第五話 遊ぶ範囲と兎達その14

「強烈なキャラクターでしたね」


 いずみは顔色を悪くしながらメガネを装着してため息をした。


「お前なら知ってたんじゃないか?」


 縁は苦笑いしいずみを見る。


「加護の力があっても、知りたくないモノもありますよ」


いずみは吐く真似をしていた。


「そりゃ難儀なこって」


「さてと、余興も終わりましたしこれで失礼しますね」


 敬礼をするいずみ。


「結局お前は何しに来たんだ?」


 縁は首を傾げた。


「報告ですよ報告、隷属の神のね」


「ああ、ルルさんのインパクトのせいでぶっ飛んでたぜ」


 縁はポンと手を叩いた。


「平然としてたように見えましたが?」


 いずみは右手の人差し指を立てた。


「下手に反応するから相手は面白がる」


「なるほど」


「で、お前はこれからどうするんだ?」


「資料作りをします、皆さんの出来事をまとめようかと」


「そうか」


「ではそろそろ失礼いたしますね」


「はいよ、またな」


 縁は手を上げた、いずみを映し出していた魔法陣消えて、手紙は燃えて無くなった。


「ん?」


 縁はふと窓に目をやった、外には雪が降っていた。


「外か」


 縁はその場から消えた。


「縁様、お疲れ様です」


 砦の入り口に現れた縁を出迎えたのは、見渡す限りの雪原と人型の氷像に囲まれた麗華が優雅にお辞儀をしている。


「増援は始末いたしました、安心してください……ふふふ」


 それはもう動かない命で作られた像だった。

 

「雪だらけだな」


 縁は辺りを見回した、雪原が広がっている。


「すみません、殺し合いが出来ると思ったらつい」


 麗華は近くにあった氷像に近寄った。


「準備に時間がかかりしたが戦争が出来ます」


 氷像をニヤリと笑って見ている麗華。


「ここの砦だけが障害でした、私は少々殺意が高く高揚すると止められない時がありまして」


 麗華は裏拳で氷像をぶっ壊した、粉々になった氷像を楽しそうに見ている。


「少々……か?」


 縁は楽しそうな麗華に対して苦笑いしか出来なかった。


「国民を戦いに巻き込む訳にはいけませんし、王に小物相手をさせる訳にもいきません」


 麗華は別の氷像へと歩く。


「そっか、今はアイツは王様で国を持ってるんだな」


「はい、今回の隣国との戦争も言いがかりで相手にしたくなかったのですが……」


 麗華はデコピンで氷像を壊した。


「あの人が大切にしている国民が弄ばれたとなれば! 殺し合いしかないじゃないですか!」


 麗華が怒りをあらわにすると、雪原は雪と風が酷くなっていく。


「大切なモノを汚されて! 被害者が泣き寝入り! 加害者がふんぞり返る! 実にくだらない! ああ……殺したい殺したい! あの人に泥を塗る輩を殺したい!」


 麗華は両手を広げて笑っている、吹雪は激しさを更に増す。

 縁は寒がってはいないが、雪が積もっている。


「我が王は私に『任せる』と命令しました……楽しくなりそうです!」


 麗華は右手の人差し指を立てながら、右手の親指と中指でパチンと音を鳴らした。


「コホン、少々自分語りをしてしまいました、申し訳ございません」


 縁に対して優雅にお辞儀をする麗華、雪原だった周りの風景は徐々に戻っていくと共に氷像も消えていった。


「いや解るぜ? 俺も妹を守る為に手を血だらけにした時もあったからな」


 縁は自分の手を見た、返り血を浴びたようなアザみたいなモノがある。


「……その話は深入りしてはならないようですね」


「人様に自慢する話じゃないからな」


 縁は苦笑いしながら自分の手を見ている。


「高揚して忘れていました、王から伝言があります」


「伝言?」


 縁は麗華を見た。


「『用事が出来た、また今度宮殿に来てくれ』と」


「そうか、ならこのまま帰るか」


「報酬は来たときにお支払いします」


「報酬? ジンさんのお茶菓子がいいな」


「承知しました」


「じゃあな、霜氷柱さん」


 縁は右手で軽く手を振った。


「お疲れ様です、縁さん」


 麗華は優雅にお辞儀をする、縁はその場から消えた。



 縁はロビーへと戻ってきたようだ。


「んー! 疲れた疲れた!」


 縁は身体を伸ばしている。


「他のみんなは別のイベントやシナリオに参加してるのか?」


 縁はメールを確認する、シナリオの参加者や運営からメールが着ていた。

 確認するとほとんどの内容がお疲れ様等だった。


「返答しとかないとな」


 縁はメールを送ってきた人達に対してメールを返していると。


「こんばんは、縁君」


 スファーリアが声をかけてきた。


「ん? スファーリアさんこんばんは」


 縁は右手を上げて挨拶をした。


「おお、やはりその姿は!?」


 スファーリアは興味津々な目で縁を見ている。


「ああ、姿変えるの忘れてた」


 縁は自分の身体を見る。


「待って、元に戻る前にスクショとらせて!」


 スファーリアは興奮しているようだ。


「ん? 別に良いけど……」


 スファーリアに押され気味の縁。


「その姿は昔絆ちゃんを守る為に人と戦った結果だったはず、レアな縁君」


 スファーリアの頭上にカメラのマークが現れる、ゲーム内のスクショを撮るモードだ。


「よく知ってるな」


「設定資料集読んだからね」


 いろんな角度から縁を撮るスファーリア。


「スファーリアさんはこれからロール?」


「私はロール終わった所、縁君は?」


 スファーリアの頭上のカメラマークは消えた、撮り終えたらしい。


「俺も終わったから今日は帰ろうかなと」


「じゃあ反省会しない?」


 スファーリアは親指をグッとした。


「お、いいね! 待ち合わせはどうする?」


「今日はこの間の縁君とロールしたゲートに居るんだけど」


「俺もそこに居るから玄関で待ち合わせしようか」


「わかった、じゃあ後で」


 スファーリアはその場から消えた。


「んじゃ、俺も」


 

 縁はメニューを開いてログアウトを選択した。

 ゴーグルから見えるのは薄暗いプレイルームだ。

 縁ではなく長谷川に戻るのだ。



『長時間のプレイお疲れ様でした、無理をなさらず、余裕を持ってご帰宅ください』


 スピーカーから音声か流れる。

 

 「今日のロールも良かった良かった! いいねーゲームはゲームであるべきだ」


 長谷川は荷物をささっとまとめて玄関へと向かった。


「お疲れ様、長谷川君」


 荒野原は先に来ていたようだ。


「お疲れ様」


 2人は施設から出て歩き出す、辺りは既に暗く空には星が輝いていた。

 

「あ、そうだ色鳥君が何か言ってた?」


「やはりその話題が来るか」


 長谷川はため息をする。


「舞ちゃんに言ったのがダメだったか」


 荒野原は右手でおでこを抑えた。


「誰?」


 長谷川は首を傾げる。


「色鳥君のお嫁さんで私の親友」


「ああ、桜野さんか」


 長谷川は頷いた。


「長谷川君とのロールの話をしてたらからかわれた」


「なんて?」


「『ほう、終ちゃんに色目を使う奴が居るとはな、不埒な輩なら私が斬るが?』ってね」


 親友の口調を真似る荒野原は楽しそうに話をしている。


「いやいや、物騒だろ」


 長谷川は苦笑いをして荒野原を見ていた。

 進行方向にある信号機は赤になっている。


「舞ちゃんは武士の家系だからね、昔から日本刀振り回してたし」


「もしかして、中学生くらいから振り回してた?」


 荒野原をジト目で見る長谷川。


「小学生の頃には振り回してたね、もちろん大人も一緒だけど」


 2人は信号待ちで止まった、人通りは少ないが車は多い。


「中学の時、拓真たくまが日本刀に斬り殺されそうになったと言ってたが……マジだったのか」


「そこらへんの話は色々と面白いよ?」


「ほー」


 信号機が青になり歩き出す2人。


「話は戻して、からかわれるのは迷惑?」


 荒野原は少し心配そうに長谷川を見た。


「いや? 俺は自分の考えを言ったけども迷惑ではないな」


 長谷川は荒野原と目を合わせた。


「考え?」


 荒野原は首を傾げる。


「宝石箱は簡単に渡せないとね」


 長谷川はニヤリと笑った。


「ほほー」


 荒野原も負けじと同じように笑う。


「私の音も簡単じゃないわよ?」

 

 冗談だとわかるように鼻で笑った後にそう言った。


「同じ考え同士仲良くしろと親友に言われた」


「私も同じ事を舞ちゃんに言われたわ」


 2人は歩みを止めて互いに見つめ合う。

 

「んじゃ、同じ考え同士反省会といきますか」


「お、これはデートですな?」


 荒野原はからかうように笑っている。


「会話こそ互いをしる近道だと親に教わったからね」


 キザっぽく振る舞う長谷川だった。


「馬鹿な、デートという単語でドギマギしないとな」


 荒野原はわざとらしく驚いている。


「好感度が高くなったら反応が変わるさ」


 長谷川は右手を動かして好感度のふれ幅を表す。


「案外変わらなかったり」


 荒野原は長谷川の手を見ている。


「そうかもな」


「で、何処で反省会?」


「居酒屋でいいんじゃないか?」


「じゃあ行こうか」


 2人は居酒屋へと歩き出した。


 続く 

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