第六話 兎と砂時計その1

 長谷川は何時も通りにレアスナタを遊びにゲートへとやってきた。


「今日は久しぶりに加護持ちメンバーでロール、荒野原さんとも頃合いをみて合流と」


 長谷川はメモ帳を確認している。


「遥か昔に桜野さんとは何回かロールしたような無いような……ま、いいか」


 長谷川は受け付けを済ませ、店員に案内されてプレイルームへ。

 シートベルトとゴーグルを装着する。


「いざ! レアスナタの世界へ!」


 長谷川はゴーグル越しに見えるスタートボタンを押した。

 辺りは薄汚い風景から徐々に変化していく。

 長谷川から縁へとなる瞬間だ。


 何時ものウサミミジャージ姿でロビーへとやってきた縁。


「みんなは既に集まってるらしいから、俺も行かなきゃな」


 縁はメールを確認、メールが何件か着ていて内容はロールを先に始めているという内容だった。


「んじゃ、グリオードの宮殿に行きますか」


 縁はメニューを操作して、フレンドのシナリオ参加にチェックを入れる。

 シナリオ参加加入認証の通達メールが来る、そのメールを開いてデカデカと書かれている開始の文字を押した。

 端から見れば縁の身体は消えて、シナリオ開始場所へと移動。



 ロールの開始である。



「さてと」


 縁はグリオードが住んでいる大きな宮殿の目の前にワープしてきた。


「縁様、お待ちしておりました」


 街の風景に目をやっていると、グリオードに仕えている執事のジンが声をかける。


「皆様は応接室にてお待ちになっています、こちらへ」


 ジンの案内で応接室の扉の前までやってきた縁とジン。


「グリオード様、縁様がいらっしゃいました」


 ジンは扉をノックする。


「ああ、入ってくれ」


 中からグリオードの声が聞こえた。

 ジンが扉を開き縁はジンに軽く会釈をして中に入る。


「……なんだこりゃ」


 縁が見た光景とは……


 会議に参加するメンバーは大きなテーブルを囲うように椅子に座っていたのだが。

 絆、いずみ、シンフォルトが雑誌を見ながら雑談をしている。

 陣英、色鳥、麗華は地図と小物を使って戦術や戦略に付いて話をしているようだ。


「このお化粧の色良いわね」


 シンフォルトは雑誌に紹介されている化粧品を指差した。


「あら? シンフォルト、ナチュラルメイクがいいの?」


 絆はシンフォルトが指差した化粧品を見る。


「ほほう、肌色ですか!」


 いずみはメガネをクイッとしながら雑誌を見る、今回はちゃんと生身だ。


「……最近斬銀と一緒に暴れ回ったかしら、肌色と聞くと斬銀のイメージがありますわ」


 絆は溜め息をした。


「ふむ……」


 いずみはニヤリと笑いながら、右手で口を隠して考え事をしている。


「連想すると、化粧、オシャレ、コスメティック、コスメとなり」


 指折りで数えるいずみはニヤニヤしながら喋っていた。


「化粧とコスメは似たようなものですよね?」


 シンフォルトは首を傾げる。


「そこに、斬銀を投入」


 いずみのメガネがキラリと光った。


「絆さんが考えたのは、斬銀系コスメですね?」


 ドヤ顔をしながら絆を見るいずみ。


「クッ……そ、想像したくないです……わ!」


 絆は想像してしまったのか、震えながらテーブルに顔を伏せてしまった。


「まあ、斬銀さんはお化粧だったのですね!」


 シンフォルトは手を合わせてニコニコしながらそう言った。


「い、いずみ……貴女が責任持って説明なさいね?」


 絆は震えながら伏せている、右手の人差し指でいずみを指差す。


「いくらシンフォルトさんでも流石に……」


 いずみはため息をしながらシンフォルトを見た。


「はて? 冗談なんですか?」


 シンフォルトは清い瞳をしながら首を傾げている。


「怖いですわ、嘘から出た誠で斬銀系コスメが発売されたら!」


 絆はテーブルを軽く両手で叩きながら顔を伏せるのを止めた。


「流石に無いでしょう」


「そうですよ、絆さん」


 いずみとシンフォルトは真顔で絆を見ている。


「いや、あんた天然キャラでしょ! そして斬銀なめてんか、アイツなら間違いなく悪乗りする! 絶対にする!」


 絆は少し半狂乱になっていて、精神的余裕が無い顔をしながら、シンフォルトといずみに訴えていた。


「おやおや絆さん、素が出てますよ?」


 いずみは苦笑いしながら絆を見ている。


「コホン、失礼しましたわ」


 わざとらしい咳をした後、絆は雑誌のページをめくった。



 色鳥達はというと。

 

「色鳥、その戦術はどうなんだ?」


 陣英は地図に置かれている味方と書かれたコマを指差した。


「遊びが過ぎませんか?」


 麗華も地図を指差した後、コマを動かしている。


「待て待て、お前達も可笑しいぞ?」


 色鳥はため息をしてコマを動かした。


「何処がだ? 生命の部隊は連携プレーを心掛けているが?」


 陣英がコマを指差した、端から見れば味方のコマは敵コマに対して効率的に攻めようとしている。


「ほぼ不死身の部隊が真っ正面から突撃してるだけだろ、戦略とか戦術じゃないだろ」


 色鳥は敵コマを地図から外した。


「色鳥、私は何処が可笑しいのですか?」


 麗華の味方コマは一つ、敵は多数。


「大群相手に一人で無双してる奴に、俺の戦い方をどうこう言われたくないわ」


 色鳥は麗華の敵コマも片付けた。


「合法的に殺し合い出来るんですよ? 楽しみは独り占めしたいじゃないですか、故に努力してるんです」


 麗華は楽しそうに笑っている、まさに悪魔の笑み。


「殺意が高いな」


 色鳥は深いため息をした。


「あら? 陣英様と色鳥は方向性が違えど『同じ空気』を感じますが?」


 試すように陣英と色鳥を見る麗華。


「ま、戦いが好きだからな」


 陣英は自分を手を見て笑っている。


「俺は心が強い奴と戦いたいだけだ」


 色鳥は腰に差していた刀状態の夜空を右手で握った。


「やあ縁、いらっしゃい」


 グリオードは騒がしさをニコニコと見ていた、縁はグリオードに話しかけられるまで周りの騒がしさに飲まれていた。


「お前ら楽しそうだな」


 縁は絆の隣の椅子に座る。


「じゃあ、始めようか」


 グリオードの目つきが変わった。

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