第六話 兎と砂時計その8

「落ち着くまで待ちましょう」


 縁とスファーリアは少年が落ち着くまで待つ事に。

 少年は観念したのか、涙を流しながら座った。


「貴方、名前は?」


「…………」


 少年はスファーリアから顔を背けた。


「よし」


 縁は何時もの神様モードに既になっている、少年を見て何かを悟った縁は何時も使っている通信機器を操作した。

 しばらく通信機器を操作した後、縁は少年を見る。


「少年よ、安心するといいお前の家族は無事だ」


「ほ、本当か!? デタラメじゃないのか!?」


 少年は期待と不安が入り混じった顔で縁を見上げた。


「家族と地下帝国から逃げ出すが、君だけはぐれてジャスティスジャッジメントに拾われた」


 少年は縁の言葉に驚いた顔をしている。


「君は家族に会いたいという気持ちで耐えてきたのだろう?」


「ぐっ……」


 少年は今にも大泣きしそうな顔をしている。


「安心しろ少年、俺の名にかけて家族に合わせてやる」


 その言葉を聞いて少年は大泣きした、縁は少年を抱きしめて、彼が泣き止むまで待ってあげた。


「落ち着いたか?」


「うん……」


 少年は縁から貰ったハンカチで涙を拭いている。


「だが地下帝国に何があったんだ? 地上とは和平を結んだんじゃ」


「父さんが言ってたんだけど、クーデターが起きたんだって」


「なるほどな」


「縁君、地下帝国って何?」


 スファーリアは縁を見た。


「昔、地上の特殊な汚染からのがれようとした人々が居たんだ、その人々は地下へ避難した」


 縁はスファーリアを見る。


「地上に残った人達はその汚染をどうにかしようと頑張ったんだ、結果は地上の特殊汚染は抗体を作る事によって無効化できたんだが……」


 縁はため息をした。


「地下に避難した人達は人間とは変わった進化をしていたんだ、簡単に言えば亜人になっていて、地中や洞窟に住む動物達の姿みたくなったんだ、その人達がいざ地上に出たら……」


「大騒ぎになったのね」


 スファーリアは頷いた。


「ああ、そして地下の住民達は帝国を作り地上への復讐を誓うんだ、一人の男性がその地下帝国と戦って和平まで持ち込んだんだが」


「最近クーデターが起きたと」


「らしいな、俺はその人と息子さんに面識があるがそこまでは知らなかった」


 縁は首を振る。


「おじさんは『砂煙の英雄』を知ってるの?」


 少年は縁を見上げていた。


「ああ、少しだけど話した事もあるよ」


「す、スゲー!」


 少年の目は輝いている。


「この子の保護はその英雄さんに任せるのね」


 スファーリアは少年を見た。


「ああ」


 縁が頷いた。


「フン……やっと見つけたぞ」


「将軍、やはりあの少年が我々の探していた『鍵』です」


 いきなり何処からか声が響いた!

 縁とスファーリアは声がする方向を向き、少年を守るように立ちふさがる。


 地面から砂が巻き上がり、砂が地面に落ちるとその場には怪人が2人立っていた。

 魔術師のような衣服を身にまとい、ジムグリのような顔と色をしていて舌をチョロチョロと出している蛇の怪人。

 そして、プレーリードッグのような顔、重量感のある重そうな鎧を身にまとっている怪人が立っていた。


「地上の愚かな民よ、その少年を渡せば今は見逃してやろう」


 プレーリードッグの怪人が一歩前に出る。


「縁君、この人達から明らかな悪意を感じる」


「ああ、だが俺達の力が効かないな」


 縁とスファーリアはお互いに顔を見て頷いた。


「ほう? 少しは出来るではないか、地上の技術や力など我が帝国の技術にはかなうまい」


 プレーリードッグの怪人はニヤリと笑っている。


「大人しく少年を渡しなさい、馬鹿な選択肢は選ばないほうがいいですよ?」


 蛇の怪人が縁達に近寄っていく。


「だが俺は運がよくてね」


 縁は不適な笑みをした。


「それに何の意味がある?」


 蛇の怪人は鼻で笑った。


 その時!


「待て! 地底大将軍プレーリー! 地底参謀長ジムグ!」


 黒く短い髪に少し太い眉毛に整った顔、服装は何処にでも居そうな青年の私服だ。

 その青年が声を上げながら走って近寄ってくる!


「ほう? 砂煙正吾か……姫を誘拐した男の息子」


 地底大将軍プレーリーは走ってきた青年の正吾を見る。


「父さんはそんな事はしていない! 父さんは母さんと心を通わせて夫婦になったんだ!」


 正吾は言葉に力がある言い方をした。


「貴様との問答も飽きたな」


 将軍は右手を上げると、将軍の近くで砂が巻き上がる。

 そこから砂の色をした全身タイツを着た戦闘員が現れた!

 巻き上がった砂は戦闘員が現れたとほぼ同時に地面に落ちる。


「くっ! 地底戦闘員がこんなに!」


 地底戦闘員は正吾を取り囲んだ、正吾は攻撃を警戒して全方位に気を配っている。


「貴様も力をつけているようだが、私もそれは同じ事」


 将軍はジッと正吾を見ていた。


「いくぞ!」


 正吾のその言葉に地面から砂が巻き上がる、その砂は正吾の腰付近にまとわり付き砂は形を変え始める。

 右の腰に銀色の縦約20センチ、横約5センチの円すいの形をした物体に変化した。

 その物体を腰に固定するようにベルトが巻かれている。


「るぁ!」


 気合いの入った声を出す正吾は、右足で地面を思いっきり踏む!

 すると正吾の周りにを囲むように、色とりどりの砂時計が砂に紛れて地面から吹き出してきた!

 正吾は目の前の赤色の砂時計を手にとった、選ばなかった砂時計は巻き上がった砂と共に地面に落ちると砂時計は消えさった。


「華炎、力を貸してくれ!」


 銀色の物体の蓋を開けて、そこに赤色の砂時計を入れて蓋を閉めた。


「貴様の実力ではこの人数には勝てまい、やれい!」


 ジムグが戦闘員に指示を出す!


「チテー! チテー!」


「チテーチテー!」


「チテー!」


 地底戦闘員が一斉に正吾に襲いかかる!


「変身!」


 正吾は右手で銀色の物体を半回転させた、すると銀色の物体から赤色の波紋が正吾の身体を駆け巡った。


「るぁ!」


 両手をクロスさせた後、気合いの入った声と共に両手をそのまま振り下ろして腰ので止める。


「チテー!」


「チテーチテー」


 赤色の波紋の一部が周りに拡散し、地底戦闘員を吹き飛ばした!

 そして、身体を駆け巡っていた赤色の波紋は炎に変わり、吸い込まれるように正吾の身体に入っていく。


「姿が変化しない……か」


 将軍は感心したように正吾を見る。


「どうやら砂時計の力を使いこなしているようですな」


 ジムグは将軍を見た。


「評価を改めてやろう、しかし力を引き出しても強くなければ意味など無い!かかれ!我が配下達よ!」


 将軍の一言で再び正吾に襲いかかる地底戦闘員。


「はぁ!」


 正吾はジャンプをした、人間では不可能な高さまでジャンプをしている。


「チテー!?」


「チテー!」


 地底戦闘員達はジャンプした正吾の下に群がっていた。


「必殺の秒針!」


 正吾がそう叫ぶと、銀色の物体から銀色の砂が出て正吾の右手付近に巻き付き、それが銀色で機会仕掛けのリストバンドに変化した。

 それは砂時計を固定するように出来ているようだ。

 銀色の物体から赤色砂時計を取り出して、リストバンドにセットして一回転させる。


「大火炎放射!」


 正吾は右手から炎を出して、自分の真下にいる地底戦闘員を焼き尽くす!


「チテー!」


「チテー!」


 こんがりと少し黒くなる戦闘員。


「な、何!?」


 地底戦闘員に倒せるほどの効果が無かったようだ。


「ふははは! 貴様の主力は炎による攻撃なのは知っている、地底戦闘員に耐火用の砂を混ぜておいた!」


 ジムグは両手を開いて高笑いをしている。


「ならば!」


 正吾は足場でもあるかのように空中で何かを蹴る、その勢いで戦闘員から距離をとり、リストバンドの赤色の砂時計を外して着地しようとする。


「雨乞いの巫女!」


 着地すると同時に再び砂が巻き上がり、砂時計が地面から現れる、今度は青色の砂時計を選び、赤色の砂時計を地面へ落とすと砂に紛れて消えていった。


「変身!」


 青色の砂時計を銀色の物体に入れて半回転させる正吾、今度は青色の波紋が身体を駆け巡る。


「るぁ!」


 再び気合いの入った声を出しすと、青色の波紋は水に変わり正吾の身体へと入っていく。


「フッ……」


 将軍は笑って正吾を見ている。


「必殺!」


 正吾はリストバンドに青色の砂時計をセットして一回転させる。


「水圧切断!」


 正吾は手から圧縮された水を戦闘員に向かって放った!


「チテーチテー!」


「チテー!」


 ただずぶ濡れになる戦闘員。


「これも効かないのか!?」


 正吾の表情は焦っている。


「ふははは! 貴様の持っている砂時計は全て解析している、対策してないとでも思ったか!」


 ジムグリは正吾を指差していた。


「これじゃあ手の打ちよ……」


 正吾は後退りをし、戦闘員は徐々に正吾を取り囲んでいく。


「正吾君、これを使いな」


 縁は鞄から白い色の砂時計を取り出して正吾に向かって投げた。


「縁さんこれは!?」


 受け取った正吾は白い色の砂時計を見る。


「君の新たな力だ、今の君なら使える」


 縁のその言葉に正吾は頷いて、青色の砂時計を外して地面に投げる。

 白い色の砂時計を銀色の物体に入れた。


「変身!」


 銀色の物体を半回転させる正吾、白い色の波紋が正吾の身体を駆け巡る。


「るぁ!」


 正吾は気合いが入った声で白い波紋を受け入れようとするが……


『この砂時計は今の貴方では完全には使いこなせません、吸収しきれない分は装甲に変化します』


 と、銀色の物体が機会音声で喋った!


 正吾は白い波紋に全身を包まれ、波紋は形を変えていく。

 そして白い波紋が収まると……


「俺は……運がいいからな」


 正吾は歯を光らせながらそう言った。

 なんと正吾は縁のウサミミカチャーシャとジャージ姿にっていて、服装だけ変り他は変わっていないようだ。


「なんだその砂時計は!? 異質な力を感じるが明確には言えない力は!?」


 将軍は眉をひそめて正吾を見た。


「力を引き出しいないのにこの不快感はいったい!? 奴の与えた砂時計の力なのか!」


 ジムグは縁を睨むように見ている。


「砂時計の時間が短いか」


 正吾は銀色の物体の蓋の部分を見た、四角表情されているメモリが点滅している。


「一気に決めてやる! はぁ!」


 正吾はその場でジャンプをした。


「必殺!」


 白い砂時計をリストバンドに装置して一回転させた。

 

「む!? 身体が鈍い!」


 将軍は身体を動かそうとするが少ししか動かない。


「し、将軍!」


 ジムグも将軍の方を向こうとするが小刻みだ。


「兎のワニ渡り!」


 空中に居る正吾は戦闘員に向かって、急降下する!


「チテー!」


「チテー!」


「デチー!」


 戦闘員は次々と頭や肩を踏み台にされていて、正吾は連続でジャンプをしている。

 踏み台にされた戦闘員は形が崩れて砂に戻っていく。


「将軍覚悟!」


 正吾は最後の戦闘員を踏み台にして、空中に舞い上がり将軍目掛けて蹴ろうとをしようとしている。


「るぁぁぁぁ!」


 そして気合いの入った掛け声と共に将軍目掛けて急降下してきた!


「そうか! 砂煙正吾の砂時計を通して我々に干渉してきてるのか!」


 ジムグは縁を睨んだ、縁はニヤリと笑っている。


「神が! 私の忠誠心をなめるなぁぁぁ!」


 ジムグは将軍を庇うように仁王立ちをした!


「ぐぁ!?」


 ジムグは正吾の蹴りをくらって吹き飛んだ!

 正吾はジムグを蹴った後、バック宙返りをして地面に着地した。

 着地と同時に銀色の物体の下の蓋が開いて砂時計が飛び出る、白い砂時計は地面へと消えていく。


「ジムグ!」


 動けるようになった将軍はすぐさまジムグへと駆け寄った。


「将軍……あの……砂……」


 ジムグは必死に気付いた事を伝えようとしている。


「ジムグ今は喋るな、治療した後対策を考えるぞ」


 将軍は立ち上がり、振り返った。


「砂煙正吾!」


 将軍は正吾を睨む。


「今は引いてやろう、しかしその砂時計の力が次も通じるとは思わない事だ!」


 一瞬だけ砂嵐が起きた、次の瞬間には将軍とジムグはその場に居なかった。


「はぁ……はぁ……危なかった、こんなにも早く手持ちの砂時計が対策されるとは」


 正吾は肩で息をしながら座り込んでいた。


「助かったよ正吾君」


 縁は正吾に近寄る。


「こちらこそ、俺だけの力じゃダメでした」


 正吾はゆっくりと立ち上がった。


「精進していて何よりだ、状況はさっき端末で説明した通りだ」


 縁が端末を操作していた時、ついでに正吾にも連絡していたようだ。


「この子事は父さんと母さんに相談してみます」


 正吾は少年を見る。


「積もる話はまた今度しようか」


「そうですね」


 縁の言葉に正吾は頷いた。


「早くここを離れた方がいいよ」


 スファーリアは何かを感じとったように辺りを見渡している。


「わかりました、君、俺に付いて来てくれ」


「う、うん」


 少年は正吾と一緒にその場から歩いて居なくなる。


「世の中広いね、私の見たこと無い力がある」


 スファーリアは楽しそうに笑っている。


「だな、俺の力が通じない相手は久しぶりだ」


 縁も楽しそうに笑っている。


「縁君、私達も行きましょう」


「まだまだお客さんか?」


 2人はその場から音も無く消えた。

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