原因がある筈だ。
そう考えていた矢先、フォレストドラゴンからの魔王の祠という言葉。しかもその魔王の祠は、スキル『セイタン』によって示された六つの内の一つの場所なのだ。因果関係を感じる。
つまり、その六つの場所を巡れば完全な裏コードが入手出来、レイは自らの念願だった魔王へとなる事が出来るかもしれないのだ。期待は高まる。
そして、レイのその疑問の答えを示す様に、フォレストドラゴンは魔王の祠について語り始めた。
『何故にその事が気になるかは分からぬが……まぁ良い、そなたの力を認めたのだ。答えてやろう。魔王の祠とは――』
その内容とはこうだった。
魔王の祠とは、古の時代に世界を混沌に陥れた恐るべき力を持った魔王達を、神々が封印した場所である。
だが強大過ぎるその魔力は地形に変化を及ぼし、やがてそこにはダンジョンが生まれた。そして、そのダンジョンにはいつしか封印から漏れ出る魔力に吸い寄せられた凶悪な魔物が住み着く様になってしまったと言う。
そこで神々は、人間が近付かない様にと門番を置く事にした。しかし、これには二つの意味がある。
一つ目は何も知らない人間を犠牲にしない為に。そして二つ目は、凶悪な魔物達を倒す者が現れ、その者が間違っても魔王の封印を解かない様にする為というもの。
つまりフォレストドラゴンは、神々によってこの地の魔王の祠を守る為に遣わされた門番であったのだ。
だがいつしか神々はこの世界から姿を消し、その神々に遣わされたフォレストドラゴンも、長い年月と共に門番としての使命を薄れさせていった。その為、魔王の祠はいつしか人間達が力を試す場所へとなってしまい、その力がある者を判別する為の存在へとフォレストドラゴンもなってしまったとの事だった。
だがフォレストドラゴンはこうも言う。自分を超える者が現れるとすれば、もしかしたら封印された魔王をも倒せるかもしれない、と。
そして、その条件を満たしたのはレイが初めてだった。
魔王の祠を門番として守ってきた長い年月の間、何人かは魔王の祠へと通した者もいた。自らの名声の為だけに挑む者や、純粋にダンジョンを攻略しようとする者などだ。その際には門番としての姿を見せなかったり、その者の実力に合わせて態と敗れたりといった事をした。
そして当然、それらの者達には魔王の祠とは伝えてはいない。名声を求める者は間違いなく封印を解くだろうし、ダンジョンを攻略する者もそこに宝が有ると勘違いして封印を解きかねない。そんな事で封印が破られれば、神々の消えた世界は再び混沌の世と化すだろう。ともすれば、滅びるかもしれない。それだけは……魔王の存在を守る事だけは、門番としての最低限の勤めだったと、フォレストドラゴンは話を締め括った。
『――という事だ。そなたならばこの先の魔王の祠に眠る【魔獣王ベリアル】を倒せるかもしれん。引き受けてはくれまいか?』
「……ちょっと考えさせて。……と言うか、あんたって神の遣いだったの!? じゃあ、神聖属性なんかも使えた訳? それを使われてたらあたし、死んでたわよ!?」
『魔王を倒せる可能性がある者を、どうして我に殺せようか。そなたの種族については分かっていた。……角も有るしな。だが、例え人間では無くとも、そなたの心には優しさが見える。ならば、魔王を倒す資格は充分であろう』
神聖属性を使われなかった事にはホッとしたが、何だか手を抜かれている様で釈然としないレイであった。
その後デヴィストを解除し、ストレージに仕舞っていたいつもの服に袖を通したレイは、フォレストドラゴンに言われた事を考えながらノア達を避難させた場所へと戻った。
(魔王を倒して欲しいって言ってたけど、実際に見てみない事には分からないわよね。間違いなく裏コードの事に関係してるだろうし、それを入手する為に倒さないとダメなら倒すしかないけど。……と言うか、あたしが設定した魔王って”あたし”しか居ない筈なんだけど!? やっぱり、そのベリアルって魔王を見てから判断しよっと)
魔王の事は見てから判断しようと結論付けたレイは、ノア達を避難させた場所にて愕然とした。寝かせていた場所にノア達の姿が無いのだ。
まさか、他の魔物に襲われてしまったのか。はたまた、食べられてしまったのか。悪い予感ばかりが次々と心に浮かんで来る。
「まさか!? ノアちゃん! ハイン君! リンカちゃん!? 返事して!」
悪い予感を払拭する様に、レイはノア達に向けてそう叫んだ。
こんな事なら、ムイラを見張りとして置いて行けば良かったと後悔をするレイ。
しかしそれだと、恐らくフォレストドラゴンを圧倒する事は出来なかっただろう。それ程の強敵であったのだ。神の遣いは伊達では無いという事だ。
ともあれ、ノア達を探して辺りを移動しながら呼び掛けるレイ。その表情は曇り、既に涙を流している。
するとその時、僅かだが確かに何かの音が聞こえた。
(何の音……? 何かがぶつかる様な、燃える様な……。まさか!?)
その可能性に気付いたレイは、ムイラと共にその音の発生源へと急いだ。
10分程走り、辿り着いたその場所では、フォレストドラゴン程の巨体では無いが、大きな身体のドラゴンが居た。アースドラゴンだ。
体長が30m程のそのアースドラゴンと、ノア、ハイン、リンカ、そして本来の姿として再召喚されたベロちゃんが戦闘を繰り広げていたのだ。
とにかく生きていて良かったと安堵の息を吐くレイだが、そのままノア達の様子を見る事にした。魔王の祠に連れて行けるかを判断する為だ。
フォレストドラゴンに勝てなくても、アースドラゴンを倒せる実力が無いと、きっと魔王の祠で命を落とす。レイが居る以上そんな事はさせないが、万が一が有る。
レイはムイラと共に、巨木の陰へとそっと身を隠したのであった。
心優しき少女は魔姫となる 桜華 夜美 @yami_haluka
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