第七話 幕切れ 恐怖!地底帝国の脅威!

「ジムグよ本当にここに居るのか?」

「はいプレーリー将軍」


 いきなり何処からか声がグラウンドに響いた!

 地面から砂が巻き上がり、砂が地面に落ちるとその場には怪人が2人立っていた。

 魔術師のような衣服を身にまとい、ジムグリのような顔と色をしていて舌をチョロチョロと出している蛇の怪人。

 そして、プレーリードッグのような顔に重量感のある鎧を身にまとっている怪人が立っていた。

 鎧には砂時計をモチーフにした国旗のような模様がある。


「あれは地底帝国の国旗!?」

「縁君、地底帝国って何?」

「はるか昔、ある地域で地上が科学汚染したから地下へ逃れようとした人々が居たんだ、地上に残った人達が長い年月をかけて汚染をなんとかして、地下に避難した人達はその長い年月で地中や洞窟に住む動物達の姿みたくなったんだ」

「なるほど、地下と地上でのイザコザがあったのね」

「ああ、そして地下の住民達は迫害された恨みから帝国を作り地上への復讐を誓うんだ、一人の男性がその地下帝国と戦って和平まで持ち込んだんだが」

「だけど縁君、この人達から明らかな悪意を感じる」

「スファーリアさん、これは分が悪い」

「どうして?」

「奴らには地上の攻撃が効かない」


 縁は慌てもせず冷静に立ち上がってイスを片付けた。


「ほう? 我々を知っているのか? 地上の技術や力など我が帝国の技術にはかなうまい」

「私達はジャスティスジャッジメントの馬鹿な行いに乗じて、この学園に居るある男を探しに来ただけです、馬鹿な選択肢は選ばないほうがいいですよ?」

「多分俺の知っている男子だ」

「……その言葉は我々にとっては聞き捨てならんぞ!」


 将軍が剣を抜いてゆっくりと縁達に近寄っていくその時!


「待て! 地底大将軍プレーリー! 地底参謀長ジムグ!」


 黒く短い髪に少し太い眉毛に整った顔、服装は何処にでも居そうな青年が声を上げながら走って近寄ってくる!

 そして縁とスファーリアの前に出た!


「お久しぶりです縁さん」

「ああ、この場は頼む、俺に出来る事は少ない」

「貴方は確か普通科の砂煙正吾だったかしら?」

「はい先生、言い訳は後でしますのでここは任せて下さい」

「わかった」


 縁とスファーリアは正吾の邪魔にならないように離れた。


「やはり居たか砂煙正吾! 姫を誘拐した男の息子め!」

「父さんはそんな事はしていない! 父さんは母さんと心を通わせて夫婦になったんだ!」

「貴様との問答も飽きたな」


 将軍は右手を上げると、ジャスティスジャッジメントの死体が砂に飲み込まれる!

 そこから砂の色をした全身タイツを着た戦闘員が現れ、巻き上がった砂は戦闘員が現れたとほぼ同時に地面に落ちる!


「くっ! 死体を地底戦闘員に! なんて行いを!」


 地底戦闘員は正吾を取り囲み、正吾は攻撃を警戒して全方位に気を配っている。


「死体の心配より自分の心配をしたらどうだ?」

「……ならばいくぞ!」


 正吾のその言葉に地面から砂が巻き上がる、その砂は正吾の腰付近にまとわり付き砂は形を変え始める。

 右の腰に銀色の縦約20センチ、横約5センチの円すいの形をした物体に変化した。

 その物体を腰に固定するようにベルトが巻かれている。


「るぁ!」


 気合いの入った声を出す正吾は右足で地面を思いっきり踏む!

 すると正吾の周りにを囲むように、色とりどりの砂時計が砂に紛れて地面から吹き出してきた!

 正吾は目の前の赤色の砂時計を手にとった、選ばなかった砂時計は巻き上がった砂と共に地面に落ちると砂時計は消えさった。


華炎かえん、力を貸してくれ!」


 銀色の物体の蓋を開けて、そこに赤色の砂時計を入れて蓋を閉めた。


「貴様の実力ではこの人数には勝てまい、やれい!」

「チテー! チテー!」

「チテーチテー!」

「チテー!」


 地底戦闘員が一斉に正吾に襲いかかる!


「擬態! るぁ!」


 正吾は右手で銀色の物体を半回転させた、すると銀色の物体から赤色の波紋が正吾の身体を駆け巡った。

 両手をクロスさせた後、気合いの入った声と共に両手をそのまま振り下ろして腰ので止める。

 赤色の波紋の一部が周りに拡散し、地底戦闘員を吹き飛ばした!

 そして、身体を駆け巡っていた赤色の波紋は炎に変わり、吸い込まれるように正吾の身体に入っていく。


「ほう? 姿が変わらない所を見ると擬態砂時計の力を引き出しているようだな」

「将軍、奴の砂時計の力は他者との関係がそのまま力になるようです」

「ふむ……しかし力を引き出しても強くなければ意味など無い! かかれ! 我が配下達よ!」


 将軍の一言で再び正吾に襲いかかる地底戦闘員。


「はぁ!」


 正吾は空高くジャンプをした!


「チテー!?」

「チテー!」


 地底戦闘員達はジャンプした正吾の下に群がっていた。


「燃やし尽くしてやるぜ! 必殺の秒針!」


 正吾がそう叫ぶと、腰にある銀色の物体から銀色の砂が出て正吾の右手付近に巻き付き、それが銀色で機会仕掛けのリストバンドに変化した。

 それは砂時計を固定するように出来ているようで、銀色の物体から赤色砂時計を取り出してリストバンドにセットして一回転させる。


「大火炎放射!」


 正吾は右手から炎を出して、自分の真下にいる地底戦闘員を焼き尽くす!


「チテー!」

「チテー!」


 こんがりと少し黒くなる戦闘員があまり効果が無かったようだ。


「何!?」

「ふははは! 砂煙正吾よ! 貴様の主力は炎による攻撃なのは知っている! 地底戦闘員に耐火用の砂を混ぜておいた!」


 ジムグは両手を開いて高笑いをしている。


「ならば!」


 正吾は足場でもあるかのように空中で何かを蹴る、その勢いで戦闘員から距離をとり、リストバンドの赤色の砂時計を外して着地しようとする。


「擬態! 雨乞いの巫女!」


 着地すると同時に再び砂が巻き上がり砂時計が地面から現れる、今度は青色の砂時計を選んで赤色の砂時計を地面へ落とすと砂に紛れて消えていった。

 青色の砂時計を銀色の物体に入れて半回転させる正吾、今度は青色の波紋が身体を駆け巡る。


「るぁ!」


 再び気合いの入った声を出しすと、青色の波紋は水に変わり正吾の身体へと入っていく。


「必殺! 水圧切断!」


 リストバンドに青色の砂時計をセットして一回転させて手から圧縮された水を戦闘員に向かって放った!


「チテーチテー!」

「チテー!」


 今度はただずぶ濡れになる戦闘員。


「これも効かないのか!?」

「愚かだな砂煙正吾! 持っている砂時計は全て解析しているわ! 我々が対策してないとでも思ったか!?」


 戦闘員は徐々に正吾を取り囲んでいく。


「これじゃあ手の打ちよ――」

「正吾君、これを使いな」


 縁は鞄から白い色の砂時計を取り出して正吾に向かって投げた。


「縁さんこれは!?」

「俺が出来る最善の手さ、使ってみな」


 縁のその言葉に正吾は頷いて青色の砂時計を外して地面に投げて、白い色の砂時計を銀色の物体に入れた。


「擬態! るぁ!」


 銀色の物体を半回転させる正吾、白い色の波紋が正吾の身体を駆け巡る。

 正吾は気合いが入った声で白い波紋を受け入れようとするが――


『この砂時計は今の貴方では完全には使いこなせません、吸収しきれない分は装甲に変化します』


 銀色の物体が機会音声で喋った!

 正吾は白い波紋に全身を包まれて波紋は形を変えていく。


「俺は運がいいからな」

 

 正吾は歯を光らせながらそう言った。

 縁のウサミミカチャーシャとジャージ姿になって他は変わっていないようだ。


「なんだその砂時計は!? 異質な力を感じるが明確には言えない力は!?」

「力を引き出しいないのにこの不快感はいったい!? 奴の与えた砂時計の力なのか!」

 

 将軍は眉をひそめて正吾を見てジムグは縁を睨むように見ている。


「砂時計の時間が短いか」


 正吾は銀色の物体の蓋の部分を見た、四角表情されているメモリが点滅している。


「一気に決めてやる! はぁ! 必殺!」


 正吾はその場でジャンプをして白い砂時計をリストバンドに装置して一回転させた。

 

「む!? 身体が鈍い! こ、これは!?」

「まさかあの砂時計の力!」


 将軍は身体を動かそうとするが少ししか動かず、ジムグも将軍の方を向こうとするが小刻みだ。


「兎のワニ渡り!」


 空中に居る正吾は戦闘員に向かって、急降下する!


「チテー!」

「チテー!」

「デチー!」


 戦闘員は次々と頭や肩を踏み台にされていて、正吾は連続でジャンプをしている。

 踏み台にされた戦闘員は形が崩れて砂に戻っていく。


「将軍覚悟!」


 正吾は最後の戦闘員を踏み台にして、空中に舞い上がり将軍目掛けて蹴り抜こうとしている!。


「るぁぁぁぁ!」


 そして気合いの入った掛け声と共に将軍目掛けて急降下してきた!


「そうか! 砂煙正吾の砂時計を通して我々に干渉してきてるのか!? 貴様! 神だな!?」

「位は低いがな」


 縁はニヤリと笑った。


「私の忠誠心をなめるなぁぁぁ!」


 ジムグは将軍を庇うように仁王立ちをした!


「ぐぁ!?」


 ジムグは正吾の蹴りをくらって吹き飛んだ!

 正吾はジムグを蹴った後、バック宙返りをして地面に着地した。

 着地と同時に銀色の物体の下の蓋が開いて砂時計が飛び出る、白い砂時計は地面へと消えていく。


「ジムグ!」

「将軍……あの……砂……」


 将軍はすぐさま駆け寄り、ジムグは必死に気付いた事を伝えようとしている。


「ジムグ今は喋るな、治療した後対策を考えるぞ……砂煙正吾!」


 将軍は正吾を睨む。


「今は引いてやろう、しかしその砂時計の力が次も通じるとは思わない事だ!」


 一瞬だけ砂嵐が起きた、次の瞬間には将軍とジムグはその場に居なかった。

 正吾は肩で息をしながら座り込んでいた。


「はぁ……はぁ……危なかった、こんなにも早く手持ちの砂時計が対策されるとは」

「助かったよ正吾君」

「こちらこそ、俺だけの力じゃダメでした」

「積もる話はまた今度しよう、ここを離れれるぞ立てるか?」

「大丈夫です」

「とりあえず安全な場所に移動するわ」


 スファーリアは何かを感じとったように辺りを見渡した。

 トライアングルを鳴らして魔法陣を展開する。

 3人は音符に包まれて消えた。

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