第六話 兎と砂時計その9

「スファーリアさん、お疲れ様」


「縁君もお疲れ様」


 2人はロビーに戻ってきたようだ。


「学園あのままでよかったんだよね?」


「私のフレンドがそのまま使うって連絡さ、縁君にもいった?」


「ああ」


「まさかあの惨状をそのまま使われるとは」


「自分で惨状って言っちゃったよ」


 縁は苦笑いをした。


「それは置いといて、お店の予約って8時だっけ?」


「うん、今6時半くらいだから丁度いいな」


 縁はメニューを開いて時間を確認した。


「そう言えば、色鳥君が見せたい物があるってメールくれたけど」


「それも見たいから早めに切り上げたのもある」


「もしかして動画?」


 スファーリアは首を傾げた。


「そうそう、加護持ちのPVみたいのを色鳥が作っててな」


「それは見なきゃだめだわ、面白そうじゃん」


 スファーリアはウキウキしている。


「日常編と真実編があるらしい」


「おお!表の顔と裏の顔って奴ね?」


「ロビーの巨大モニターの前に居るって言ってたな」


「行ってみよー」


 縁とスファーリアはロビーにある巨大モニターへと向かった。

 このモニターは普段は公式の宣伝を流しているが、プレイヤーが動画やイラスト等を宣伝出来る。

 独占や過度なお色気やグロは、公式から厳重注意の対象となり、やりすぎるとアカウント停止処分も。

 ネットマナーと良識を持っていればなんてことない。


「おう、お疲れ様」


 色鳥が右手を上げて挨拶をした。


「お疲れ様です、縁さん、スファーリア」


 椰重はお辞儀をする。


「お疲れ様、色鳥、桜野さん」


 縁は軽くお辞儀をした。


「お疲れ様、色鳥君、椰重ちゃん」


 スファーリアは手を軽く振る。


「さっそくだが……」


 色鳥はメニュー画面を操作しようとしたら。


「おや?」


 縁が巨大モニターを見た。


「どうした?」


 色鳥は縁を見る。


「今流れてるの公式PVだよな?」


 縁は巨大モニターを指差した。


「ああ」


 色鳥は頷く。


「俺の知らないやつだ」


「私も知らない」


 縁とスファーリアは巨大モニターを見ている。


「ついさっき公開したらしいぞ?」


 色鳥も巨大モニターを見ている。


「ふむ、私達は見たが、これを見てから旦那のPVを流そうではないか」


 椰重は色鳥を見た。


「んだな」


 色鳥は頷いた。



 巨大モニターには絵に描いた四天王が会議しているような部屋が映し出されている。


『最近我々の正義に異論を唱える者達が居るとか』


 素肌以外金ピカな紳士風の男性が金ピカの古い銃を手入れをしている。

 

 モニターに字幕が表示される。

 ゴールドマン・ジャスティン。

 通称ゴルジャ、相手の技をコピーするがコピーした技の名前にセンスが無い。

 ジャスティスジャッジメント四天王の1人、技の日本市場の異名を持っている。



『仕方ないわ、世間から見たら私達は間違った正義らしいから』


 お色気ムンムンなお姉さんがワインを片手にそう言った。


 字幕が出る。

 チャムリア・ミリー。

 通称はチャム、鞭使いであり、世の中の男をひれ伏したいと思っている。

 ジャスティスジャッジメントの四天王の1人で、魅力のチャムで知られている。


『正義なんて人の数あるのにね、これだから頭の悪い馬鹿は好きじゃない』


 フードをかぶっていて、髪の毛で目も見えない、声で女性とわかるその人物は詰め将棋をしている。


 字幕が出る。

 策士院さくしいん駒己こまこ

 通称コマちゃん、ジャスティスジャッジメントの作戦担当のまとめ役だが、めんどくさいで指示は適当。

 ジャスティスジャッジメントの四天王で、鋭い指摘のコマとして実は恐れられている。


『ったくよ! テメェらの事を棚に上げてよく言うよな! 本当によぉ!』


 そこら辺にいそうな三下風味の男がテーブルに足を上げて、イキリちらしていた。


 字幕が出る。

 三乃下みつのした正義まさよし

 通称は三下、三下らしく振る舞う事で力を発揮するらしい、よくわからないがジャスティスジャッジメントの四天王を勤めるくらいには強いようだ。

 三下ゆえ四天王としての二つ名みたいなものは無い。


『部下が好き勝手してるのを止める理由も無いですけどね、それも正義です』


 ゴルジャは銃を見つめながらそう言った。


『私が気に食わないなら、あの時のように殺しにくればいい』


 コマはつまらなそうに詰め将棋をしている。


『コマ! その話は止めなさい』


 チャムがコマを睨む。


『気にするな』


 今まで喋らずに座っていた人物が口を開いた。


『私は世間に感謝しなければいけない、あの事件で本当の正義とは何かを理解したのだからな』


 顔は見えない、声は初老の男性を想像させる。


 字幕が出る。

 ???

 ジャスティスジャッジメントのボスで過去の出来事から正義が正義ではなくなったが、彼の正義は何一つ変わっていない。


『これは我等と貴殿達との正義のぶつかり合いよ』


 口元だけが映りニヤリと笑っている。


『では、待ってるぞ? これを見ている者達よ』


 ボスが指をパチンと鳴らすと、モニターは砂嵐になりそのPVは終わった。

 数秒したのち字幕が表示される『詳しくは公式サイトをご覧ください』と。



「おおー」


 縁は目をキラキラさせている。


「これは世の中が悪いパターンだね?」


 スファーリアも興奮しているようだ。


「これは後で公式サイトをチェックだな」


 縁は嬉しそうな顔をしながらスファーリアを見る。


「そうだね」


 スファーリアは頷いた。


「んじゃ、本日のメインデッシュにいくか」


 色鳥はメニューを操作している。


「っとその前に」


 手を止める色鳥。


「これからモニター使って動画二つ分流すんだけど、誰か使う予定の人達は居るか?」


 色鳥は周りに居るプレイヤー達に声をかけた。


「いや、俺達は大丈夫だ」


「お、何々? 何か流すの?」


 剣士風の男達が近寄ってくる。


 それにつられるかのように巨大モニターの徐々に人が集まってきた。


「俺含めた身内のPVを二本作ってきてな」


 色鳥はピースサインをする。


「面白そう、私達も一緒に見ていい?」


 ネコミミ女性が色鳥に話し掛けてきた。


「もちろんだ」


 色鳥は頷いた。


「おい、何か動画流すらしいぞ」


「私も見ましょうぞ」


 色々なプレイヤーが巨大モニターの前に集まってきた。

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