第六話 兎と砂時計その2

「では、皆さんに資料を配りますね」


 いずみは資料を全員に配った。

 各々資料に目を通す。


「俺はジャスティスジャッジメントを始めて知ったからな、被害は……」


 縁は資料を見ながらそう言ってると。


「お兄様、ここに来る前に私達の神社が狙われましたわ」


 絆が割って入った。


「神社を襲撃とは罰当たりな」


 縁はため息をする。


「ま、相手になりませんでしたけど」


 絆は楽しそうに笑っていた。


「って事らしい」


 縁は資料を見ている。


「私は被害にはあってはいないのですが、最近孤児が多いです」


 シンフォルトは目を瞑り、心苦しそうにしている。


「多分それは俺の話と噛み合うかもしれないな」


 陣英が軽く手を上げた。


「ジャスティスジャッジメントは代理戦争をあちこちでやっている」


「まさか戦争ごっこか?」

 

 色鳥は陣英を見た。


「そうだ、代理同士がジャスティスジャッジメントなんだが、依頼主を殺したり色々とやりたい放題だ」


 陣英はため息をしながら頷く。


「一言では語れないってか」


「ああ、主義も主張も何もない金稼ぎと快楽の戦争だ」


「戦争って言えばこの国はどうするんだ?」


 色鳥はグリオードを見た。


「それは麗華に任せている、俺は国民を守らねばならない」


「で、麗華は策があるのか?」


 色鳥は麗華を見る。


「敵にワザと捕まろうかと思います」


 しれっとそう答えを返した麗華。


「ふぁ!? 何で?」


 色鳥はオーバーリアクションで両手を上げて驚いた。


「相手の王様が馬鹿過ぎなので一目見たくて」


 麗華は花で笑った。


「あ! それわかります! どんなお馬鹿さんか興味あります!」


 いずみは目をキラキラさせながら手を上げた。


「なあ、その隣国はなんで戦争しかけてきたんだ? 領土が欲しいとかか?」


 陣英は首を傾げた。


「説明しましょう『正義のため』らしいです」


 いずみのメガネがキラリと光った。


「はぁ? んだそりゃ」


 陣英は耳を疑ったような顔をしている。


「簡単に言えば、我が国の国民が隣国の民を虐殺したと思ってるようだ」

 

 グリオードはため息をした後、近くに置いてある飲み物を一口飲んだ。


「待て待て待て、流石に調べりゃわかるだろ?」


 色鳥も耳を疑った顔をしている。


「だよな……流石に」


 陣英は信じられないようだ。


「簡単ですよ陣英さん? 『王は自分の家臣を疑わない』のです」


 いずみはドヤ顔をしながらメガネをクイッとして説明をした。


「は?」


 陣英は渾身の『は?』だ。


「しかも女に囲まれていい御身分ですね、頭の悪い会話をしているようですし」


 いずみは右手の人差し指で自分のおでこをツンツンしている。


「頭の悪い会話?」


 陣英は首を傾げた。


「隣国の王様は家臣と戦場でイチャイチャしてます」


「そういう奴もいるだろ?」


「部下が殺し合いをしている時に、自分は後方で側近の女とイチャイチャです」


「まあ、可笑しくないだろ?」


「一言で言うとブレてるんですよ」


 いずみはため息をして首を振った。


「ほう?」


 陣英は腕を組む。


「強欲で豪快で残忍だったら、特に言う事は無いんですよ」


「その性格踏まえるなら、部下を使い捨てと考えて女を抱いてたら、納得出来るな」


 陣英は頷いた。


「乳揺れ程度で顔を赤らめて、乳を背中に押し付けられたくらいで動揺するんですよ」


 いずみは鼻で笑う。


「色気に惑わされている場合ではない! キリッ! ……と言ったらしいです」


 人を小馬鹿にしたような喋り方をしている。


「キリッ! は言ってないな?」


 陣英は苦笑いをした。


「ええ、ですが色々と頭が痛くなりました、こんなの序の口ですよ」


 いずみは深いため息をした後、いずみに用意された紅茶を飲み干した。


「私の感性では隣国の王様は理解出来ませんでした、気持ち悪いです」


「そうか、お前は『加護』でわかるのか」


 陣英は同情する目でいずみを見る。


「はい、しかしこの目で実際に見るまでは『生きた情報』ではないので、霜氷柱さんと行動しようかと」


「私とですか?」


 麗華はいずみを見て首を傾げた。


「はい、私は全てを知っていますが何処までお馬鹿さんか……実際見てみたいと思いまして」


 いずみのメガネが怪しく光る。


「貴女、なかなかいい性格をしてますね」


 麗華の口元はニヤリとしていた。


「よく言われます」


 いずみも同じように笑う。


「それ俺もついて行っていいか?」


 縁はいずみを見た。


「お、縁さんもお馬鹿さん発見ツアーですか?」


「そっちはあまり興味が無い」


「少しはあるんですね、お兄様」


 ジト目で縁を見る絆。


「敵国に捕まるんだろ?万が一があったらどうするんだ?」


 縁は心配する顔でいずみを見ている。


「大丈夫ですよ? 相手の王様は女は殺さないので」


 いずみは右手の人差し指を左右に揺らした。


「お前が言うんだ、確実なんだろうな」


「はい、隣国は防衛を何回かしているんですが、トップが男だとほぼ戦死、女は『何故か』殺されないのですよ」


 いずみは何故かを強調して言った。


「なるほど、そういう『出会い』にされている可能性があるな」


 縁は何かを悟ったように頷きながら笑っている。


「流石は縁さん、気持ち悪い程女性が死なないんですよ」


「で、生き残った女性はその王様が慈悲で配下にするのか?」


「正解! 縁さんに10ポイント!」


 いずみはポケットから10と書かれた紙を取り出して縁に渡した。


「そいつの縁に興味が出た、俺も一緒に捕まるわ」


 縁は渡された10ポイントを鞄にしまう。


「お兄様が居るなら安心ですわね」


 絆はジト目で10ポイントの行方を見ていた。


「そうだ、お兄様で思い出しけど絆、タベリアの街の防衛はどうなってんだ?」


「リッシュお兄ちゃんが指揮をとって頑張っていますわお兄様」


「そうか」


「タベリア防衛には俺の所属している部隊も参加している」


 陣英は縁を見た。


「私も防衛に参加しています、子供達が多い街ですから守らねばなりません」


 シンフォルトも縁を見る。


「まだ本格的に攻めてきてないんだな?」


 縁は絆を見る。


「ええ、雑魚ばかりですわ」


 絆はつまらなそうにため息をした。


「私達は一度世界を相手に戦ってるんです、相手にならないですね」


 いずみのメガネがキラリと光った。


「懐かしいな、あの頃は若かった」


 グリオードは苦笑いをした。


「あのすみません」


 麗華が手を挙げた。


「皆様が世界と戦った理由はなんでしょうか?」


「なんだグリオード、麗華に教えてなかったのか?」


 色鳥はグリオードを見る。


「ああ、人様に自慢する内容じゃないし賞賛される内容でもないからな」


「……お互い大人になっちまったな、グリオード」


 色鳥とグリオードは共に苦笑いをした。


「麗華さん、世界と戦った理由は私とお兄様を守る為です」


「絆様と……縁様を?」


 麗華は絆と縁を見る。


「絆は不幸の神で俺は幸運の神なんだ」


「ふふん、崇め奉りなさいな」


 絆はドヤ顔をしていて、自信満々だ。


「何があったのか聞いていいでしょうか?」


 麗華はグリオードを見た。


「わかりました! 私が説明いたしましょう!」


 いずみはメガネを光らせながらニコニコしている。

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